アイビーの休暇 1日目終了
浮遊感が止まり目を開けると石造りの壁がありました。
周りを見ると薄暗い道が続いていて、遠くに人の声が聞こえるのでどうやら裏路地に転移したようです。
町中に転移とか目立ってしまいますからね。
空を見ると屋根の間に茜色に染まっている空が見えるのでどうやら夕暮れ時のようです。
とりあえず大通りに出ましょう、ここにいてはトラブルに巻き込んでくださいと言っているみたいなものですから。
さてと、声がする方は向こうの方なので、向こうに大通りがあるみたいなので行くとしましょう。
まだ見ぬ温泉にワクワクしながら私は歩き出しました。
裏路地を抜けた途端に急に明るくなり、私は眼を細め光に慣れてからゆっくりと眼を開けました。
目の前にはたくさん人々が道を行き、上には魔法なのか蝋燭のないランプが光って人々の頭上を照らしている。
道の両脇には店が並び、いい匂いのする店もあれば、目を引くような綺麗な髪飾りが売られている店があります。
いろんな店があって、どれも気になるところがありますが、とりあえずお腹が空いたので腹ごしらえと行きましょう。
そう思い私は町を歩きながら美味しそうな店を探し始めた私の前を、見覚えのある人が通り過ぎました。
「カルセさん!」
私は思わず名前を呼んでしまいました。
「おや?アイビーさんじゃないですか、偶然ですね」
カルセさんは振り返りびっくりした顔をしました。
「カルセさんがいるということは、この世界で温泉旅行中なのですか?」
確かヘリオ室長達と温泉旅行中だったはずです。
「ええ、そうですよ、アイビーさんも無事初仕事を終えて、休暇中ということですか?」
「そうなんですよ、初めての休暇なのでのんびりと行こうかと思っていまして特に予定なく来たんですよ」
予定を立てる暇がなかったとも言えますが・・・
「そうですか・・よろしければ一緒に食事でもですか?このあたりはリサーチ済みなので美味しい店を知っているんですよ」
「え?いいんですか?確か他の方もいるんですよね」
流石に他の人と予定があるのにこちらに付き合ってもらうわけにはいきませんから。
「今室長達は、サウナに出たり入ったりを繰り返しているので大丈夫ですよ、それより一人で暇だったので付き合ってくれると助かります」
「そうなのですか・・・いいですよ食べに行きましょう」
少し考えたあとカルセさんについていくことにしました。
よく考えたら私はこの世界の特産品や名物を知らないので、リサーチしているカルセさんに聞いて今後の予定を立てましょう。
あと普通に美味しい食べ物を食べたいですし
「では私に付いて来てください、案内します」
そう言ってカルセさんは進んでいきました。
私はカルセさんに感謝しつつ、ついていきました。
案内された店は洋風のお店でした。
観葉植物が所々に配置されており、上にはファンが回っています。
落ち着いた雰囲気があり、
明る過ぎないランプが雰囲気作りに一役買っている。
壁には何か高そうな絵が飾ってあって、雰囲気も相まって高そうな店に見えます。
いえ、実際メニューを見る限りそこそこな値段のする店なのですが。
その中の端の席に私達は座って、私はパスタをカルセさんはボルネーゼを注文しました。
「いやぁ、アイビーさんに会えてよかったです。
女性が私だけなので温泉とかに入るときはどうしても別行動なってしまいまして、しかも室長達は結構長湯なので待つことが多いんですよ。」
「私もカルセさんに会えてよかったです。
隊長に渡された本のランキングの1位になっていたので来たのですが、温泉以外何も考えてなかったので助かりました」
「次からはリサーチと予定をきちんとたてた方がいいですよ。
ただでさえ私達の行くことのできる世界は多くて広いのですから。」
「はい、次からはそうします」
そんな風に談笑していると料理が運ばれてきました。
出された料理はとても美味しく、カルセさんのリサーチがしっかりしていることを証明していました。
出された料理に舌鼓を打ちつつ談笑していると、結構な時間が経っていました。
「おや、もうこんな時間ですか、私はそろそろ戻ることにするよ
私達は『ホテル下弦の月』に泊っているんだが、アイビーはどこに泊まっているのですか?」
その言葉に私は、とある事に気が付きました
「・・・泊まる場所?」
「はい」
「・・・・」
「アイビーさん?」
「・・・ないです」
「え?」
「泊まる場所決めてなかったです・・・」
私は頭を抱えて机の上に突っ伏しました。
忘れていた
初めての休暇に浮かれていて泊まる場所について考えてなかった・・・
・・・あああああああぁぁぁぁ
どうして考えていなかったんですかぁぁぁぁ私ぃぃぃぃ
「・・・あの、私の部屋に泊まりませんか?」
頭を抱えて机に突っ伏している私にカルセさんがそう話しかけました。
「・・・え?いいんですか」
私は顔を上げて聞きました。
「ええ、男性と女性の部屋は別でして、一人なので一緒にいてくれると助かります。
ついでに温泉一緒に入りませんか?」
そう言ったカルセさんの後ろに後光がさして、輝いてみえます。
「・・・カルセさん」
「はい、何ですか?」
「カルセさんは神様ですか?」
「神様は別にいますよ」
とりあえず今晩の泊まるところを見つけることができて
カルセさんに感謝しながら私は温泉に入って、1日目の夜を一緒に過ごしました。
カルセさん、本当にありがとうございます。




