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まぜるなキケン!!〜断罪令嬢エルフ×オークの最強奇譚〜

作者: 桜坂 雪路

「イクシア、お前への罰は…ブタと嫌うローレル騎士団長との結婚だ!!」


広い広間に、皇太子アンドレの無慈悲な宣言が響く。


イクシアは、褐色の肌のダークエルフの少女だ。

プラチナブロンドの髪と肌色が相まって大変な美人なのだが…

今は死刑宣告のようなそれにただ震え、怯えている。

ブタ呼ばわりされているのは、ハイオークの騎士団長ローレルだ。


数々の武勲を打ち立てた筋骨隆々の、見た目は完全に普通の人間のゴツメなイケメンだが、種族がオークであり、しかも、貴族好みに合わないガタイの良さなので、ブタと呼ばれ、見下されている。

しかも、オーク族らしく夜が激しく、短くても3日3晩に及ぶ…とか、汗くささのある噂ばかりで、とても貴族社会で評価される要素を持っていない。


アンドレ皇太子の胸元では、マーガレットという、いかにも守りたくなるような細身の少女が青ざめたメイクをして震えている。

涙も作り物だろう。


「こ、皇太子殿下…私は!!」

「お前がマーガレットにしてきた事、忘れたとは言わせないぞ!」

「しかし…私は何も…」

「ああ、お前はそうかもしれないが、私の元婚約者、スカーレットと共にマーガレットをいじめただろう。」

「そのような事実は…」

「無いとは言わせない。それに、お前に無くとも、スカーレットの悪行を、黙って見ていただけで同罪なのだ!」

決まった!!

