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異世界転移・転生対策課  作者: 紫烏賊
case6 幸せな未来を壊せ
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向こうの話 夜、ベランダにて

「ごめんね。僕のせいで大変なことになってしまって」


 自分に割り当てられた寝室のベランダに立って隣にいるフレアに謝罪する。


 殺害予告を受けて結婚式やら披露宴やらが軒並み延期と言う流れになってしまった。お見合いからの結婚、更にお互いに商人の会長と領主の娘という、はたから見れば政略結婚にも見えてしまうかもしれないが、俺達はいたって真面目に立場を考えずに相手を見て結婚すると決めたのだからそう言われるのは気にしていない。


 寧ろそう思っている奴らを利用して盛大に祝う結婚式にしようと画策していた。場所も料理もお互いの財力で良いところを抑えた。招待状も共通の知人や親しい取引先など関わりのある人たちは片っ端から誘っていただけに、今回の延期でキャンセルとかで少なくない損害をお互い被ってしまった。


 フレアさんはお父さんは余計な出費とそれ以上に愛娘の晴れ舞台を汚されたと怒って町の兵隊の配置やらの準備を進めていた。フレアも表面上では平気そうに見えたが、心の中で

フレアたちがどう思っているかは分からないが、少なくとも今回の事は僕のせいで起きてしまったのは確かだ。しかも、お互いにとって大切な日が目前に迫っている時に起きてしまった。俺も延期になってしまって残念に思っているが、それ以上にフレアも結婚式の日を楽しみしていたし準備の相談にも積極的に参加していただけに延期となってしまって俺以上にガッカリしていると思う。


「気にしないでください」


 フレアは首を横に振って力なく笑いかける。その姿が余計に僕の心を痛める。そんな顔して欲しくて言ったわけでは無いのに、逆に攻めてくれた方が楽なのに。


「でも…」


 気にしないでと言われて素直に従うほど僕の頭はおめでたくない。むしろそんな顔をされてしまったら余計に気にしてしまう。


「本当は少しホッとしているところもあるんです」


「どうして?…もしかして、僕との結婚が嫌だったりして!」


「違います。怒りますよ」


 そう言ってフレアの顔がムッとして怒った。可愛い…じゃなくて


「ごめん」


 そう言って頭を下げる。冗談のつもりで言ったが、確かに配慮に欠けた発言だった冗談でも言ってはいけない類の発言だ。


「私がホッと思ったのはまだ誘っていない人がいたからです」


「まだ誘っていない人?」


 誘っていない人なんていたっけな?確か招待客は僕とフレアさんのお父さんとフローラさん達の数十人がかりで誘ったけど、特に漏れた人とかはいないような気がするけど?


「アイビーさんです。アイビーさんはいろんな所に行っているので次いつ会えるか分からない方でした。私もフローラ達に頼んで無理しない範囲で行方を追っていたのですが、全く行方がつかめなかったので、半分諦めていたんです。それで、あの時おばちゃんからアイビーさんがいると聞いたときは思わず飛び出してしまいました」


 今思うと反省点です。フレアはそう言って少ししょんぼりする。可愛い。確かにアイビーさんみたいに住所不定の人とかは連絡が付きにくいし、現在位置が分からないからこちらから連絡を取ることも出来ない。一番連絡を取りにくい相手だと言っていいだろう。


「本当は帰り際に誘おうとしていたのですが、あんなことがあったので誘えなかったのか少しガッカリしていたんです。なので、今回の延期が決まって残念に思う中で、少しホッとしてしまったのです」


「そうだったんだ」


「勿論他の皆さんも大事なお友達です。でも、アイビーさんは私が初めて貴族や王族以外で出来た友達なんです。私が領主の娘だと知っても話し方こそ変わりましたが、こびたりもせず、かといって避けたりもせずに最初に会った時と変わらずに接してくれているのが、この上なく嬉しいんです」


 フレアがそのことを思い出しながら嬉しそうに話しているのを見て、僕も嬉しくなる。知り合ってから、そんなに会っていないと聞いているがフレアが本当にうれしそうな顔をしているのを見ると本当に彼女の事を気に入っていると分かる。


「でも、そんなに大事なら予定日をずらしても良かったのに…」


「あくまで出来るなら…です。他にも招待した方々が沢山います。たった一人の友人のために延期する程、私は優しくありません。…少し悲しくなりますが、それだけです」


 フレアは首を振ってから続ける。


「私は領主の娘です。いくら大事な友達と言っても優先順位と言うのがあります。貴族との会食と友達…アイビーさんとの約束、どちらを優先させると言えば当然貴族との会食です。もちろん無断で行くのではなくてフローラとかを説明に向かわせたりして補填として次の約束を取り付けます。ですが、逆になることはあり得ません。言い方が悪く聞こえるかもしれませんが、アイビーさんは友達ですが所詮平民、そこの所をちゃんと分けて考えなくてはならないのです。私が我が儘や反抗するのは、ちゃんと会食とかが無い日だけです」


 僕もフレアも一応貴族としての立場がある。特にフレアは幼いころから貴族としての教育をされているから、公私はキチンと区別している。その分反抗の仕方がアグレッシブになっているのはどうなのだろうと思うが、それでアイビーさんに出会えたと思うと露骨に否定することも出来ない。


「…ですのであの日アイビーさんに会えたのは本当に嬉しかったんです。半ばあきらめていただけに本当に嬉しかったんです。それだけに誘えなかったのが余計に悲しくて…。でも、殺害予告で延期になった時に不謹慎ながら少し嬉しくなってしまって『誘う機会がまた増えた』と思ってしまって、駄目な事だと分かっていても嬉しかったんです。アイビーさんにも祝ってもらえる。そう思うとどうしようもなく嬉しかったんです」


 その時、僕は何となくわかった。フレアはフレアとして見てくれる女友達が欲しかったのだと。婚約者の僕でも貴族の友達でもなく、フレアを領主の娘とか関係なく友達として接してくれる人が欲しくて、そしてそれがアイビーさんという訳なんだと思う。


「なら、今度はちゃんと誘わないとね」


「はい、今度は会って、すぐに誘うことにします」


 そう言うフレアの目はとても楽しみにしているように見えた。殺害予告の事など忘れているようにも見える。多分頭の中で色んなことを想像しているのだろう。聞いたところによると一緒にいた日数はそんなに多くは無いそうだから、その分話したいことも多いのだろう。この前、一緒に食事をすることになった時も俺も巻き込んでずっと話していたから、本当に嬉しかったみたいだ。


 僕もフレアの友人としての彼女といい関係でいたいし、これからも仲良くしていきたい。その為にも今回の件を無事に乗り切らないといけないな。

フレアのにやけ顔を見ながら僕はそう決意する。

来るなら来てみろ、俺はフレアたちに危害を加える存在は許さない。じっくりと痛みを教えて後悔と懺悔をさせやる。


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