少ない休日
あれから数日が経ち、私もバロックさんにコーヒーの煎れ方を教えてもらったり、書類整理を手伝ったりしました。偶にユッカさんが発狂しだしたり、ナギさんが床で寝始めたり、他の部隊の隊長さんが部屋に逃げて来たりして大変でしたが、どうにかここまで来ました。
私もユッカさんを抑え込んだり、逃げた他の部隊の隊長を追いかけたりしました。とても…大変でした。特に逃げた隊長は私の隊長と一緒に戦った方らしく、とても手ごわい方でした。最終的にはテーザーガンに手錠と足枷を付けて元の部隊に引き渡しました。
そんなこともありましたが残っている仕事もこれで最後、隊長が残っている最後の資料に今サインをして仕事が終わりました。
「終わったぞぉぉぉぉぉぉ!!」
腕を上にあげて伸びをしながら隊長が嬉しそうに叫んでいます。ここの所一度しか寝ていませんでしたからね。私も感無量です。目から涙が零れます
「やったっスよぉぉぉぉぉ!!じゃ!」
ユッカさんも隊長と同じように伸びをした後に机に突っ伏して寝息を立て始めました。隊長が寝ていないのでユッカさんも眠らずに作業していました。お疲れ様ですゆっくり休んでください。
「お疲れ様でした」
ナギさんが奥の部屋から出てきてホットミルクを隊長の前に置きました。ナギさんの方は一足先にひと段落したので、まだ終わっていない隊長を全員で手伝っていました。
「さて、1日寝て残りの休日を楽しむぞぉ!」
そう言って立ち上がった隊長の顔には心底楽しそうな顔をしています。そこにナギさんが非常な現実を隊長に教えます。
「…ありません」
「…は?」
隊長の表情が固まり油が切れた機械のような動きをしてナギさんの方を向きました。その目は光失っています。
「明後日から…仕事が始まります。この後隊長が1日寝たら休日が無くなりますよ」
今まで隊長が仕事をしていたのは休日中の出来事で、いわゆる休日出勤扱いです。そして私達も当然、休日出勤扱いです。
「えぇ…転移者が乱入してきたから、延びたりしないのか?」
「伸びた分も含めて消えたんですよ。いつもの休日の量なら終わりませんでしたよ」
「そうか…」
隊長は現実を受け止めると静かに頭を抱えて机に突っ伏しました。その姿はどことなく悲壮感が漂っています。
「あの…」
何か声をかけようと思ったら隊長がガバッと顔を上げました。何かすべてを悟って諦めた顔をしています。
「とにかく眠いから寝てくる。皆も早く寝るんだぞ」
隊長はフラフラと立ち上がってユッカさんの服の襟をつかんで引きずりながら、階段を上がって行きました。ユッカさんが階段にお尻をぶつけるたびにユッカさんのうめく声聞こえます。
「二人とも、大丈夫ですかね」
「どちらにしても一回寝ないと不味いので、眠らずに睡眠薬煎れる予定でした」
ナギさんが懐から白い錠剤がたくさん入っている瓶を取り出して机の上に置きました。瓶にラベルが張られていて『即効性安眠誘導剤』と書かれています。
「そんな物持っていたんですか」
「ええ、あの状態になった隊長を止められるのはユッカさんだけなので、そのユッカさんが力尽きていたのでこれしか方法がありません」
そんなことしないと止まらない隊長の状態って逆に気になってきました。見たい気持ち半分、見たくない気持ち半分ですが、ナギさんが見たくないと言うほどの物だということが、逆に見たくなります。
「さて、私達も寝ることにしましょう。ここの所、隊長達ほどではありませんが寝てた時間が少ないですからね」
確かに私達も隊長が寝ないので交代交代で手伝っていました。隊長ほど寝ていないわけではありませんが、それでもいつも通りの生活よりも寝る時間は少なくなっていました。綿sも少し眠気があるのでベットにダイブしたら気持ちよさそうに眠れる気がします。
「この書類はどうしますか~?」
セラさんが隊長が最後に処理した書類を指差します。そう言えばこの資料も記録課に出さないといけないんですよね。
「そうですね…私とアイビーさんと行きます。いいですね?」
「あ、はい」
有無を言わせない圧力を感じて頷きます。他の人に比べて私は手伝いに参加したのが数日後なので結構余裕があるので拒否はしません。
「バロックさんとセラさんはコップを洗っておいてください」
「わかりました」「は~い」
セラさんとバロックさんの二人は全員分のコップを持って奥の部屋に入って行きました。
「では行きましょう。アイビーさんはそっちの台車をお願いします」
もう一方の台車を押してナギさんが部屋を出て行ったので後を追うように部屋を出ます。
「そう言えばゴタゴタがあって聞いていませんでしたが、転移者騒動の前に話していた一緒に食事をする話はどうしますか?」
そう言えば転移者騒動で誘った私も完全に忘れていましたが、確かにナギさんを誘っていました。
「私はそんなに疲れていませんので、ナギさんが行かないなら一人で行こうと思っています」
「そうですか、なら私も行くとしましょう」
「大丈夫ですか?ナギさん結構忙しかったので疲れていませんか?私が言うのもなんですが、無理しなくても…」
「いえだからこそです。仕事終わりの状態からそのまま食事をとると生きているって感じがするんですよ」
そう言ってナギさんがコップを傾ける仕草をします。
…あそこにお酒ってありましたかね?前回行ったときは食べ物だけ食べて帰ったので、お酒があの店にあるかどうかは確認できていないです。
「どう…ですかね?あそこにお酒があるかはわからないですね」
「いえ、何もお酒に限ってはいません。食べ物、飲み物その時を一緒に食べてくれる仲間、友人がいれば今までの疲れ何て簡単に忘れることが出来ます。ですので、私は参加しますよ、食べたいので」
台車を押す速度をナギさんが足を速めました。私も仕事終わりに飲むジュースは格別なのは分かります。特にポテチとオレンジジュースの組み合わせは最高です。あと、チョコパイと牛乳の組み合わせも至高だと思っています。
「…わかりました。じゃあ、急ぎましょう。明日早く起きて、急いで行って、向こうでゆっくり食べて帰りましょう」
ナギさんに追い付くために歩く速度を上げます。
「ええ、急いで帰って寝ましょう」