決まってしまった…とばかりにポーズをとる皇太子。


イクシアの隣では、件のスカーレットが打ち震えている。

彼女は実際に嫌がらせをしていたので、自業自得と言えば、自業自得なのだが…

スカーレットの父、宰相のジュノー公爵は怒り心頭の様子だ。

それはそうだろう。

手塩にかけて育てた娘が婚約破棄され、スラム街で拾ったと言う男爵の養女、マーガレットに鞍替えされたのだから。

マーガレットは、男爵とは血が繋がっていない、生粋の下民だ。


それでも、スカーレットのいじめは貴族社会であれば当たり前の範疇で、特に取り立ててひどいと言う物ではなかったのだが…


彼女は子供の頃から、脳筋皇太子のブレーンになるべく育てられた才女で、その上美人だった。

性格には多少難があるが、国母の資格はバッチリだったのに。


「以上は決定事項である。そして、私、アンドレはこの儚くも愛らしい、マーガレット嬢との婚約をここに宣言する!!」

ビシッとポーズをとり、アンドレは宣言する。


「そ、そんな…」

「いや、嫌よ…」

他にも同時に断罪された令嬢達が、皆空虚な瞳で宙を見つめている。


その混乱の最中、イクシアに婚約者となったブタ、もといローレル騎士団長が声をかける。

「では、参ろうか。婚約殿。」

「イヤ!!触らないでくださいませ。」

立たせようと差し出された手を振り払う。

「これは、失礼を」

そのような対応にも怒り出す事なく、ローレルは穏やかに対応する。


「プッ。さすがはブタね。嫌がられている事にも気が付いていないんじゃ無い?」

「コラコラ。ブタ相手に難しい事をいうんじゃ無い。」

クスクスと嘲笑が、立ち去るイクシアを追いかけてくる。

「しかし、イクシア嬢は気の毒だな。散々汗くさいだの、ブタ野郎と罵って来たヤツと結婚とは…殿下は中々な罰を考えましたな」

「誰より騎士団長を嫌っていたのは彼女ですからなあ」

「しかり…あのブタにしてみれば、あれだけ見た目が良いエルフを妻にできて、さぞや喜んでいるでしょう」

大臣達が下卑た笑いを浮かべる。

嫌っていたオークに嫁ぐエルフが楽しくて仕方がない…という様子だ。


後に残されたマーガレットは、ニヤリと皇太子の胸の中で笑う。


……………………………………………………………………

1か月後、イクシアとローレルの結婚式が終わった。

ダークエルフの先祖返りの彼女は、家族の嫌われ者のため、新婦側の参列者は多くなかった。


皇太子とマーガレットは、イクシアを笑い者にする為に来ていた。


その日の夜、初夜を見物したいという悪趣味な皇太子達をローレルが追い返す間、イクシアはローレルをくるのを待っていた。


皇太子達は、イクシアが明日まで正気を保てるか、賭けをしているらしい。

全くなんて連中だ。

たしかに、私は明日の朝日を幸せな気持ちで迎えられる自信はないけど…


しばらくすると、ガチャリとドアが閉まる音がして、ローレルが入ってくる。


「ローレル様?なの?」

「ああ、俺だけだ。待たせたな。様はもういらないだろう」

男らしく笑いながら、近寄ってくる。


身体が震える。

息も震えて荒くなる。

近寄ってきて欲しくない、そんな落ち着かない気持ちになる。

待たせた…ですって?


「待たせすぎよ!ローレル!」

イクシアは自分から満面の笑みで、ローレルの腕の中に飛び込んで行く。

そんなイクシアを、軽々と片腕で抱き上げるローレル。

「シアが幸せになるなら、子供が欲しいし結婚式がしたいと言ったんだろう?俺は駆け落ちで構わないと言ったのに…」

「だって、貴方の子供が欲しかったのよ。それに、計画には家族の協力が必要だし…騎士団に所属した、甲冑姿の貴方があまりにも素敵なんだもの。しばらくは、辞めさせたくなかったわ」

「それで?計画は実行するかい?」

「貴方さえ良ければ」

「聞くまでもないね。俺をブタ扱いし、キミを疎んだ国に未練はないよ」

「そう?それなら…まずはせっかく結婚したのだし

楽しみましょう」


2人は暁を覚えず楽しんで、やがてたくさんの子供達に恵まれた。


………………………………………………………………………

 数年後…


「陛下!!反乱です!」

「なんだと?誰だ?」

「ローレル元騎士団長です!すぐそばまで迫っています。」


ローレルだと?

奴は結婚したから戦線を退きたいというので、広いけれど、半分以上不毛の大地の土地をくれてやっていた。


「まあ、陛下…怖いわ」

12番目の妻アネッサが、プルプルと震えている。


「大丈夫だ。問題ない。…何をしている!すぐに軍を動かせ!!」

「そ、それが…」

「なんだ?何かあったか?」

「陛下の民を人とも思わないやり方には、ついていけない、と約半数が戦いを放棄しております」

「!!」

「フリッツ将軍も裏切り、残ったのは近衛騎士団の一部、奴隷契約を結んだ征服国の兵のみです!」

「……クソ!ブタめ」


大慌てで戦の支度を整える。

「ブタは短命ではなかったのか?」

残った騎士団のメンバー、ジュークに話しかける。

短命ははずのブタ共が、王国を脅かす程の群れになってやって来たのは、どういうカラクリなのだろうか?


「どうやら、混血が不味かったようですね」

「混血?」

ああ、エルフの女の苦しむ様が見たくて、ブタと結婚させたのだったな。

「どうやら見たところ、エルフの長命と混ざり合い、互いの長所を引き出しあった模様です」

「そんなバカな話があるか!!」

「いえ、すでに奴らと一戦を交えた生き残りから聞いた話では、オークの体力、力、頑強さを持ち、エルフのように素早く、膨大な魔力を持つ、まさに化け物であったと…また、見た目はエルフもしくはダークエルフに似た美しい軍団であったと」

「なんだと?!」


そう言った途端に、昔口うるさい教育係が言っていた事を思い出す。


「いいですかな、アンドレ様。王族は、オーク族の首輪を託された存在なのです」

「じい、聞き飽きたぞ?」

「いえ、まだです。何度でもいいますぞ。奴らは、繁殖力が高く、戦闘に秀でた体格をしています。しかしながら、寿命が非常に短いという弱点があります。なので、今まで問題になった事はありませんが…その昔、奴らがその繁殖力で次々に人間やら他の種族とのハーフを作り、軍団を結成」

