表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界転移・転生対策課  作者: 紫烏賊
case6 幸せな未来を壊せ
154/199

挨拶

 フレアさんに引かれて廊下の奥を歩いています。前に来た時はここまで来たことは無かったのですが、奥は個室になっているみたいで木製の扉が一定間隔で並んでいます。お店の奥はこんな風になっていたんですね。


「ここです」


 フレアさんがその中の扉の内の一つを指差したので、そのままの流れで扉に手をかけて扉を開けようとした時に、ふと自分の服装を見ます。


 前にこの世界で買い物した時に買った服と部屋から出る時にセラさんから『いいのがあるわ~』と渡されたアクセサリーを付けた、それなりにおしゃれをしている恰好です。次にフレアさんを見ます。全体から漂う高級感、装飾品としてそれとなく散りばめられている宝石、生地から靴まで私との服装とは全く違います。フレアさんがこういう服を着ているということは、フレアさんのお父さんやフレアさんの結婚相手の場合はもっと高級感が前面に押し出されているすごい服を着ていると思います。それに状況から察するに今行っている事は結婚前のご両親とのご挨拶ということではないのかと今更ながら気が付きます。お金持ちがご挨拶に行くのに並の恰好ではいかないでしょうから、絶対お高くて貴重な服を着ているんだと思うんですよ。何故こんな一般食堂に来ているのかと言う疑問はありますが、それよりも今更ながら場違い感に気が付いてしり込みしてしまいます。


 私本当にここに来て良かったのでしょうか?今から急用を思い出したと言った方が良いのではないでしょうか?というか私、フレアさんの婚約者さんと面識ありませんから『誰この人?』とか思われますよね。やっぱり帰った方が…


「どうかしましたか?」


 フレアさんが急に動かなくなった私を心配して声をかけてくれます。駄目です。私にこの空気で断って出て行くほどの度胸はありません。


「い、いえ、何でもありません」


 ええい、もうなるようになってしまえ!


 でもちょっと怖いから目を瞑って、その後に扉を勢いよく開けます。開けた後にメイドさんに任せるという手があったことに気が付きますがもう遅いです。


 扉が開いて見える部屋の中には二人の男性が座っていました。一方はフレアさんのお父さんなのでもう一方、何かやたら裾の長いロングコートを着ている人がフレアさんの婚約者さんですかね?二人ともお酒を飲んでいたのか顔が赤いです。


「おや、久しぶりだね、アイビーさん」

 扉を開けたことでフレアさんのお父さんがこちらに気が付いてコップを傾けながら挨拶をしました。


「お義父さんのお知り合いですか?」


 ロングコートの彼は初めて見る方ですね。その人が私の方を見た後にフレアさんのお父さんに聞いています。


「私の、と言うよりもフレアの知り合いだよ」


「イサナさん紹介するわ。私の友達で旅人のアイビーさんよ。それでアイビーさん、彼が私の婚約者のイサナさんよ」


 フレアさんが間に入ってフレアさんの婚約者さんを教えてくれました。


「フレアさんのお父さんはお久しぶりです。そして、フレアさんの婚約者さんは初めましてアイビーです。フレアさんとはちょっとしたトラブルで一緒に行動しまして、そのご縁で友人になりました」


ペコリとお辞儀をしてフレアさんのお父さんに挨拶をした後に、フレアさんの婚約さんに挨拶をします。


「ああ、貴方が例の…初めまして僕はヨモツ商会の社長をやってる、アマノ=イサナと言います。アイビーさんの事はフレアさんから聞いています。なんでもすごく綺麗でカッコいい方だとか」


 そう言われて少し照れてしまいます。私よりもセラさんとかナギさんの方が綺麗ですし、そもそも周りにいる男性は外見についてとやかく言うと女性は面倒くさくなると言ってあまり言わないので外見を褒められるのは新鮮です。


 それにしてもヨモツ商会ですか、少し覚えがあります。確か私がお土産を探すのに寄ったお店の果物がヨモツ印の果物だったはずです。あれは美味しかったですね。隊長達も気に入っていました。


 …それはそれとしてイサナさん…ですか


 何となく頭に引っ掛かりのような物を感じます。何でしょうかこの違和感は?名前に憶えはありません、見た目に覚えもありません。ですが、何となく頭に何かが引っ掛かります。

何が引っ掛かっているのか心当たりも全くありません。なんなんでしょうか?


「ええ、アマノは名字でしてイサナが名前です」


 そう言ってイサナさんが少し意外そうな顔をしています。


「なにか変な事言っちゃいましたか?」


「いえ、皆さん僕が自己紹介すると最初名字で呼ぶ方が多いので、最初から名前で呼ばれたのが以外でして少し驚いてしまっただけです」


そう言って苦笑するイサナさんの顔を見て、またも違和感を感じます。何でしょうほんとに名前の件を聞いた時もあまりスッキリしませんでした。


「そうなんですね…とにかくよろしくお願いします」


「はい、これからよろしくお願いします」


 そう言ってお互いに握手をしました。


「挨拶は終わりましたか?」


 そう言ってナギさんがフラフラと歩いてきて私の隣に並んで胸に手を当てて自己紹介を始めました。


「初めまして私はアイビーさんの友人のナギと言います。今日はとても美味しい料理が出るお店があると聞いて楽しみにしてました。更に今日はこのような方々とご一緒に食事出来て光栄です」


 そう言ってナギさんは優雅に一礼をしました。すごい、私はこういうのに慣れていないので緊張しっぱなしで足が小刻みに震えています。でもナギさんはそんな様子は見えなくて、一切緊張せずに笑顔で応対しています。


「これは丁寧にありがとうございます。私はこの度フレアさんと結婚させていただくことになったイサナと言います。以後お見知りおきを」


 イサナさんはそう言ってナギさんと握手をします。


「さて、そろそろ次の料理が来る頃だ。アイビーさん達も座って料理を食べるとしよう」


 そう言われたので適当な場所に座って料理を待ちます。


 席としては所謂お誕生日席にフレアさんのお父さんが座っています。私が席の反対側に座ると隣にナギさんが座り、反対側にフレアさんとイサナさんが座りました。

全員が席に座った後に扉が再び開いて食堂のおばちゃんが料理を運んできました。

運ばれてきた料理を小皿に取りながらフレアさんに話しを振ります。ずっと黙っていると気まずいので!


「そう言えば、お二人ってどうやって知り合ったんですか?」


「いわゆるお見合いです。そこから何度か出かけたりして親睦を深めてそれから…」


 そこまで言って頬を赤らめながらフレアさんは俯いてしまったので代わりにイサナさんが照れくさそう頭を掻きながら答えてくれました。


「僕がプロポーズをしたんですよ」


 そう言って二人は顔を見合わせた後に顔をさらに赤くしながらそらしました。

いい青春してますね。羨ましい気がしなくもないです。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