夜、寝る前に
今回の仕事が無事に終わって部屋に戻ろうとした時にナギさんに声をかけられました
「アイビーさん、少しいいですか?」
「ナギさん?はい、大丈夫です。部屋に入りますか?」
「いえ、すぐに終わります」
話が長くなるなら部屋で聞こうかと思いましたが、ナギさんが断ったので廊下で話を聞くことになりました。
ちなみに他の皆さんは軽くお疲れ様の食事を行った後に隊長以外は自分の部屋に戻りました。
隊長はホットミルクを飲みながら旅行の本を眺めていました。
「アイビーさん、明日からの休暇の予定は決まっていますか?」
「一応明日の予定は決まっています。明日はこの前行った温泉街に行って温泉に入ろうと思っています。その後の予定は決まっていません」
「そうか、それならば休暇の最終日に食事に行きませんか?焼き肉屋を予約したので」
「焼肉ですか・・・」
私は少し考えます。
私は焼肉を食べたことはありませんし食べてみたいと思いますが、少しドラゴンの断面を思い出してしまい少し躊躇してしまいます。
でも食べてみたい、この前カルセさんと食べた海鮮料理はとても美味しかったです。
ならば焼肉も美味しいかもしれないです。
しかもナギさんから誘ったのならハズレの訳がないと思います。
「・・・アイビーさん?」
私が考え込んでから動いていなかったようで、ナギさんが声をかけてくれました。
「あ、はい大丈夫です。是非食べに行きます」
「そうですか、良かったです」
ナギさんはホっと安心した顔をしました。
「では、集まる世界と場所等の詳しい話は明日教えます」
「わかりました」
「あと一つ、この食事会はアイビーさんの歓迎会を予定していますので、隊長達も来ます」
「あ、そうだったんですか?もしかしてナギさんが進めてくれていたんですか?」
「いえ、元々進めていたのは隊長なんですが。
『私は仕事以外の提案は本人の意思で参加するか断るが決めて欲しいが、私が誘うと上司から誘いになってしまって断りにくいのでは?と思ってしまうので、すまないが今の所アイビーと同姓であり仲良さそうに見えるナギかセラが聞いてくれないだろうか?』と言われたので私が聞いたのです」
・・・隊長って結構、心配性なんですね。
「そうなんですか。因みに断った場合はどうするつもりだったのですか?」
「その場合は別の日に変更する予定です。そして断られ続けた場合は中止の予定でした」
「・・・そうなった場合、私が怒られたりしますか?」
「いえ、ただ隊長がしょんぼりして数日落ち込むだけです」
・・・断らなくてよかったと思いました。
ちょっと隊長のしょんぼり顔は見てみたかったです。
「では、話は以上です。アイビーさん良い夜を」
ナギさんはそう言ってほほ笑んだ後に自分の部屋に戻るために背を向けました
「良い夜を」
ナギさんに声をかけて私も自分の部屋に戻りました
部屋に入って備え付けてある特殊冷蔵庫から飲み物を取り出す。
前に隊長にどこが特殊なのか聞いたときにこの冷蔵庫は腐敗までの時間を停止させて、なおかつ入れた物の温度は変えることができる優れものなのだと教えてもらった
隊長曰く私達はここでは食べ物は買うことが出来ず、それぞれの世界で買うか栽培するしか食べ物を手に入れることができないので、腐敗しやすい物を手に入れた場合に後で食べられるように開発されたのがこの特殊冷蔵庫だそうです。
科学の進んでいる世界と魔法技術が進んでいる世界の技術を合わせて量産できるようにした創造課の意地の結晶みたいです。
そのことを思い出しながら飲み物をコップに移して窓に寄りかかりました。
窓の外はうっそうと生い茂っている木々が何処までも続いているように見えます。
セラさん曰くこの森は隊長の趣味で作られた森で日が経つと雪が降ったりするようです。
雪、私は知識として知ってはいますがこの目で見たことはありません
雪だけじゃなくこの仕事を始めてから今までほとんどが初めての出来事や物なので内心ではとても楽しい事ばかりです。
作られたばかりなので何もかも新鮮なのは当たり前ではありますが、それでもこの体で見て食べて感じた物事に感動して、皆さんの温かさに包まれて感謝でいっぱいです。
隊長には「正直この仕事はきついと思う、人は殺すし血肉を見ることなんて日常茶飯事だ。もし辞めたくなっても私は止められない」と言われたことがありましたが、私はこの仕事に誇りを持っているわけではないのですが辞めるつもりはありません
今はまだ私の知らないことが多すぎて半人前です。
もっといろんなことを知って感じて体験して皆さんに胸を張って一人前と言われるようになるまでは辞めるつもりはありません
・・・まぁ、一人前になっても辞めるつもりはありませんけどね。
さて明日も早いのでさっさと寝ましょう
私は残っていた飲み物を一気に飲み干してベットにダイブする。
カルセさんと温泉に入った町で見つけたフカフカの枕に顔をうずめて深呼吸した後に掛け布団を乗せて私は目を閉じました。
チクタクと進む時計の針が進む音が聞こえる。
「・・・・さて、そろそろ部屋に戻るか」
私は旅行のパンフレットを閉じ、伸びをしてコップを洗おうと立ち上がった。
すると端末の通知が鳴った。
「む?」
コップを机に置いて見るとナギからのメッセージだ。
『アイビーさん焼肉OKだそうです』
「・・・フフ」
嬉しさのあまりに緩んでしまった口元は抑えたが声がこぼれてしまった。
「よし!よし!」
口を抑えていない手を握って喜びを噛みしめる。
「では・・・どこに行こうか?アイビーにとっては初めての焼肉だからな、なるべく美味しいところに行かなくては」
予算については問題ない
元々は私の我が儘のようなもの、ならば代金は私持ちでいいのだから私の予算の範囲内で行ける所にしよう。
私は椅子に座り直しパンフレットをもう一度開く。やはり皆で楽しむのもいいがこうして計画を建てているこの時も楽しいものだ。
皆の前では妙なことは言えないからな皆は気にしていないようだが私は上司。私の言動は皆よりも気をつけなければならない。下手なことを言ってしまうと、上司の私の言葉では断りずらいかもしれない。
なるべく皆が楽しくなくてはいけない。
私はそう思いながらも皆で食べに行くということにワクワクしながらパンフレットを眺める
ああ!!早く当日にならないかな!!