「あわやというところで、当時の将軍がブタハーフ共を殲滅させたって話だろう?」

「そうです。その段階ではまだ、奴らは魔法に弱かったので、原種のみを残して殲滅する事が可能でした」

「つまり、魔力が高く寿命が長い種族を混ぜるなという話だろう?特に、長命で魔力が高く、見た目も美しいエルフ共はいけないと。このまま、オークだけで繁殖させろと」

「その通りです。オーク共には、王族が許可しなければ、他の種族と子が成せないよう呪いがかかっています。ゆめゆめ、お忘れになりませぬよう!」

「くどいぞ」

「忘れた暁には、国がいくつ沈むかわかりませんぞ。ただでさえ、奴らは生まれてから1年以内には子を成せる、脅威の種族なのですから」


あの時の事は…

まさかこの事だったのか。


つまりだ。

奴らは、この数年で鼠算的な勢いで増えたわけだ。

しかも、種族の限界年齢10歳も今は無い。

エルフは魔力が高いが、子が出来にくい弱点がある。

それをオークが補ってしまったのだろう。

オークの魔力耐性の無さは、エルフが補ってしまった。

同時に素早さも受け継がれたらしい。

さらに、エルフにはなかった頑健さとパワーも身につけた。


だが、相手は自分が今までバカにしていたブタとその一味だ。

なんとか勇気を振り絞り、所詮は家畜と自らを鼓舞する。


「相手はただのブタ共だ。恐るに足らん。将軍の裏切りは痛いが…それには秘策がある」

こんな時の為に、将軍の一人娘を側室の侍女にしてある。

ようやく使う機会が来たか。


「リリィを連れて来い!!」

「リリィ…でございますか?」

「ああ、リリィだ。将軍は娘に甘いと有名だからな。これでヤツは…」


なぜか命じた兵士は真っ青な顔をしている。

「どうした?早くしろ!!」

「…へ、陛下。リリィ嬢は…その」

「なんだ?貴様歯向かうのか?!」

スラリ、と剣を抜くとアワアワと話し出す。


「滅相もございません!!ただ…リリィ嬢は、マーガレット様が自分よりかわいいのが気に入らない、と先週実家へ帰しました!!」

「なんだと!?」

まさかそんなハズが…


そういえば、先週新しい側室を迎えた際に、マーガレットがいつものように癇癪を起こした。

対応が面倒で機嫌取りに、なんでも一つ言うことを聞くと言った記憶が…

その時に、キライな侍女を1人クビにしたいと言ったから、好きにしろと返事をした覚えがある。

あの時は侍女1人など安いと思い、快諾したが…


「クソっ!!」

秘策を潰されてしまった。

昔はマーガレットの見た目が愛らしく、儚げな姿に頼られると幸福を感じたが…

次第にワガママで贅沢好きな性格の方が目立ってきた。

そこで、数年も経たぬうちに側妃を迎え…

そんな具合に彼女を、厄介者扱いしていた事が裏目に出てしまったらしい。


このような状況になったのも、すべてあの女のせいだ!!

