着替えて転移
「着きましたよ。ここです」
そう言ってナギさんが歩みを止めて扉の方を向きます。そしてノックした後に向こうの返事を聞かず、ドアノブに手をかけて扉を引いて入って行ったので私も後に続きました
「ん?」
ベットの上で座っている隊長とユッカさんが、同時にこちらを向きました。
「おはようございます隊長、お見舞いに来ました」
「こんにちは隊長。私も来ました」
ナギさんの後ろから顔を出して挨拶をします
「ナギにアイビーか、来てくれてありがとう。今椅子を出そう」
そう言ってベットから降りようとした隊長をユッカさんが抑えて、代わりに椅子を出してくれました。
「どうぞっス」
「ありがとうございます。これシュークリームです」
そう言ってナギさんがユッカさんに袋を渡したので、私もそれに倣ってお菓子を渡します。
「二人ともありがとうっス。今分けるっスよ」
ユッカさんは慣れたように近くの棚から人数分の皿を取り出して、シュークリームを皿に乗せて渡してくれました。
「ありがとうございます」
渡された皿を受け取ってナギさんの隣に座ります。
「それで隊長ケガの具合はどうなんですか?」
「ああ、大事はなのそうだから、前に伝えたように仕事が始まるのは7日後だ」
「了解しました」
そう答える隊長の方を見ると包帯だらけでした。この部屋に入った時には顔位にしか包帯が見えなかったのですが、こうして近くに座ってみると顔以外にも沢山包帯が巻かれています。
「あの、隊長そのケガは、どういう経緯で出来たんですか?」
特に気になるのは皮膚が見えないほどにぐるぐる巻きにされている右手について聞きたいです
「ああ、少し転生者を溺死と焼死を同時に行えるように溶岩に突っ込ませたら、間違えて右手を突っ込んでしまってな。転生者を殺すころには右手がほとんど焼け落ちてしまってな」
そう言った後に左手でシュークリームを持って頬張りました。
「え・・・そ、それって大丈夫なんですか?」
私は明るく言う隊長に若干引きながらユッカさんに聞きます。
「大丈夫っスよ。ここの医療技術は四肢欠損レベルは治せないっスけど、指の再生までなら出来るっス」
「そうなんですね」
「それよりもこの休暇二人はどうするんだ?」
隊長が急に話題を変えてきました。
「本当は今まで行っていた世界に行きたい所なんですけど問題起こしたばかりなので、今回はナギさんの行く世界に御一緒します」
「少し別の世界も興味を持って欲しいなと思いまして」
「そうか、確かに一つの世界にこだわるよりも沢山の世界を見て回った方がいいからな」
そう話をしているとノック音がして扉が開いて白衣を着た女性が入ってきました
「シェフレラさんそろそろ治療を開始するので、他の方は退出をお願いします」
「もうそんな時間かナギ、アイビー、私の事は気にせずに休暇を楽しんできてくれ」
「はい、では隊長失礼します」
そう言ってナギさんが立ち上がってお辞儀をしました。私も立ち上がってお辞儀をします
「隊長またお土産持ってきますね」
「また来るときには、もう向こうに戻っているだろうが、まぁ楽しみに待っている。あと土産話を聞かせてくれると嬉しい」
「土産話、分かりました」
頷くと隊長はニコリと笑って手を振って見送ってくれました。
「さて、アイビーさん服を渡しますので適当に着替えてください」
扉を出た後にナギさんが荷物から服を取り出して渡してきました。
「あ、はい分かりました。でもどこで着替えればいいですか?」
辺りには扉が沢山あるのですが使っていいのかわかりません。
「そうですね・・・部屋に戻りましょうか」
「わかりました」
私達はそう言って頷いた後に部屋に戻るために歩き出しました
「では準備はいいですか?」
「はい!準備完了しました」
着替えの為に部屋に戻った時に少し必要そうなものを持って下に降りると、ナギさんだ剣を持って刃こぼれが無いかチェックしていました。
「ナギさんその剣は?」
「これは向こうの世界に行ったときに自腹で買った剣です。創造課からの装備は私達用にカスタマイズをしてはいますけど、あくまでレンタル品なので買うのは少し面倒ですし、金額も結構するんです。隊長は刀を一振り買いましたけどね」
創造課の装備の金額は知りませんけど、少なくとも気軽に買えるような金額がしそうなのは分かります。オーベルテューレやカンタービレが簡単に買えたら問題ですからね。
「さて」
そう言って剣を鞘にしまった後に荷物に引っ掛けて吊り下げました
「では、出発しましょうか」
「はい」
そう言って私達はなた部屋を出ます。
そして転移課に向かい、転移先を転移課の人に言うのですが今回はナギさんに決めてもらうので、それが終わるまでこれから行く世界について少し調べてみることにします。あまり知りすぎると、現地に行く楽しみと知る楽しみが無くなってしまうので軽く触る程度にとどめておきます。
「アイビーさんお待たせしました。転移を開始するそうなのでこっちに来てください」
少しすると転移が始まるようでナギさんが呼んできました。
「これから行く世界の文明はアイビーさんの行っていた世界よりは少し遅れていますが、魔法技術はそれなりにですので楽しめると思いますよ」
「それは楽しみですね」
美味しい物があるといいなぁ・・・
ナギさんに近づくと転移が開始して少しずつ体が浮いてくる感覚がします。そして次第に目の前が真っ白になってあまりの眩しさに目を瞑ります
少し時間が経つと浮遊感が収まり始めて、少しずつ目を開けます。転移した場所はまた裏路地でしたが、今まで私が行っていた世界とは少し違うように感じます。
「到着しましたね。まずは人通りがあるところに行きましょう」
ナギさんはさっと見回した後に迷わずに歩きだします。はぐれないように後ろについていきながら、周りを見渡します。
私が行っていた世界はコンクリート製だったのですが、この世界の建物の壁は石造りや木製が目立ちます。ナギさんが言っていたように技術は向こうの方が少し発展しているようです。
「もう少しで広場に出ます」
そうナギさんが言った直後に道が開けて、明りが差し込んできました
手を翳して少し目を細めて光に目を慣らしながら、目を開けると目の前に巨大な建物が建っていました。
「すっごーい!!」
私は建物を見上げながら、目をキラキラさせて思ったことを口にします。




