突破して突破して
「てっきり戦闘しながら突っ込むことになると思ったのですが~結構平和なんですね~」
最初に私達が遭遇した部隊を放置して屋敷に向けて移動をしていますが、他の見回りをしているかもしれない兵隊たちに遭遇することがなく移動できています。
「向こうにしたら私達が攻めてくるので、わざわざ索敵に人員をまわすより、屋敷の警備に人員を割いた方がいいですから多分見周りをしている部隊は少ないと思いますよ」
それと、アイビーさんから聞いた話だとお金持ちの屋敷なだけあって敷地が広いらしいので、ここで戦って市民を巻き込むよりは自分の敷地の中で戦うことで危険を減らそうという目的があるかもしれません。私達もカタギを故意に巻き込みたくはないので願ったりかなったりなので助かりますが、その分屋敷には結構な数の警備がいると考えるのが自然です。
「となると今は唯一楽な時間という訳ですか」
「嫌っスね。労働に対する休憩は仕事が終わった後にするのが一番なのに、仕事をする前に休憩しても意味ないっスよ」
ユッカさんがそう愚痴りますが元々この仕事って転移者、転生者か彼らの味方の人達と戦うまでは本当に何もないので楽なんですが、その代わりに戦闘が辛いんですけどね。
…思えばバレたくないのか罰を受けるが嫌なのか分かりませんが軽い気持ちで罪のない人に変な力くっつけて蘇生して挙句の果てに別の世界に飛ばすとかやってる神たちって、どういう神経してんでしょうか?一回そんな神に出会う機会があったら一発ぶん殴ってやりたいです。お前らの不祥事を代わりに殺しに回って尻ぬぐいをしている私達の気持ちにもなれよ。人を殺すことの罪悪感に押しつぶされて自殺する人だっているんですよ。これが仕事なのでしょうがないですし、私も自分から創造課からここに異動したので不満はないですけど、転移者や転生者を作り出してやがる神に殺意はあります。思えば思うほど神への殺意が高まりますが、いつかぶん殴る事が出来る日を信じてこの殺意は閉まっておきましょう。
そうこうしている内に前方に立派なもんが見えてきました。前に聞いたアイビーさんの話によると立派なフェンスに立派な門がドドンと立っているようと聞きましたが、本当に立派ですね。お金持ちは見栄を重視する傾向があるのでフェンスも門も重厚感のある立派な門になっています。
ただしアイビーさんが言っていた門はぴったりと閉じられてその前に鎧を着こんでいる警備兵が数十人、それぞれ弓に剣に槍と色んな武器を持っています。見るからに厳重そうに警護されていますし地図に書かれていた場所もここなので多分この奥が転移者がいる屋敷で間違いないみたいですね。
そんな彼らを無視して門に近づくと当然のように通せんぼされてしまいます。
「ここから先は領主様の館だ!何の用があってここを通ろうとする!」
兵士の中で一番偉そうな感じの兵士が近づいてきて叫びますが、他の兵士たちは私達の答えを聞く間もなく武器を構えてこちらに向けています。私達の恰好からして盾にこん棒、ガントレットに変な棒(機関銃)と明らかに不審な恰好をしているので攻撃されてもおかしくは無いのに攻撃をしてこないのでが良い人達のようです。だからと言って手を抜いたら殺されるので抜きませんが。
「何のよう…ですか?」
繰り返すようにそうつぶやきながらおもむろにスモークグレネードを取り出してピンを抜きます。そして私達を取り囲もうとする兵士たちを見回した後にこういいます。
「簡単ですよ。ここにいる人を殺しにきました」
それを聞いた偉い人が何かを言おうと口を開きますが言葉を発する前にスタンロッドのスイッチを入れて偉そうな人の鎧に押し付けて電流を流す。
コンロに火をつける時みたいな音を鳴らしながら電流が鎧を駆け巡って中の男を痺れさせています。
このスタンロッドは私達が仕事をする時に相手になる人たちは大体鎧を着こんでいる兵士か何も着ない一般人が大体なのですが、普通の威力じゃ鎧の上から流しても効くわけがないので、創造課に頼んで電流の威力を切り替えられるような仕様にしてもらっています。
偉そうな兵士はうめき声を上げながら地面に倒れ伏して、時々痙攣で足がビクンと動きますが、自分の意志で動くことは出来ないみたいです。
「隊長!」
そうどよめく兵隊の声が聞こえたのでやっぱり偉い人だったんだと思い、次の工程に進みます。
「さて、皆さん殺しはしませんので安心してください。少し痺れてもらうだけなので…それでは皆さん良い夢を」
そう言って手に持っているグレネードを投げ捨てる。少しするとグレネードから煙が出て視界を塞いで
いき、突然視界を塞がれた兵士たちは動揺を隠せずに悲鳴に近い声を上げてその場から離れようとしているが、彼らの上司は行動不能、視界不良でうまく動けずにいる。
対してこちらは前もってこう動くことは確認済みなので動揺はなく、何より兵隊が声を上げているので声から何処にいるのか分かるのでそれぞれ分散して兵隊の無力化を進めていき、数分もかからない内に門の警備をしていた兵隊は無力化しました。
「さて、次は門を開けるところですが…」
偉そうな人の鎧をまさぐって鍵を探します。こういうのは大体偉い人が持っている物なのですが、ありません。
「え?」
もしかして落とした?慌ててあたりを見渡しますが、鍵のような物は見当たりません。もしかして、こういう事態を予想して部下に隠した?もしくは、元々持っていなかった?どちらにしても少し予想外でした。こういうのは偉そうな人が開けるカギを持っているとばかりに思っていましたが、無いのなら仕方ありません。私は門に近づきます。
門は木製ではなく金属製で牢屋の行使みたいな感じに作られているのでよじ登ることは出来るのですが、門の向こう側からこちらに向かって来ている一団が見えます。セラさん以外は来る前に向こう側にたどり着きますが、セラさんは思い機関銃を二丁持っているので間に合うのかが微妙な所です。
「ちょっと失礼します~」
そうやって私が悩んでいるとセラさんが扉に近づいて鍵が付いている部分に銃口を押し付けて引き金を引きました。耳を塞ぎたくなるような銃声が響いたのちに鍵が壊れた門がゆっくりと開いていきました。
「これで行けますよね~」
そう言ってセラさんが私に微笑みます。
「そ、そうですね」
見れば奥にいる一団も銃声が聞こえてビビっているようですし、こうすれば良かったんですね。
気を取り直して門を開いて奥に進みます。




