自浄作用
投稿再開しますが、諸事情あって毎日投稿ではなくなりました。
毎日投稿をほぼ半年頑張りましたが流石にキツイ
一日1万字とか書いている人って人間やめてそう(小並感)
自浄作用と言う言葉がある。川や海などに入った汚染物質や異物などが様々な要因によって分解されたりして自然に浄化される事である。例えば汚れた海水をアサリが取り込み綺麗な海水を排出してくれたりする。 自然が自分の力で問題のある部分を直していると言えよう。
「それで、隊長何が言いたいのでしょうか?」
仕事前のブリーフィング中に皆に対して自浄作用を説明している最中、アイビーが手を挙げて質問した。
知り合いと戦うことになってから大丈夫かと心配していたが仕事が終わってからもアイビーの様子は変わらず休暇が終わった後も元気に過ごしている。何があったか聞きたいところではあるが個人のプライバシーに入りすぎるのもいけないから聞かないでおこう。
むしろマンチニールの樹液をモロに食らった別行動組の方が被害が大きかった。幸いマンチニールの毒は痛みが強いだけで殺すほどの毒性は無い。それに医療魔法の存在もあって四人とも特に後遺症なく休暇明けには能力課から戻ってきた。今の所いつも通りだが、トラウマになっていないか心配だ。
「うん、つまり次の仕事は今回の転移者に対して世界規模の自浄作用が発生している最中という訳だ」
「世界規模の自浄作用…ですか?」
「ああ、世界規模だ。しかも結構質が悪い感じだ」
物のたとえで自浄作用を出したが、性質で言うと身体の免疫作用に近いと言える。自分の世界に生じた異常に対して何かしら排除しようとする動きを見せる。アナフィラキシーショックと言ってもいいかもしれない。どっちでも転移者に排除しようとしている動きであるのは間違いない。そして今回はそれを利用?協力?…して転移者を駆除する。
「転移者と言う異物に対して世界がそれを排除しようと動いていると?」
「その通りだ。アイビーの分かる出来事で言うなら、あの三人の勇者がいた世界で戦ったドラゴンがいただろう?あれを調べたら私達が来る少し前に転移者達がオリジナルと戦っていたのだがアレも転移者に対する自浄作用の一つと言える」
「あの転移者が変身したらしいドラゴンですか?」
「そのオリジナルのことだが、自浄作用は様々でそれぞれの世界に伝わる伝承や実際に存在する伝説の生物や巡り巡って転移者と同等の力が個人や国等いろんな転移者の敵対勢力の手に入る」
そしてその力を持って転移者や転生者へと戦いを挑む。ただ、実際に転移者に勝てる確率はただの転移者や転生者の場合は五分五分といったところだが、私達の仕事相手でもある神の力を持った転移者や転生者相手には限界がある。チートをぶつけようにも自然の流れでは神を超える代物をポンポンと作れるわけもなく転移者や転生者が成長する踏み台となってしまう。
因みに転移者や転生者を分けるランクのAとSを見分ける判定の一つにこの自浄作用によって発生した敵を突破しているかどうかが含まれていたりする。
この世界の免疫作用を超えてしまえば世界は転移者の思うままとなる。世界が転移者に屈したことで抵抗する勢力が無くなった転移者、転生者は好き勝手出来ると言うことだ。
「つまり私達はその転移者と敵対している人の味方をするということですね」
「そうだ、とはいってもこちらの事情を話すのは対象である転移者転生者とその周辺のみにしか話してはいけないので、向こうに私達の事情は話さず戦闘に参加することになる」
仮にこちらの事情を話したとしても転移者や転生者以外には『何言ってんだコイツ?』となってしまうのは目に見えているし、話さなかったら話さなかたで不審すぎる。そんな状態で背中を預けることなどできやしない。最悪不穏分子として殺されてしまうかもしれない。
それだったら急に現れた助っ人として現れて詳しい話は後でと言っておけば何とかなる。
「とまあ今回の事情は少し複雑だ。何せ敵対する転移者以外の勢力がもう一つあるからな。今までのように好き勝手撃たないように、特に私達以外の味方を撃たないように注意して欲しい」
全員からの返事を待って話を続ける。
「次に転移者の能力だが、これも今までよりも遠距離魔法での攻撃が主体となっている。今までの転移者は私ともう一人いれば何とかなったが、今回は難しそうだかた今まで以上にチームとしての連携をしていくぞ」
「まぁ、今まではチームプレイとか言いながら単独行動する転移者が多かったので別れたりしていましたが、今回は違うみたいですね」
今までは向こうがワンマンアーミーのような力を持っているのにパーティを組んだり何かの組織の長なのに一人行動をしたりしていたのでこちらも援護させないように動いていたが向こうがチームプレイで行くなら、こちらもそれに対抗するだけだ。
「転移者の方はわかるッスけど、その転移者に敵対している人たちってどんな人たちなんスか?」
「あー、そうだな、転移者の一番最初の婚約者の元婚約者の親が悪しき存在と契約したのが転移者と敵対している組織の長みたいだ。他のメンバーも転移者に何かしら苦渋を飲まされた人達で構成されているようだな。組織名などは特に決まっているわけでは無い様だ」
転移者や転移者が出てくると必ず出てくるプライドの高そうな偉い人、大体奴らの力の確認としてぶっ飛ばされるのがお約束ではあるが、その親からすれば愛息子や愛娘がどこぞの馬の骨にいじめられたので仕返ししたくなる人もいる。しかし、下手に刺激しても返り討ちにされるから強大な力を求めたりするものよくある展開だ。大体はその力に振り回されて自滅するが今回の人達はうまく制御できたようだ。
しかし、我々の事情を知らない一般人からすれば転移者側が正義に見えるのに私達からするとむしろ逆側が世界的に正しい事をしているのが中々皮肉が効いている。
「憎しみってすごいんですね」
「憎しみ妬みは使い方によっては一番のエネルギーになるからな。この組織はまっとうな使い方をして成功した場合だな」
いやまあ、本当は憎しみ妬みより向上心や憧れを元に頑張ってほしい思いはあるが、我々も転移者、転生者憎しで行動している人たちが一定数いるのでしたり顔で諭す資格もない。
「それでも、そう言う感情で動くのはあまりお勧めしないっスね~」
「どうしてですか?」
「だって、憎しみや妬みで動くと言うことは復讐じゃないっスか。俺達が持っていても次から次に転移者や転生者が出てくるから問題ないっスけど、向こうの場合復讐対象が一人きりなのでそれを成し遂げてしまえば、もう当てる相手がいないので虚無感すごいっスよ」
「まぁ、復讐とかなんて結局は当人の自己満足なんだから我々が気にしていても仕方ないがな」
一旦ブリーフィングはここまでにして情報収集とかの組み分けをしたいところだが、今回事例の状況に興味が出たのかアイビーは記録課へ行きたいと言った。
こうやって積極的に発言してくれると、私としてはとても助かる。消極的過ぎると何を聞いても任せます、私はどちらでもいいですって答えてきて物凄くやりずらい。こうしてハキハキ発言してくれると私としても好印象だ。
「では、記録課にはアイビーともう二人、そうだな…ナギとユッカ行ってくれるか?」
「わかりました」「了解っス」
二人の返事を聞いた後に他の二人にも割り振る。
「残った二人は私と創造課へ行くぞ」
「は~い」「了解しました」
返事を聞いた後に頷いて
「では、一時解散」
その声で各自各々の仕事に向かう。




