アイビー冒険者になる
何か少し疲れましたけど、ようやく受付にたどり着きました。ナギさんが受付に近づくと、受付にいる女の人が少し不思議そうに顔を傾けました。
「ナギさんどうかしましたか?更新は特に不備が無いはずですけど」
「いえ、私の事ではなく、私の友人が登録をしたいそうなので案内しただけです」
そう言ってナギさんが私を前に押し出します。
「アイビーです。ナギさんの話を聞いて興味を持ったので登録してみようと思いました」
それを聞いて受付の人はほっとしたような顔をしました。
「そうでしたか、ではアイビーさん登録の手続きをするので、こちらに来てください」
「わかりました」
「では、私は向こうで待っているので終わったら来てください」
ナギさんはそう言うと背を向けて掲示板に向かって歩き出しました。
「ではアイビーさん。この羊皮紙に必要事項を記入してください」
受付の人はテーブルの下から羊皮紙と羽ペンを取り出しました。
「あ、はい」
私は羽ペンを持って羊皮紙を見ます。羊皮紙には名前や年齢など基本的なことが記載されています。年齢は18にして誤魔化しましょう。
「ん?」
普通に書こうとして、あることに気が付き手が止まります。
「どうかしましたか?もしかして文字が書けませんでしたか?」
受付嬢さんが心配そうに声を掛けてきました。
「いえ、文字は書けるので大丈夫です」
それに、これはこの人に聞けることではありませんので言わないでおきます。後でナギさんに聞くことにして、話を変えましょう。
「それよりも、聞きたいことがあるんですけど」
羊皮紙にペンを走らせながら、なるべく自然に話題を変えます
「はい、何でしょうか?」
「ナギさんってここだと、どんな様子なんですか?私は普段のナギさんしか知らないので、冒険者をやっていると聞いた時に想像できなかったので知りたいんです」
今の所753部隊の誰かと一緒に休暇を過ごしたことが無いので、少しここでのナギさんを知りたいと思いました。今のところナギさんは普段と変わらないですけどね。
「冒険者のナギさんの様子ですか・・・そうですね」
口に手を当てて思い出すように話し始めました
「少し不思議な方ですね」
「ええ、勿論悪い意味ではなく、ですよ」
「初めて来たときから、まるで慣れているかのように手続きを終えて、少しすると陽炎のように消えてしまい。またしばらくすると突然現れる。ナンバー5になる頃には一部の人達は、その不可思議さからナギさんの事を『幽姫』と呼んでいますね」
「・・・それって誉め言葉なんですか?」
端から見ると悪口にも聞こえるんですけど・・・幽霊の姫とかナギさんをお化け扱いしてませんか?
「あまり良い呼び名ではないんですけど、ナギさんが気に入ったようで訂正をしないのでそのまま定着しちゃったんですよ」
受付の女性は少し苦笑いをしながら続けます
「ナギさんは他の方と比べれば、まともな方なので許してくれますけど、他の方の場合だったら命が無かったですね。その点を見るとナギさんは結構おおらかですね。まぁそのおかげでナギさんを嫌っている人は、ほとんどいませんね。ただ新しく入ってきた人がナギさんと話したりするときは、少し緊張している人が多いですね」
「どうしてですか?」
「ナギさん5年でナンバー5になった人なので、町の人たちにとってはちょっとした有名人なんですよ。最近はナギさんに憧れて入ってくる人も増えているので、そう言う人たちがいきなり憧れの人と話すと緊張でカチカチになってしまうんです」
例えるなら隊長よりも偉い人と会うような物ですかね?私もフレアさんの家に行ったことがあるので気持ちはよく分かります。
「その気持ち、よくわかります。私も似たような経験がありますから。あと書き終わりました」
私は書き終わった羊皮紙を受付の人に渡します。
「お預かりします。少し待っていてください」
羊皮紙を持ったまま受付の人が奥に行ったので手持ち無沙汰になってしまいました。何気なしに振り返るとナギさんが子供に囲まれていました。子供たちは目をキラキラさせて、ナギさんに何か言っているように見えます。ナギさんは子供高さに目線が合うように屈んで笑いながら話しています。それを少し微笑ましく思いながら見ているとナギさんが視線に気が付いたようでこっちを見た後に口を動かしました。
『終わりました?』
そう口を動かしているように見えたので首を振って、いいえと答えます。それを見た子供たちが私の方を指さしてナギさんに話し始めました。多分私の事を聞いているんでしょうか?そう考えていると
「お待たせしました」
そう言って受付の人が何かを布で包みながら戻って
「こちら、冒険者であることを示すタグになります」
布の包みを取って中から金属のタグを取り出しました
「これを持っていればギルドの特典の割引とギルドの依頼を受けることが出来ます」
私はそれを受け取って何処に付けようか少し悩んだのちに手首に腕輪みたいに通しましたタグを見ると私の名前とランクを示す石の文字が彫られていました
「ありがとうございます。それにしても、こういう金属の加工って時間がかかる物のはずなんですけど、結構早いんですね」
金属加工の現場を見たことがないので言い切ることは出来ませんが、少なくともこんな短時間でできる者ではないことは分かります。
「そこは魔法ですね。ギルドの職員には魔法が使えるものがいるので、その人に頼んで彫ってもらいました」
魔法って本当に便利ですね。私も憶えたいんですけど、今の所転移課に合図する用の魔法しか使えません。隊長によると才能が無いそうなので期待は持てませんがいつか使いたいものです。
「私も魔法使えたらなぁ・・・」
何気なく呟いた言葉に受付の人が頷きました
「良いですよね、魔法。私も使えたらいいんですけど、学校に入学する時の検査で才能が無かったので覚えられませんでした・・・あ、以上で登録は終わりました」
「そうでしたか。ありがとうございます」
頭を下げて感謝を伝えます。
「はい、これから頑張ってください。でも、そのタグの初仕事が死体判別にならないように生きてくださいね」
「は、はい頑張ります」
なるほど、タグにはそう言う役割もあるんですね。休暇で死亡とかシャレにならないので気を付けましょう
「では早速依頼を見てきます」
クルっと受付の人に背を向けて歩き出します
・・・そうだ、ナギさんの所に行かないと