あの女が騒ぐから、宰相の娘は、証拠もないイジメで俺との婚約を破棄させられた。

同時に有力貴族の娘も断罪した事で、宰相をはじめたくさんの貴族が王室に背を向けてしまい、ロクに政務をこなさなくなった。


「あの女さえいなければ…」

自分が浮気を繰り返し、その度に他の側室を難癖をつけて追い出してきた事を棚にあげ、全てをマーガレットのせいにする。


目の前では、僅かに残った近衛達が指示を待っている。

豚が何匹集まろうとも、ブタはブタ。

我々にはまだ奴隷兵が残っている。

実力は確かな連中なので、まだ勝機は残っているはずだ。


「実戦経験もないブタ共など、ひねり潰してくれる!…そうだ、見た目はエルフなのだろう?」

「はい…そうですが…」

「わかった。兵を集めろ!!すぐに迎え撃つぞ。」


30分後…

支度を整えた軍が集結していた。

「今、我国はブタに襲撃を受けている。だが相手は戦もした事がない素人の集まりだ。蹴散らして今度こそ家畜小屋へブチ込むぞ!」

おおー!!と声が上がる。

「それに生意気にも、見た目はエルフらしい…お前達にも楽しみができたな。今晩は捕らえたエルフで祝勝会を楽しもうぞ!!」

先程よりも大きな歓声が上がる。


「エルフがたくさん攻めてきたと思えば、かえって楽しみが増えましたな」

将軍がいなくなったので、急遽任命したハーマン将軍が言う。

ニヤニヤと笑う太り油ぎった男だ。

彼が王の側に残っているのは、忠義に厚いからでは無く、愚かにもオークをただの阿呆と軽く見ていたのと、王の女を物としか扱わない姿勢が気に入っていたからだ。


王の覚えさえ良ければ、例えば、税の滞納があった落ちぶれ貴族の娘を、ちょっとばかり罰として遊んでも、誰も彼を咎めない。

そんな楽しい生活を壊されたくないが故の味方だった。


「ああ、将軍。実に楽しみだ…やはり将軍とは趣味が合いそうだな」

「それはこの上なく、ありがたきお言葉!!何、ちょっと見た目が美しくなったブタなど、恐るに足りません。鎮圧した暁には、我々がきちんと管理する必要がありましょう」

「そうだな…奴らにとっても幸せな事だろう」

2人は欲望のまま、理性をねじ伏せて進軍する。


…………………………………………………………………

「あら、やっぱり貴方の言う通り向かってきたわ」

「予想通りだな」

「先程、将軍が戦う意思はないと伝言をくれたけれど、陛下は諦めないのね。」

「その方が都合もいいし、構わないだろ?」

「ええ…でも…」

「わかってる。奴隷兵士達はできるだけ殺すな、だろう?」

「ローレル…」


戦場にも関わらず、ラブラブな雰囲気を醸し出す2人に、冷静なツッコミがはいる。

「ちょっと、父さ…違った。隊長、場所を考えてください。奴隷兵士はできるだけ無力化、皆に伝令しますよ?」

「まあ!ちっちゃなクリスが頼もしい事。」

イクシアは、鈴を転がすような笑い声をあげる。

「母様は茶化さないでください。今日は決戦ですよ!!」

「あらあら…ダメよクリス。そんなに思い詰めた顔をして。私達が負ける事はまずないわ。死ににきたわけでは無いのだから、もう少し肩の力を抜きなさいな」

「そうだぞ、イクシアの言う通りだぞ。もう少しリラックスしろ。俺が何があっても守ってやるから、ドーンと構えていりゃあいいんだよ!」

「父上まで…わかりました。ボクも2人の子ですから、腹を括りますよ」

あまりに能天気な2人を見ていると、ジタバタしている自分が恥ずかしい。


「やっぱり将軍はいないようね」

「将軍にも見放されたか…どれ、先に降伏勧告だけしてやるか」

「まあ!!優しく事。さすがは貴方ね」

「ダメだろうから、ローズにドデカイ一撃用意するように伝えてくれ」

息子のクリスにローレルが伝える。

「わかりました!隊長」

元気にクリスが去って行く。

ローズというのは、2人の娘の1人で、対軍用の大型魔法が得意な子だ。

ド派手な魔法に定評があるので、きっと相手の度肝を抜いてくれるはずだ。


「ローレルはどうかしらねぇ…」

のんびりと遠くから見守っていると、突然相手が魔法攻撃をローレルに仕掛けて来た。

「あらあらまあまあ…」

「お母様?お呼びですか」

「ローズね。見てごらんなさいな」

母の視線のさきでは、父が雨霰と魔法攻撃を受けている。

「…鎧に何かしましたか?」

楽しそうに見守る母に呆れた目線を送る。

「ワタクシは何も?ただ…ギュンターが暇そうだったのよね。だから、ミスリルでできた鎧を、好きにしていいわよおって渡したの」

「ギュンターに」

「そう」

事もなげに答える。

ギュンターはローズの2つ上の兄だ。

15男の彼は付与魔法が得意中の得意で、いつも魔法をかけるものを探している変わり者だ。


強力な魔法防御が付与された鎧は、魔法の攻撃を見事に受け止めている。

今頃ギュンターが、性能実験がうまくいってホクホクしているだろう。

