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異世界転移・転生対策課  作者: 紫烏賊
case7 マッチポンプな救世主
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次の日

 次の日、日が昇り少しすると戦争が再開する。別に夜間も戦闘はあるにはあるのですが昼間と比べると幾分か規模が小さいので結局の所お日様が昇っている間が一番戦闘が激しい時間です。とはいえ隊長からの連絡が来ない限りは動いたりはしないので、こっちの人達が負けないように注意しながらあっちの人達の邪魔をしないように戦線の維持と敵の数を減らしています。


 今回は室長に試作品をいくつか渡されているのでそれを試しながら本番で疲れないように適度に戦います。私達は転移者を殺すためにここに来たのでまだ戦っていないのに疲れて動けなくなっては意味が無いのでなるべく疲れないように、かといって適当に攻撃するのではなく、特に偉そうな指揮官っぽい人を三人ほど狙って行動不能にして回るだけです。


 それでも指揮をする人がいなくなると相手は混乱を起こしたり動揺したりします。一応副官もいたりしますが一緒に撃って無力化しているので指揮をしてくれる人がいなくなって結局は混乱したままになっています。


 隊長からの連絡はまだ来ないのでそうやって最前線をかき乱してはいますが、なにぶん戦線がやたら横に広がっているので全部行けるわけではありません。

でもこうして味方として活動することで私達にいい印象を持ってもらって、背中から撃たれないようにするための工作だと、隊長は言っていました。


 でも、ここで戦っている人たちは転移者が関わっていなければ戦うこともなく死ぬ必要もない人達でした。出来るなら転移者以外は死なないで欲しいと隊長は思っているのかもしれません。私も別に人を積極的に殺したいわけではありません。とはいえ数は向こうが圧倒的に多いので無力化するのも一苦労です。適当に撃って無力化をすればいいと思うかもしれませんが倒れた先の人が重なってしまうと一番下の人が鎧の重さと重なった人の体重に負けて窒息死か圧殺されてしまうかもしれません。それを防ぐために倒れる場所が重ならないように撃ったりあえて接近して蹴り飛ばしたりしていますが、段々と敵の数も増えてきて忙しくなってきました。


「面倒くさいですね!」

 弾を撃ち尽くし空になったマガジンをやけくそ気味に敵に投げつけます。例え当たれば痛いマガジンであってもフルフェイスの鎧を着ている敵には少しの間目隠しになる程度の障害にしかなりませんが、それでもその時間があれば新しいマガジンをセットしてレバーを引いてリロードを終える時間は稼げます。そしてマガジンが弾かれて再び前が見えるようになった時には銃口をこちらに向けた私が立っています。


 そんな調子でずっと撃ち続けていますが一向に敵の勢いが収まる様子がありません。前回は十数人撃って無力化したらビビッて退却まで追い込めたのに前回よりも多く撃ってもビビる様子がありません。


「転移者が何かしたようですね」

「それはわかるっスけど何をしたんスかね」

「さぁ?神が出来る事など無数にあります。その一部を手に入れている転移者が、銃を恐れずに無駄に突撃してくる兵士に一日で仕上げる手段なんて切りがありません。考えても意味がありません」


 それでも予想をすることは出来ます。大体は銃に対する恐怖心を消したか、脅したか、それとも銃への対処方法を教えたかですね。ただ、恐怖心を消せば私のマガジンを投げつけた時に怯むことはありません。銃への対処法は無策ともいえる突撃をしている所を見るに否定されます。


「そうっスよね。というか隊長の工作早く終わらないっスかねー」

「それは向こうの人次第ですね。人の行動は記録課の資料を見れば全部わかりますけど、人の内面までは記録に書かれてないですからね。先日の会話の中で隊長が裏切ってくれそうな人を見つけてうまく交渉できることを祈るだけです」


