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異世界転移・転生対策課  作者: 紫烏賊
case5 異物混入
146/199

突っ込め

「入ったスよ!」


 扉を蹴破った勢いでバイクがウィリー状態になりながら創造課の中を疾走する。最初来た時には人がたくさんいたエントランスも今は誰もいないようで誰もいないエントランスを直進する。多分、ここで待機していた人員は向こうや他に割かれて、転移課も転移装置を運ぶのに人を割いていたり、徹夜明けで寝ている人が大半だろう。


「よし、そのまま通路を直進してゴミ箱に誘導する!」


「了解っス!」


 スロットルをふかしながらバイクの前輪を下げるとあることに気が付く。扉を蹴破る前よりもバイクの揺れが大きくなっている気がする。先ほどまであまりほとんどと言っていいほど振動が無かったのに、今は少しだが上下に一定間隔で揺れている。


「なぁユッカ、なんか前よりも何か揺れないか?」


「あー、多分ドアに激突した時に前輪のフレームが歪んだんじゃないっスかね?」


「それは…大丈夫なのか?」


「分からないっスけど、今降りるのは無理っスよ」


 そう言ってユッカが後ろを指差したので見ると転移者のバイクが、ドアの枠を魔法で吹き飛ばしながら煙の中から出てきて、少ししてから今度はナワニのバイクが創造課の中に入ってきた。確かに今降りたら絶対にひき殺されるか魔法に吹き飛ばされて殺されるな。それよりも気になったのが、あの転移者が壊したドア枠も私の責任になるのか…魔法で吹き飛ばしながら入ってきたから跡形もなくなっている。


 ここは文句の代わりに殺せないだろうけど銃でも撃っておこう。

 …やっぱり、当たらないな。


 ナワニのバイクが位置的に転移者に近いので当たらないように注意しているが少し撃ちにくいな。ナワニはハルバードを振り回しながら器用にバイクを操作しているが、それでも転移者に有効打にはつながっていない。むしろ攻撃しながらの安定感で言ったら転移者のバイクの方が車高が低いし、タイヤも太く大きいので、ナワニのバイクの方が体勢がよろけている。距離を離そうにもナワニのバイクの馬力では、転移者のバイクを引き離せないし、バイクの操作に集中する時間もないようだ。しかし、おかげで転移者から魔獣が出るなんてこともない。


 このままでもゴミ箱には行けると思うが万が一の事を考えると、そろそろ離した方が良いかもしれない。


「ユッカこのバイクに武装はないのか?あの室長の事だ、武装の一つや二つありそうなものだが」


「そんなものないっスよ!あったら、とっくの昔に攻撃してるっス」


「…そうか」


 そうこう言っている内にナワニの一撃がバイクに直撃する。なるほど転移者に当たらないから乗っているバイクを攻撃したのか。しかし、やられたら同じことをやり返すのが戦い転移者の加減を知らない攻撃がナワニのバイクを直撃して黒い煙と爆発を起こしながらナワニのバイクが失速していく


「ナワニ!」


「ワイの事は気にせんでええから行や!」


 そう言って持っていたハルバードを振り回して、転移者のバイクの前輪についていたブラスター砲の一門を吹き飛ばしたのを最後に車体がスピンして一緒に視界からフェードアウトしていく。


「隊長見えてきたッスよ!撃ってください!」


 ユッカの声で前方を見ると確かにゴミ箱…『ソ』がガラス越しに見える位置まで近づいてきたのを見てから、ガラスに向けて発砲してガラスを割る。


「割れたぞユッカ」


 そう言いながら振り向いて転移者に前を見せないように銃弾をまき散らす。


「じゃあしっかり捕まってくださいッス」


 ユッカがスロットルを捻り、残ったガラスを踏みつけながら『ソ』のあるスペースにバイクと一緒に落ちていく。


 一度大きく跳ねて周囲に部品をまき散らしながらバイクが着地する。


「転移者は!」


 直後に大きな音がして転移者の乗ったバイクが落ちてくる。お互い部屋の端と端に向かい合うように達エンジンを吹かす。


「ユッカ、部品が落ちていたがまだ動くか?」


「大丈夫っス。落ちたのは外装パーツを止めてたネジとかっスからまだ動くっス」


「そうか、なら行くぞ!運転手が死ぬのは不味いから、ユッカは顔を伏せてろ」


 再びバイクを動かし今度は背を向けずに転移者に真正面から突っ込む。それを見て転移者もバイクを動かして向かってくる。お互いに銃口と魔法を撃ちながら回避行動はせずに接近していく。周囲に着弾による爆発が起きてさばけなかった弾が車体に当たり穴をあけていく。


