突破するには
本作の一日のPV数が百を超えました!!ありがとうございます!!
何か今までの1日のPV数よりも二倍近い差があるんですけど…何があったんだ一体…
下水から通路に上がって、なるべく足音を立てないようにしながら接近します。できるなら不意打ちを出来れば良かったのですけど、数歩歩いただけでネズミがこちらに気が付いたようで振り向きました。水を吸った衣類は結構大きな音を立ててしまうので無理があったようです。でもそれならそれで構いません。私は跳んで、ネズミの頭を狙って剣を振り下ろすと、ネズミはハルさんから離れて私の剣を避けるように後ろに下がります。
「ハルさん大丈夫ですか?」
ハルさんの前に立って剣を構えなおします。ネズミは様子を伺うように私を見て動きません。逃げる素振りもないので、明らかに私達を倒す気ですね。
「ああ、そっちこそ大丈夫なのか?」
ハルさんが驚いた様子で聞いてきました。はたから見ればネズミの巨体を生かした体当たりに吹っ飛ばされて壁に叩きつけられているので、無事じゃすまなそうなのにピンピンしてますから、不思議に思ったのでしょう。
「大丈夫です。私は、こう見えて結構丈夫なので」
実際に私の体は他の生き物に比べて頑丈に作られていますし、筋力もあるそうです。普通の人なら気絶していそうな攻撃でしたけど、あそこで気絶したふりをするほど人でなしでもないので立ち上がりました。とはいっても、流石に無傷ではなく少し脇腹がいたいです。あと口も切った様で鉄の味がします。
「そ、そうか、すごいな」
ハルさんは半信半疑みたいですけど、実際に私が無事に見えるので信じたようです。ハルさんのさらに後ろにシアさんとラアさんが集まりました。
「で、どうするの?」
シアさんがこれからの事を聞いてきました。
「…あのネズミ他より明らかに強いから、絶対群れのボスだと思う。だから」
後ろからシアさんとラアさんの声が聞こえます。ネズミが動いていないので今の内に集まった様です。
「倒すにしても結構きつくないですか?」
私達は今の所、結構一方的にやられています。ここで冴えた案を隊長なら思いつきそうですけど、私は全く思いつきません
「だよなぁ、どうすっかな…」
そう言いながらもネズミから目線を離さないようにしていると、ネズミが動き出しました。ネズミが口を開いて周囲に火の魔法を発動させようとしています。
「…させない『ストリーム』」
向こうが魔法を放つ前にシアさんが威力の低い魔法を放ちます。少し遅れてネズミも魔法を放ったことで両者の魔法はぶつかって爆発します。
「『シオル』」
すかさずシアさんが風の魔法を放って爆発の煙を切り裂きながらネズミに攻撃します。
ネズミは再び壁を伝って天井に昇り駆けています。
「シアは攻撃を続けて牽制してくれ、アイビーもナイフで牽制してくれ、ラアはネズミが降りてくるまで待機」
ハルさんが指示を出しました。そう言えばリーダー的立ち位置でしたね。特に口を出す事もないので指示に従ってナイフを投げますがまったく当たりません。シアさんも先ほどから威力よりも量に重点を置いて魔法攻撃をしていますが、ネズミは巨体のわりにすばしっこいので当たりません。
「シアさん周りを攻撃して動きを止めてください」
「…わかった」
本当は私が足止めしたいのですが、ナイフの本数が心もとないので、シアさんに頼みます。シアさんは狙いを変えてネズミの周囲に魔法を当てます。最初は大雑把に狙って動けなくして、徐々に狭めて迂闊に動けなくなっています。
今ですね!
私はナイフを二本投げた後に後ろに隠すように一本遅れて投げます。ネズミも狙いは分かっているようで魔法を対抗で放ってきました。三本の内二本が魔法に弾かれてしまいましたが、本命は最後の一本です。どこかに刺されば多少なりとも動きを封じることが出来るかもしれません
でも、ネズミはナイフが当たる直前に前歯を使って弾いてしまいました。
「えぇ…」
あれも防がれると打つ手が無くなるのですけど…
そう思っていると、矢が飛んできてネズミの胴体に刺さりました
「え?」
横を見るとラアさんがクロスボウを構えていました。どうやら、私達の攻撃を囮にして発射したようです。矢が刺さったネズミは悲鳴を上げながら落ちてきました。
今が好機と走り出すのと同じにハルさんが並んで走っています。ネズミは体勢を整えようとしているので回避は出来ないはずです。
私は下から、ハルさんは上から攻撃を繰り出そうと接近します。ネズミは何とか立ち上がって動こうとしますが矢が痛むらしく動きが鈍いです。私は下からかち上げるように剣を振り上げてネズミの腹に突き刺します。
「チャァァァァ!!」
ネズミは血を出しながらも反撃を試みていますが、動きが鈍いので余裕で回避します。そしてそのまま追撃しようと剣を振り上げようとした時です。
「ゲボァ!」
ネズミが突然胃の中の物を吐き出しました。消化途中だったらしい中身の強烈すぎる匂いに吐き気を催して、思わず後ろに下がってしまいました。
「くっさぁ!」
シアさんの前まで戻って思わず叫びます。幸い吐き出した内容物を見なかったんですけど、吐瀉物の匂いって釣られて吐きそうになるので嫌です。
「…」
離れていてもネズミの内容物を見てしまったようで、シアさんが顔をしかめて口元を抑えました。
「…食事直後だったようだね」
「やめてくださいシアさん。見ないようにしているのに、イメージしちゃうじゃないですか」
でも吐瀉物のせいで近づけません。ハルさんは吐瀉物を踏んづけてしまった上に匂いをモロに嗅いでしまったようで、シアさんの後ろまで走って行った後に吐いています。
出来れば近づかずに倒したいですけど、私達が離れた隙にネズミが魔法で壁を張ってしまったのでシアさんの魔法やラアさんの矢では貫通が難しいみたいです。そういえば
「シアさん!あのガスの瓶ってありますか?」
「え?…持ってるけど?」
「毒ガスをネズミに流すのはどうですか?」
「…ちょっと厳しい。向こうは疲労しているように見えるけど、さっきみたいに縦横無尽に動かれると毒ガスが届かなくなる。出来るなら至近距離で嗅がせるのが良い手」
あの毒ガスは群れとかなら有効なんですけど、一匹を狙うのはあまり得策じゃないみたいです。
「それなら私に考えがあります。瓶を貸してくれますか?」
「…ちょっと不安だけど、まぁいいか」
少し躊躇った後にシアさんがポーチから取り出してくれました。
「ありがとうございます」
私は受け取った後にネズミの方を見ます。ネズミは中身を吐き出すほど痛かったのか傷口を舐めています。
「…渡した後に聞くのも変だけど、どうするの?」
「簡単です。中身を直接飲ませてあげるんです」
「…は?」
このネズミの本当の運用方法は群れをけしかけて、消耗したところを巨大ネズミが各個撃破。逃げた場合も群れネズミが挟み撃ちで全滅させます。
シアさんが毒ガス(硫化水素)を持っていなければ群れネズミをしょりできなかったので突破できませんでした。
無理に突破した場合は巨大ネズミと群れネズミの挟み撃ちに会って全滅していました




