疑問が解決することは無く
ミーティ城の外でウルト様を待ち、左手の薬指にはまっているウルト様特製の婚約指輪の宝石を撫でながら今までの事を思い出します。
あの日宮廷魔導士だったウルト様のお父様のアルト様に連れられてウルト様が王宮にいらしたときから少しづつこの国は発展してきました。
物理攻撃も魔法攻撃も無効化する装備に新しい魔法技術の開発、そして侯爵家の娘である私と婚約しました。私のお父様は現国王の弟になります。つまりウルト様を王家の一員として国に取り込んだと言うことです。実際私やウルト様の意見は聞かずに決まりました。それまではあいさつ程度であまり関わることの無かった私達はともにいる事が増えました。最初の頃はウルト様も優しく接してくれたので楽しい日々でした。
でも少しづつ何かがおかしくなってきました。
今まで平和だった王国が魔法の発展によって少しづつ歪んできている。貴族は周辺諸国への侵略を強く唱えだして世界を手に収めようと無茶を言い出しています。アスラ聖国の宣戦布告もタイミングが良すぎます。そしてアスラ聖国との戦争に勝利した後に、従属を申し出てきた国もありました。最近の出来事では魔法を使えない人でも魔法が使える魔道具の開発をしていましたが難航していました。しかしアスラ聖国の宝物庫に都合よく開発中の魔晶の参考になるような魔道具が発見されて開発が一気に進みました。まるで世界が私達を中心に回っているような、そんな気がしてなりません。
私は都合よく物事が動いているように感じます。
そして今戦っている人達、本来ならウルト様に事情を話していた人とも話をしたかったのですが、ウルト様が殺してしまいました。
さらにウルト様が話をした時もそうでしたが、本来なら簡単には信じられないような話を国王陛下はまるで疑う余地もなくあっさり信じてしまいウルト様の提案も飲みました。
いつもなら異議や反論を言っている貴族たちもウルト様の言うことには一切反論や意義を唱えませんでした。
その光景を見ていた私は何か薄気味悪いと感じました。
国王陛下の前であっても蹴落としや擦り付けを怠らない貴族達が一致団結して手を取り合っている。
何も知らない人たちから見れば国のために一致団結している素晴らしい人達ですが、いつもの彼らを見て知っている私にとっては違和感がありすぎて正直気持ち悪いです。
私はこの違和感の答えをあの人達なら知っているのではないかと思いました。
だからこそウルト様に無理を言って部隊に入れさせてもらって一緒に行動して、あの人たちに接触できればと考えました。でもなぜか副隊長と言う位置に据えられたのは分かりませんでした。
そうしてあの人たちを見つけることは出来ましたが結局話すことも出来ずにこうしてお城の外にいます。
私には今のウルト様を信じ切ることが出来ません。けれども裏切ることも出来ずにこうしてうだうだしている。どうすればいいのでしょうか・・・・
そうしているとウルト様がお城から出てきました。
「お疲れ様です。ウルト様」
そう言ってペコリとお辞儀をする。
「いや、まだだ。終わってない」
そう言ってウルト様が手に魔力を集めだして前方、お城の直上に向かって魔力を圧縮し始めました。
あれは聖獣を殺した時に放った魔法よりも、さらに強大な魔法を放とうとしています。
「何を?」
「あいつらに止めを刺す。クレア以外の隊員は城の周りを見て奴らが城から逃げ出さないように見張っていてくれ」
その指示を聞いて私以外の隊員はお城を取り囲むように移動し始めました。
ウルト様は全ての魔力を注ぎ込んでいるようで遠くにいても感じる強大な魔力。それを制御しているウルト様もすごいです
・・・いえ、そうではなくこの威力は大きすぎます例え私達が装備でケガをしないとしてもこの威力で放てばお城の周囲一帯は跡形もなく消えてしまいます。そうなれば、もはや彼女たちを話すことも出来ずこの都市の復興させることも難しくなります。
止めなければ!そう思って手を伸ばす時にはもう遅く
「消し飛べぇぇぇぇ!『オールオブ スキャッターアウェイ!』」
ウルト様の叫び声と共にお城の上の魔力が爆発して赤い炎となりお城を飲み込んでいく。
少し遅れてこちらに吹いてくる熱風を魔法で受け流しながら見る。
爆炎が飲み込めるものを飲み込み尽くし上空には爆発によって発生した雲が立ち上り、爆発の後を示すようにお城の姿は無くあるのは真っ赤なクレーター。食べ物をよこせと言いたげに真っ赤な溶岩で満たされたクレーターが口を開けている。
「これで満足なんですか?」
私は伸ばした手を降ろして握りながらウルト様を見ます。
「先ほどの爆発でこの都市はもはや再生がほぼ不可能になりました。それも望んだことですか」
「ああ、そうだ」
自分が起こした惨状に満足したように笑顔を浮かべながらウルト様は言います
「この惨状も魔法の力があれば解決できる。やってみせるとも。いいじゃないか敵は全滅してお城の解体作業もしなくて済む。これ以上に何を求める?」
そう言ってウルト様は周りを見る。私以外の隊員はウルト様の下に集まって先ほどの攻撃の跡を見ながら自分達の隊長のすごさに歓喜し、ウルト様をたたえています。
「そうではないのです。この攻撃明らかにやりすぎです。もう少し威力を抑えても」
「それで取り逃がしたらどうする。俺は負けるわけにはいかないのだよ。この国の魔法技術の開発、軍事力増強。やりたいことが沢山あるのに自分の都合のために殺そうとしてくる奴に殺されたくない。特に自分の力でもないのに道具とかの力に頼ってイキっている奴らにはな!」
そう言って満面の笑みを浮かべてクレーターの方を再び見る
「確かにその通りだが」
隊員達の声に掻き消えそうな小さい声が後ろから聞こえて私が振り返ると、いつの間にか隊長のほぼ真後ろまで接近していた女性がウルト様の首を掴んでいました
「貴様に言われたくないものだ」
そう言った女性はそのままウルト様首を掴んだままクレーターの方に消えていきました。
「ウルト隊長!?追うぞ」
部隊の誰かがそう言って二人を追いかけようとしましたが
「そうは問屋が」「降ろさないっスよ」
長い鞭のような物が私達目掛けて襲い掛かってきたので私達は咄嗟に防ごうとしましたが、何名かは間に合わずに直撃してダメージは無いにしても反動で後方に跳んでいきました。そして目の前に一組の男女が空から降りてきて行く手を塞ぎました。