「隊長ぶつかるっスよ!」


「駄目だここで横っ腹を見せるのが一番危険だ。突っ込め」


 ユッカの叫びを却下して銃を撃ち続ける。互いに徐々に距離を縮めて前輪と前輪が接触する直前にハンドルを切りお互いにすれ違う。すれ違いお互いに後ろを見せる瞬間まで撃ち続け、お互い車体と体に数発貰う。流石の転移者も至近距離からの銃弾はよけきれなかったようで魔法発動のために伸ばしていた左手が吹き飛んだ。代わりにダメージ量で言ったら私が乗っているバイクと私自身の方がダメージ量が大きい。ヘルメットのお陰で頭は無事だったが体にいいのを貰った。すごく痛いがそれよりも攻撃だ。


「ユッカ次だ!向こうが、こちらに向く前に向きを変えろ!」


「分かってるっスよ!」


 ユッカが足を地面に付けて軸としながらタイヤをまわして最短で回る。その間に最後のマガジンをミニミにリロードする。


「まだダァァァ!」


 転移者も前輪の車軸を曲げて強引に向きを変える。お互い再び正面に向き合い先ほどと同じようにお互いに接近していく、先ほどと違うのは向こうの攻撃が魔法ではなく前輪にあるブラスト砲からの攻撃に変わっていることだ。私達に当たる心配は減ったが、その分車体へのダメージが溜まる。ライトが爆発し、サイドミラーが吹き飛ぶ前輪がパンクして金属が擦れる嫌な音がする。それでも正面から接近し今度は二門のブラスト砲を打ち抜いてすれ違いざまに前輪の軸を破損させる。


「大回りして転移者の横っ腹にぶつけろ」


「もうここまで来たらやけくそでやってやるっスよ!!」


 すれ違った直後に向きを変えて転移者の後ろを取る。転移者も先ほどと同じように向きを変えようとするが前輪が破損して回らばくなる。その隙に回り込んだバイクが転移者のバイクの横っ腹にぶつかる。


「捕まえた。ユッカ押し込め!!」


「もう出し惜しみも無しっスよ!!」


 ユッカがハンドルにあスイッチを壊れるほどの勢いで押す。すると今まで以上に普通じゃない音が鳴り、排気パイプから炎が出て足の辺りが熱く感じる。着弾したところから黒い煙が立ち上がり場所によっては火が出ている。


 しかしその分パワーが上がった様で転移者のバイクを押し出し始めた。


「ふざけんなァ!」


 転移者は虚空に右手を伸ばして魔法を放つ至近距離から放たれてヘルメットを粉々にしてバイクはもはや前部がむき出しになっている。


「俺はここでゲームオーバーになるわけにはいかないんだよ!」


「いや、お前はここでゲームオーバーだ。今度はコンテニューもない。大人しく死んでくれ!」


 銃口を向けてお返しとばかりに転移者に向かって発砲する。弾切れするまで発射された弾丸は転移者の体をハチの巣にして同時にバイクが『ソ』に激突する。激突の衝撃でバイクが完全にひしゃげて動かなくなる。転移者は『ソ』にぶつかりその場でピタリと止まる。


「離れるぞ!」


断りもなくユッカを抱えて『ソ』に触れる前にその場から離れる。直後にバイクが爆発して私とユッカが部品と一緒に後方に吹き飛ばされる。


「お疲れ様」


「…そうっスね」


 私とユッカは立ち上がり十分すぎるほど仕事をしたバイクにねぎらいの言葉をかける。

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