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忘れていたもの  作者: りりせ
1/1

なくなった俺の1週間

登場人物紹介

平田徹(ひらたとおる)・・マンションに一人暮らしの社会人。


神上翔(しんじょうかける)・・徹と同年代の同僚


上岡光(かみおかひかる)・・徹の先輩


 視界がぼやけている、手足に力がはいっていない、呼吸はできているのだろうか、そんなことすらも考えられなくなってきている。未来への希望はもうすでに捨てている。死ぬだけの未来と言うすでにきまりきった運命を受け入れながら今日も座っている。“きっと”明日も明後日も、いや“必ず”だろう。

果たしてそこにあるのは人間だろうか、そんな疑いをもたれても仕方がない状態の彼に光が差し込む。やつれきった顔を光が照らす。扉の前には人がいてそいつは笑っていた。そいつにつれられ部屋を出た。

 引かれるままに歩き出す。周りに誰か他の人がいたのかもしれない、話しかけれられたのかもしれない、しかし、そんなことを考える余裕はなかった。そして、背中に強い衝撃が走った。




 白い光が瞼越しに差し込む。大きく息を吸い込み、自分が寝ていたことを自覚する。昨日の仕事の疲れだろうか、体が重い。ゆっくりと目を開け、体を起こす。上半身を左右に反らせ、横腹の伸びを感じながら、ベットから出た。

よく寝ていたようで、窓から差し込む光は短くなっていた。スマホを起動し、時間を確認、『10時36分』。いつもの倍ぐらい寝ていたことに贅沢感を感じながら、曜日も確認、昨日は土曜日だったらから日曜日だろうが、これで1日中寝ていて月曜日、なんて展開は笑えない。『日曜日』。当たり前だが一安心。今日は休みである。そして目にはいった日付を見た瞬間、俺は()()()()()()()()()()()()()()()

「嘘だろ…」

確かに、今日は日曜日。間違いなく日曜日だ。だが、自分が迎えると思っていた日曜日ではなかった。今日は8月22日であるはずなのだが、携帯には()()2()9()()の文字。携帯であるから日付が狂っているはずはないのだが、藁にもすがる思いでテレビをつける。ちょうど放送していた天気予報には『今日、8月29日』の文字が。

「はぁ?どういうことだよ」

俺は頭をフル回転させた。たしか昨日は・・いや21日か、その日の夜は、会社から帰る途中夜ご飯を買いにスーパーによって、まっすぐ帰ったはずだ。変な店にも入ってないし、変な人に声をかけられたわけでもない。まさか、1週間眠っていた? そんなわけない、そういう系統の病気はしてないし、仕事が疲れすぎで1週間寝るはずもないだろう。タイムスリップで1週間未来にいった?まさか、本の読みすぎだ。

だめだ、わからない。夢と願って顔を叩くが痛いだけだ。しかし、そのいたさで少し冷静になる。

「あっ」

会社だ。ふと頭に出てきた可能性。1週間も休んでたら電話もかかってくるだろうし、家に来てもおかしくない。だか、急いで携帯を確認するが、着信履歴はない。あれば、時間を確認したときに気づいたはずだ。ひとまず、連絡だけはしておこう、なにか知ってるかもしれないしな。携帯のロックを解除し、電話のアイコンをタップ、上にスライドしながら、部長の名前を探す。見つけた名前の横の受話器のマークを押す。

 プルルルル プルルルル プルルルル・・・・ お掛けになった電話番号は現在電源が入っていないか、電波の届か ブチッ

出ねぇじゃねぇか、愛想つかされたのでもほどがあるだろう。続いて、社長にも掛けるが反応はなかった。無断欠席したのは悪いけど、連絡もないし、こっちからかけても反応しないなんて、嫌われることでもしたか?