「相手はやる気満々ね…ローズそろそろ、相手に格の違いを見せて差し上げなさいな」

「はい、母様」

ローズが短く詠唱すると、辺りに暗雲が垂れこめ、敵陣に雷が降り注ぐ。

それでも、魔術師に当て無力化した以外は人的被害は無い。

これは彼女が、雷を完全に制御している証だった。

さらに隕石の雨を降らせる頃には、相手の兵士は武器を放棄して散り散りに逃げ惑っていた。

「あら、ローレルから合図だわ。一旦やめて頂戴な」

「はい、母様。今すぐに」

瞬時に雲は去り、明るい日差しが戻る。

そこへクリスが走ってくる。

「お母様、隊長が呼んでいます」

「まあクリス。今行くわ」


「来たわよ?」

「陛下からご提案があるそうだ」

「何かしら…」

目の前でガタガタと震え、青ざめる男をナメクジでも見るような目で見る。

「イ、イクシアとローレルよ。何か誤解があったようだが…これはな、ただそなたらをもてなそうと出迎えただけなのだ。」

「左様!陛下の寛大なお心に感謝して、今すぐに…」

「五月蝿いわ。ローズ?」

「はい、母様」

ローズが空間に手をやると、亀裂が発生し、中から気絶した兵士がワラワラと現れる。


「ヒィ!!」

陛下はついに尻餅をつき、怯えて声にならない声を上げる。

「この者達は、こちらへ一切の布告もなく極大魔法をぶつけて参りましたし、先程も夫は魔導士達から攻撃を受けておりましたが?」

怒れる母に、ローズは1人…

早く投降して!!

やばいわよ!と思っていた。


「それは、そうじゃ。それも歓迎の一環でな。ちょっとしたイベントじゃ!」

新しい将軍ハーマンがなおもいい募る。

「このような攻撃程度では、元騎士団長は倒せないのは当たり前ですからな。何、礼はいらんよ。陛下の御心に感謝して、うむ」

チラッとローズをみる。


「娘を10人ほど寄越せば、此度陛下の戯れを誤解して反撃した罪を許してやろう。そうじゃ、ついで進軍した罪も許そう。さらに、そこの娘はワシのメイドに良さそうだからな…取り立ててやろう」

錯乱して頭がおかしくなったのか、普段からこんな無茶しか言ってこなかったツケなのか、相手に対して偉ぶる事しかできないようだ。


そうすれば、威厳に畏れをなした若造など平伏し簡単に言う事を聞くに違いない。

そんなバカバカしい自信にあふれている。


「…陛下の方がマシとは思わなかったわ」

「シア…消すか?」

「んー。血を流すのは好みでは無いのだけど」


そこにぴょんぴょんと小さな双子が現れる。

「「母様!!」」

「まあ、アルタエアとマルバね?」

アルタエアは淡いピンク色の目をした少年。

マルバは水色の目をした少女だ。

「丁度いいわ。この男、まだ自分の方が上だと思っていて鬱陶しいの」

「エアにお任せ!」

「マルバにお任せなの!」

双子は可愛く了解の意を示す。


「はあい、お口あーんですよ」

アルタエアが口を手早く開ける。

「はい、ごっくんなの」

ナニかを飲ませる。

「今お口に入れたのはね、この子の卵だよ」

アルタエアは、3メートルほどの鎧で武装したミミズのようなモノを呼び出す。

「この子はネ。宿主の心臓にずっといるんだけどね、私達が合図したら、この大きさになってバーンと出てくるの」

「生まれるまでは、魔法でも取り除けないよ。もう心臓と一体化してるから!でも、宿っている間は、共生してくれるから心肺が強くなって便利だよ」

「そう!!合図無しには動かないイイコなの。…でもね、おじちゃんがお母様のお話きちんと聞かないなら、合図しちゃうかも!マルバ子供だから!!」

「しちゃうかも!エアも子供だからね」


将軍は放心したように、薄気味悪い生き物と双子を交互にみている。

しばらくして…

ようやく事態が飲み込めたのか、ブルブルと震えて叫び出した。

「取れ!!とってくれ!イヤだ。ワシをだれだと…」

そのまま無視していたら、シクシクと泣き出した。

「母様、おじちゃんお話いい子で聞けるみたい」

マルバが無邪気に宣言する。

「あらあら、ありがとう。…でもちょっとやりすぎたかしらねぇ」

将軍はガタガタと震え、とても話ができる状態にない。


こうして、戦いはあっさりと勝負が着いた。


旧王国は脆く崩れ去り…

2人はついに安住の地を手に入れた。


それから数年、先代王の腐敗政治の後始末や新興国と侮った他国へとの争いが続いたが…


新国王夫婦は、最強の子供達に守られ、家族は一切欠ける事はなかった。

そして、少し先の未来で、一大覇権国家となり他国から恐れられる事になる。

そして国民達からは明君と尊敬を集めるのだが、それはまた別の物語だ。


今はただ、かわいい妻と子供達に囲まれて毎日楽しく暮らしている。




















エルフとオークの話が書きたくなりまして…

彼らの子供が優性遺伝子したらきっと強いですよね〜

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