 見れば戦闘中にも関わらずに手を止めずにユッカさんとナギさんが話しています。

隊長はあくまで敵の軍の全てが転移者をしたって従っているわけでは無く逆らったら殺されるという恐怖心で従っている人が少なからずいると隊長は言っていました。転移者のほとんどは自分本位の考え価値観で動き、周りも神からの加護の影響もあって止める人もいないので自分が間違っているなど露にも思っていない、だから転移者に対して従っているが忠誠心ではなく自分の立場と恐怖心で渋々従っている人がいる。それを煽ったり脅迫したり諭したりして可能な限り寝返らせるから少し待っていてくれ。


 隊長は転移前の作戦会議で分かっているかのようにそう言いました。実際のところどうなのかは分からないが、少なくともまだ隊長からの連絡が来てからこの後の作戦が決まります。

その間私達はずっとこれを続けているので隊長には終わらせて合流して欲しいです。


 私の銃の弾数も無限ではありませんし、転移者に対して撃つ用の弾は一般人相手に使う訳にもいかないので時折スタンガンを使って節約しながら戦闘を続けます。

そうして一般人を無力化しながら転移者に敵対している人たちが負けないように戦線を維持していると敵の兵士の一部の動きが急に止まった。


 直後に隊長から連絡が入る。短く『次の行動へ』それだけでしたが、何が言いたのかは分かります。ようやく、隊長の準備終わった様です。つまりこれから私達は敵の奥深く転移者のいる本陣へ突撃します。その道中でどれだけ敵を引き付けながら突入すると陣形が崩れるので狙うそうです。

取り合えず目の前の壁のように立ちはだかりながら突撃してくる人たちをどうにかします。こういう時に便利なのがスタングレネード困ったらスタングレネード、取り合えずスタングレネードを投げて置けば転移者以外には有効です。ただ間違えると私達にも被害があるんですよね。という訳で今は使えません。代わりに盾を構えながらこちらに走ってくる人をバロックさんが殴り、取り落とした盾を使って大きく飛び上がってこちらに向かってくる人たちを飛び越えます。私達は創造課の道具が無ければ自分から空を飛ぶことは出来ませんが、他の一般人に比べるとそこそこ身体が強く作られているのでこの程度の事はお茶の子さいさいです。大きくジャンプしている私を見ている人たちの何人かの顔を踏みつけながら誰もいない場所を見つけて着地します。後ろを見れば他の皆さんも同じように顔を踏みつけながら着地しました。


 一瞬呆気に取られていた兵隊の人達ですが踏まれた人たちがバランスを崩して倒れた音を聞いて我にかえりました。


「何をやっている!行かせるな!!」


 その声で兵士たちが前も後ろからも一斉に襲ってきます。私達は後ろから追いかけてくる人達は無視して走り出します。当然前から襲ってくる人達に近づきますが、相手は兜まで被っているフル装備、何も着ていない私達よりも動きが遅いです。本当の兵隊なら私達の動きを終えても問題ないですが、聞いたところによると徴兵制度を廃止して騎士団を作り始めたのだそう。流石に何千、何万もの人を一辺に雇うなんてことはどう頑張っても出来ないので前線で戦っている人たちは戦争が始まって急いで集めた農民が大半なのでしょう、そんな人たちが鎧を着こんだ状態でそれなりに素早い私達を終えるわけもなく、グングンとその差を広げていく。


 それに剣の振り方も素人のそれです。とても分かりやすく単純な一撃、そして仕留めるというよりこちらに来るなとけん制する目的で振っている剣に当たるわけもなくさっと躱して前進を続ける。まずは転移者の場所に最短でたどり着くのが最優先、それにチラリと後ろを見ればはるか遠くから雄叫びのような声と激しく金属がぶつかる音がする。私達に気をとれて後ろを向いていた隙をうまくあっちの軍が突いたようです。


 このまま突破して欲しいところでありますが難しいでしょう。そして今は援護よりも前に進むことを優先します。


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