 俺は少々愚痴つきながらも、だめ押しに先輩にかけてみる。

 プルルルル プルルルル ガチャ「もしもし、平田かどうした。」良かった先輩には嫌われていないようだ。電話先の女性の声は少し疲れているような声だった。

「もしもし、先輩。すいませんでした。1週間も無断欠席して」

「お前、1週間も無断欠席したのか、絶対部長に怒られるぞ」

「すいません」

ん?この言い方、先輩は俺の無断欠席を知らない?

「先輩・・俺が休んだの知らないんですか。長期休暇とってました?」

「いや、違うんだが、お前この1週間何してた」

答えにくいところへの直球な質問に口ごもってしまう。

「えっ、あ、あのですね、えーっ、そ、そうです、実家に帰ってたんです。はい」

「なあ、会社のこと覚えてるか」

「はい?」

言い訳に対して、反応を示さないと思ったら、急な質問。覚えてるもなにも、その事で困ってるんだから。部長や、社長がいるのも知ってるし、顔も出てくる。先輩のことだって覚えてたから、電話したんだ。会社の名前だって覚えて・・・・なんでなんだ、思い出せない。会社の名前なんて忘れることなんてあるわけない、あってはならないんだ。場所は・・・くそっ

「忘れてるんだな」

沈黙を察した先輩がそういう

「実家にも行ってないのだろう、そしてこの1週間自分が何をしていたか覚えていない」

先輩は言葉を続けた。くっ、ここまで言い当てられたら言い逃れもできないだろう。それにここまで現状を理解しているのも気になる。

「おっしゃる通りです・・・先輩、何か知ってるんですか、これになにか関わってるんですか、原因は先輩なんですか!」

「まあまあ落ち着け平田、私も今のことについは知ってる情報はあまり多くない。私がこのことを知っているのは神上から相談されたからだ。ここ一週間自分が何をしていたかわからない、会社のこともわからないと。」

なに、神上もなのか、俺だけじゃなっかったのか

「そして、私も君や、神上と同じ状況だからだ。」

先輩も、3人ともなのか。どうなってんだ、相次いで同じような状況の人がでてくるなんて。なにか大きなものが関わってるのか

「なにか心当たりはあるんですか」

「いいや、私にもわからない」

先輩にも、わからないのか。

そうだ、

「そういや、部長、社長と連絡がつかないのは」

「ああ、それも関係しているのではないかと思う。私も繋がらない」

だんだんと状況は分かってきた。

「平田、少し試してほしいことがある」

「はいなんでしょう」

解決策でもあるのだろうか、

「名刺を見てくれないか、会社の名前が書いてあるはずだそれを見てくれ」

なるほど、それならわかるかもしれない。でもどうして自分で確かめないのだろう。名刺を切らしてるのかな。そんなことを考えながらスーツの懐を探る。触りなれたプラスチックの名刺入れを取り、1枚取り出す。中央には「平田 徹」と名前がある。その上部に会社名があるはずなのだが、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

「文字化けてます」

ここまで来たら、驚くこともなくたんたんと告げる。

「やはりな」

予想どおりだったようだ。きっと先輩も同じだろう。これも記憶がないのと関係してるのだろうか。

先輩によると神上も同じ状況らしいから、会って話してみたいものだ。

「これから、3人で会いませんか、このままじゃまともな生活もできませんし」

「そうだな、ちょうどお昼頃だ、駅前のカフェでもどうだ、飯でも食べればなにかわかるかもしれん」

「そうですね」

明るい表現をしていたが、先輩も不安なんだろう。

男として、そこはきちんと安心させなければ。


荷物を整えて、玄関のドアを開けた人々は日常を過ごしているが、きっと俺の日常は今日から壊れていくのかもしれない。いつもの空気がなぜか今日は透き通っているのを感じた。

最後までご覧いただきありがとうございました。続きは随時公開していきます。これから、1週間の間何があったのか迫っていきますので、楽しみにお待ちください。また、評価、感想などいただけましたら大変励みとなります。続編もよろしくお願いします。

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