はるか空の彼方より 殺意を込めて
「まだ見つからないのか?敵の攻撃兵器は」
ここユグドラシルが攻撃目標になっていると判明して早一週間が経過した。前回の襲撃にユグドラシルは壊滅的な被害に会ったそうだ。その内容はその時にいなかった俺達も青ざめ血眼になって攻撃兵器を探し回るほどに苛烈な内容であった。にも関わらず懸命の捜索の甲斐は無く敵の攻撃兵器の影も形も掴むことが出来ていない。探索魔法にはマップ上に反応はあるだがその地には何もなかった。分かっているのは今日攻撃が来ることだけだ。
「ああ、座標は漏洩を防ぐために暗号化されていて解読は困難だ。仲間と協力して地表を探しているがそれらしき兵器の痕跡もない。向こうにおいてあるアレも一個しかないから情報があまり集まらないのも一因だが、こうも見つからないとなると本当に攻撃があるのか疑問に思うのだが?」
アレとは以前偶々我々が接触しようとしていたダンジョンマスターだった仲間が奴らの本拠地に残したダンジョンモンスターのことだ。そのステルス性と情報をダンジョンマスターに送り続ける性質を利用して向こうの様子をスパイしていた。
運よく仲間の一人がダンジョンマスターとなったことで今まで知ることの出来なかった向こうの様子を知ることができ、やつらの行動を幾分か知ることが出来ていた。
だが今回のような大規模な作戦を知るには一体だけでは不足だった。おかげで俺達は奴らの攻撃兵器が何処にあるのか皆目見当もついていない。
「だがそろそろ奴らの作戦が始まる。あるかどうかは攻撃さればわかる。もしあるなら発射元を特定すればいい。そうすれば俺らが直接叩きに行ける」
時間からしてあと10分程、ユグドラシルの防御性能ならどんな攻撃も一発は耐えられる。一発耐えられれば十分だ。その間に発射元を特定し俺達が直接叩く。
「出来るなら楽に行きたいねぇ」
「そうだな、やれやれ俺達は皆と協力したいだけなのにどうしてこう突っかかってくる奴が多いのかねぇ」
俺達は今のユグドラシルしか知らないが以前ここに本拠地を構える前のユグドラシルの時も一度向こうから大規模な攻勢があったそうだ。その時は沢山の犠牲を出しながらなんとか逃げ延び、ここに再び拠点を構えたそうだ。そのせいか中には向こうを壊滅させることに躍起になっている仲間もいる。
まあ俺達はそこまで好戦的ではない。ただし積極的に攻撃はしないが売られた喧嘩はしっかり買う。それだけはほぼ全員が同じだ。
その後ある程度捜索を続けたが特に何の成果も得られなかった。チラリと時計を見る。
「まもなく、攻撃が始まる外に出よう」
「あ、あぁ」
俺達は席を立ち、屋外へ通じる通路を歩いていく。通路は騒がしくあちこちで急いで走って行く仲間が見える。逃げるための準備をする人、戦う為にボックスから武器を取り出して仲間に配っている人、皆自分に出来ることを一生懸命にやっている。
「作戦の内容は覚えているか?」
無論憶えている。俺達の役割は時間稼ぎ、あの方が来るまで時間を稼ぐことだ。あの方さえくればこの状況何てちゃぶ台の様にひっくり返る。そしてあの方の力を使い俺達は世界をすくう。
「それくらい憶えているよ」
「ならいいが油断するなよ。」
そんな会話をしているうちに通路を抜けてベランダに出る。雲一つない青空から降り注ぐ光を全身で浴びながら周囲を見渡す。白い外壁に青い屋根そびえるほどに巨大な塔の中間のベランダに俺達が立っている。下を見れば仲間たちが360度全方位を監視している。
天から降り注いでいる光に反射する城壁は綺麗だが、見栄のために白い素材を使用したが流石に目立ちすぎるので認識阻害魔法によって隠していた。
しかし、攻められることが確定している現在、認識阻害魔法を解除し代わりに防御魔法、結界等々をこれでもかと何重に張っている。
その堅牢さはたとえドラゴンが何十匹集まり一斉にブレスを吐かれようが何の問題もない。最初にして最大の障害だ。
「まぁ、時間稼ぎならこれくらいでいいだろうさ」
「敵の攻撃兵器が見つかっていないのが気になるな」
「またそれかよ。見つかってないと言うことは造られてないガセ情報なんだよ」
「それならいいけど…………?」
何か言おうと口を開いたまま上を向いて固まった。
「どうした?」
「何かが、来る!!」
「え?」
釣られて上を見るが太陽が輝いているだけで何もない。
…………何か眩しくないか?段々と日の光が強まっているような気が…いや違う。太陽の光だと思っていた何かがビーム攻撃だと言うことに気が付いた。
「!!」
咄嗟に手を翳し張られている防御魔法を強化する。それと同時に上から降り注ぐ光が拠点に張られている防御魔法に直撃する。何重にも張った防御魔法の壁が嫌な音を立ててひびが入り、逸らされた光、いやレーザーが周囲の建物や山を削り飛ばしていく。魔力を通して伝わる攻撃の苛烈さ、重さ、手を緩めれば間違いなく突破される。
その眩さに思わず目を瞑りながらも防御の手を緩めずに力を籠める。周りで警戒していた仲間も一緒に魔力を注いでいるが押されているのを感じる。
それでもこの防壁を破られるわけにはいかない。出来得る限りの力をこめて魔法を強化する。盾と矛限界まで力を込めたぶつかり合いは攻撃を防ぎ切った盾に軍配が上がった。
目が眩むほどの閃光は途絶え、この拠点に傷は一つも付いていない。
とはいえ完全に無傷だとは言えず。バリアのあちこちがひびが入り、場所によってはかけているのが現状だ。次同じ攻撃が来れば間違いなく突破される。
「あいつら一体どこから攻撃を!!」
「攻撃兵器は無かったんじゃないのか?!」
「それよりもバリアの修復をしないと」
「戦闘準備!!ネズミ一匹逃がすな」
あちこちから聞こえる声を流しながら上、ビームの発信源を見つける為に視覚を強化する。
が、やはり敵の影も形も見当たらない。あれだけの攻撃を放てる兵器なら見えてもおかしくないはずだ。一体どこに…………
それを睨みながら考えているとまた空がキラリと光った。
「まさか」
嫌な予想が頭をよぎり、急いで防御魔法を空へ展開する。
直後に先ほどと全く同じレーザーが降り注ぐ。先ほどとは違い防御魔法の損壊が激しい。
攻撃に気が付いた仲間も頑張って防御魔法の補強を行っているがビームが止むころには全ての障壁が破壊されている。もはや敵を阻む壁は存在しない。
つまり…………
その後の考えに達するよりも早く上空に幾多数多の影が現れる。
敵が来た。




