一冊の本と天使
俺が数秒間、驚きで硬直していると、
「あっ、すみません!」
っと俺の幼馴染…黒井奈々が声を発し、
俺は現実に引き戻された。
「これ最後の一冊じゃないですよね?」
そう言いながら、奈々は本を持ち上げ、
本の冊数を確認した。
「良かったぁ〜!まだ1冊残ってました。どうぞ!」
天使のような笑顔で俺に本を渡してきた。
「ッッ!!」
「あのー?大丈夫ですか?」
はっ!俺としたことが天使の笑顔によって、
気を失ってしまうとは…
俺は天使の顔を拝めたことを神に感謝しながら
「ハイ、ダイジョウブデス。」
と、得意の女声で流れるように…
言えなかったぁぁぁ!
絶対変な奴に見られたよ!
だって、奈々、?を顔に浮かべてるもん!
俺もう、奈々に顔見せられないじゃん!
顔と言えば、俺今女装してるじゃん。
じゃあ気にせずに喋れるな。
そして俺はずっと奈々が本を持ってることに気づく。
「本、ありがとうございます」
「いえ、なんてことないです!」
と、どこにでもありそうな会話だが…
またもや奈々は天使の笑…
はっ!また気を失いそうになってしまった
俺は心臓がバックバクで
長く喋れそうな状況じゃなかったので
「では、私はこれで」
と言い、逃げるようにカウンターへ向かい、
少女漫画一冊の料金を払って、店を出た。