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異世界転移・転生対策課  作者: 紫烏賊
case2 三人の勇者
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本棚と昔の話

記録課の奥はとても大きな本棚が並んでいました。


そしてその本棚の上には同じように本棚が上に続いています。


そして本棚の間を走る何十人もの人影、多分記録課の人たちでしょう。本を抱えながら大きな音を立てずに走っています。


「ここが記録課の仕事場である、星々の本棚です」


そう言ってバロックさんは歩き出しました。


「本だらけですね」


バロックさんを追いかけながら感想を述べました。


「そうでしょう、ここには最初の神が作った世界からの記録がありますから」


「記録課の仕事は神が作った世界の歴史を絶えず記録し保管し続けることです。ですので、ここには神が作った世界の歴史のほぼ全てが記録、保管されています」

「だから記録する為に人員が補充され続けているんですね」

「その通りです。全部手作業ですのでミスや漏れがありますが、それは仕方ありません。そしてここで我々のすべきことは、今回の仕事で使う資料をまとめることです」

「え?この本棚の中からですか?」

「大丈夫です。世界ごとに本棚にまとまっていますし、いざとなったら検索機があります」


壁に設置されている機械を指さしました。


「検索機」

「よく使うので後で使い方教えますね」

「使うのですか?世界ごとにまとまっているなら、使わないと思うんですけど?」

「いえいえ、異世界に転移したり転生する人は元の世界の情報が必要だったりするので、その世界の本棚を検索するのに検索機が必要になるのですよ」

「そうですね、確かに調べる世界は一つだとは限らないですね」

「ええ、そして検索して探した本の必要な項目をコピー機でコピーして、まとめるのも仕事のうちです。ではまずは私達の行く世界からまとめましょうか」


そう言ってバロックさんは本棚に向かいました。


「はい!!」


私も本棚に向かいました。



「お、多い・・・」


机の上に倒れこみながらそう言いました。


世界の目的の転移者の名前を探して、それをコピーしてまとめて、また探して・・・・

つらい、そして気持ちも悪くなってきました。


「大丈夫ですか?」


バロックさんが心配して声をかけてくれました。


「少し気持ち悪くなったので休ませてください」

「活字酔いですかね?大丈夫ですから十分に休んでいてください」

「あ、ありがとうございます」


私は椅子をいくつか並べて寝転がりました。バロックさんは私の隣に座ってまとめ始めました。


パラパラとページをめくる音と小さい走る音、時折誰かが正気を失って叫ぶ声が聞こえます。

・・・気まずい、何か話したい


「バロックさんは、この仕事慣れているんですか?」

「まぁそうですね」


バロックさんは手を止めずに話し続けてくれます。


「私のナンバー、製造番号は最初の頃に言いましたね。私は後輩がセラさんしかいませんでした。私がこの部隊に来た時にいたメンバーはナギさん、隊長、ユッカさん、そしてエバーさんとカズラの四人でした」


そういえば皆さんからカズラさんの名前は聞くけど具体的な話は聞いたことがないですね。と言うか皆さん話したがらないですね。


エバーさんは初耳です。


というかセラさん私を除いて一番新人だったんですね。包容力と言うかお母さん力が強かったので、古株だと思っていました。


「みんなナギさんを除いて脳筋でして、記録課から資料を探すのが自分の仕事だったのですよ。そのおかげですね。隊長も頑張っていますけど、来たときは蛮族かってくらい皆さん脳筋でしたから」


楽しそうに苦笑しながらバロックさんは続けます。


「私とナギさんが資料を整理して、他の皆さんが攻略する、その連続でした。

エバーさんが魔法を使った後方支援をしてるのですけど、ブレーキというか自覚の無いニトログリセリンでして、隊長の作戦をさらにひどくする人でして大変でした。

ナギさんは創造課からの異動でこの部隊にきたので事務仕事には慣れていたのですが、それでもあの時は本当に大変でした」


「ナギさんは創造課にいたんですか?」

「元々ですよ。来たのは私が入る少し前だったので、生まれではナギさんが先輩ですが、関係は同期みたいなものですね」


資料をまとめながら続けている。


「なので隊長からは最初の頃はナギさんと一緒に資料をまとめていました。ずっとまとめ続けているので、流石にきつかったですね」

「でも楽しかったのですよね」

バロックさんの顔を見上げながら私は聞きました。

「・・・どうして思うのですか?」

「その話をしているバロックさんの顔が楽しそうですから」


私の来る前の話をしているバロックさんが、とても懐かしくそして楽しそうに話しているのを見て、本当に前の部隊も好きだったんだなぁと思いました。


「・・・そうですね。この仕事や、皆さんと話している時は楽しいですし、隊長達もそう思っているのではないでしょうか。」

「・・・」

「さて、そろそろ大丈夫ですか?そろそろ復帰してこの資料をコピーほしいのですが」


と言って資料の山を指さしました。


「はい、少し良くなったので手伝います」


そういって体を起こして手伝おうとしたとき


「ウース、能力課の用事が終わったから手伝いにきたッス」


そう言ってユッカさんが来ました。


「お疲れ様です、ユッカさん。そしてありがとうございます。」


「隊長はどうしました?」


バロックさんの言う通り、一緒に能力課に一緒に行っていたはずの隊長の姿がありません。


「隊長なら、別の場所で資料集めてます。

『バロックなら先に行く先の世界について集めるだろうから、私は勇者たちの資料を集めておく。ユッカはバロック達を手伝ってやれ』だそうで、俺がきました」


すごい、実際に私達はその通りだった。


「ってなわけで隊長は後で合流するので、気にしないでくださいッス。で、何手伝えばいいッスか?」

「そうですか・・・ではこの資料のコピーをお願いします」


バロックさんはユッカさんに大量の資料を渡しました。


「了解ッス。それにしてもやっぱり、すごい量ッスね」


大量の資料を抱えながら、ユッカさんはコピー機に向かいました。


「あ、お手伝いします」


ユッカさんの資料をいくつか分けてもらって歩き出しました。


「サンキューッス、じゃ一緒にいきますか」

「はい!!」


歩き出した私達をバロックさんが見送ってくれました。


「・・・・台車あるから使えばいいのに」




「・・・でバロック君と何話してたのさ、アイビーちゃん?」

「私が来る前の部隊の話です」


そう言ったときのユッカさんの表情は怖かったです。


とても不快な物を思い出したような顔をしていました。


けれどその顔も一瞬で無くなって、いつもの笑顔に戻りました。


「・・・・そッスか」

「・・・なn」

「何でとは聞かないでほしいッス」


私の聞きたかったことを抑えられました


「バロック君にはあの思い出はとても綺麗ことだけが残っているッスよ

でも俺は違う、俺にとっても大切な記憶ではあるけど、あまり思い出したくないものが多いッス

ナギさんも隊長も同じようなものッスね。

なので、もし隊長かナギさんに聞くなら嫌われたりする覚悟をしてから聞くッスよ」


いつになく真剣な顔をしてユッカさんはそう言って前を向きました。


聞きたい気持ちを抑えて私はユッカさんについていきました。


今聞いてはいけないことだと感じながら。




「っと・・・ふう、こんなもんッスかね」


山のようにまとめられた資料に、ユッカさんが最後の資料を置いて伸びをしました。


「手伝ってくれて、ありがとうございます」

「いやいや、どうってことないッスよ」

「では、運びましょうか」

「はい」


私達はバロックさんの用意した台車を押して部屋に戻るために歩き出しました。



「・・・・・皆?」


資料を集め終えて私達に合流しようとした隊長を置いていって・・・


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