集合
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「『ヒール』っと…まだ答えないのかよ。」
何度目のヒールでしょうか…。質問されて電撃を受けて回復魔法を受ける。時間としてはそれほど経っていないはずなのにとても長く感じます。けれど、もう少しで他の人達も合流できるはずです。
「…知らないので」
「まだそんなことを言う。いい加減しゃべっちゃいなよ」
転移者はあきれるように何度目かの電撃を浴びせようとした時でした。
シュン!という音と共に何かが転がる音がして、ふと転移者がその方向を見ました。私も見てみると細長い筒のような物…グレネードが転がって来ていました。
「な?!何でここに!?」
完全に予想外だったのか転移者は私から離れて大きく距離を取りました。私も起き上がりたいところですがナイフのせいで動くことが出来ないのでどうしようも出来ません。
ああ、ここで死んじゃうのか…。そう思い半分諦めたように目を閉じました。しかしグレネードはいくら経っても爆発しません。
「?」
ゆっくりと目を開けるとグレネードだと思った物は、少し前にセラさんが使ったコレダーの威力調整のために作ったハズレを差すと電流が流れる樽でした。
「…え?」
なんでこれがここに?
「な、何だよ、黒ひげ危機〇髪のあれよ。ビビらせやがって」
一度離れた転移者が及び腰になりながら戻ってきて恐る恐る樽を指でつつき始めました。先ほどまで私に攻撃していたのと同じ人とは思えないビビリっぷりに思わず笑いそうになりますが、笑ってもいいことが無いので耐えます。
「で?何でこれがあるんだ?」
そう言って転移者が樽の上に顔を向けた時でした。突然頭上から隊長が現れて転移者の頭に目掛けて刀を振り下ろしました。
「うお?!」
転移者は咄嗟に後方に跳んで躱しましたが、追い打ちをかけるようにセラさんとユッカさんが銃口を向けて銃弾を飛ばしながら現れました。どうやって現れたのでしょうか?
「隊長!」
出来るなら体を起こしたいですが腕にナイフと刀が刺さっているので持ち上げられません。
「アイビー、無事d…」
隊長はそこまで言って私の方を見ると大きく目を見開いて、持っていた刀も落として固まってしまいました。何となく顔も青くなっているように見えます。
「隊長!大丈夫っスよ!アイビーちゃん無事っスから!だから戻って!隊長!ほら!敵まだいますよ!」
それを見たユッカさんが焦ったように隊長の肩を掴んで揺さぶり始めました。様子から見てかなり切羽つまってるみたいです。
「隊長大丈夫です!ちょっと攻撃されましたが、見ての通り元気です!」
頑張って足をばたつかせて無事な事をアピールします。実際には電撃と回復を繰り返しているので正直辛いですが、何か隊長が震え始めて涙目になってきています。
「ユッカさんはそのまま隊長を介護してあげてください。セラさんアイビーさんを助けてあげてください。向こうは彼らが何とかしてくれるでしょう」
いつの間にか来ていたナギさんが隊長の代わりに指示を出して動いています。
「あの、ナギさん彼らって、どなたでしょうか」
「決まっています。私達、異世界対策課実行部隊です」
そう言うナギさんの背後から沢山の人が現れました。
「な、何でここに来れているんだよ。チートか!この野郎!」
「ああ、あの道中に配置している機雷の事か?」
妙に話し方に訛りがある男の人が槍と斧が合体したような得物を肩に乗せて話しています。
「あんさんの能力は、あんさんを殺した241部隊から聞いていたからなぁ。通路に見えない魔法の機雷を設置するのは予想できたから、対策しただけよ。それ以上は企業秘密や堪忍してな」
男の人は転移者をおちょくるような口に指を付けてウィンクしています。
「実は転送装置を使って短距離ワープしてきたんですよ~」
「そんな装置があるんですね、ッ!」
ナイフを引き抜かれる痛みが走ります。セラさんが気を使って話題を振りながら腕に刺さっているナイフを抜いてくれます。
「でも、気軽に持ち歩けるほどの大きさでもありませんし~世界間の異動は出来ないので、余り使われてなくて埃をかぶっていたんですよ~」
セラさんがゆっくりと腕を地面に固定していた刀を抜いてやっと両腕が自由になりました。
「ありがとうございます」
自由になった両腕を少し動かしてセラさんに感謝します。流石に銃とかは撃てないので素直に包帯を巻いて止血します。
「いえいえ~それよりも…」
セラさんは自分の後ろにいる隊長の方を見ます。頭が揺れすぎるほどユッカさんに肩を揺さぶられているのに何の反応もしていません。むしろ、悪化しているようにも見えます。目も光失っていませんか?
「あの…隊長、私無事です。ほら」
隊長の前に座って両手を振って無事なのをアピールします。隊長は顔を上げて私の顔を見た後に腕を伸ばして私の顔を触り始めました。
「…そうか、良かった。本当に良かった。まだ首も座ってないような新人を失うのは嫌だからな。本当に良かった」
私の顔を触っていると徐々に隊長の顔色が戻ってきました。ユッカさんも安心した顔をしていますし、もう大丈夫みたいですね。
「さてと、私が来るまでよく耐えたなアイビー。ここからは私達に任せて安静にしてくれ。セラ、アイビーを守ってやってくれ、ユッカ行くぞ」
しばらく私の顔を触っていた隊長は完全に調子を取り戻して立ち上がりました。私も行きたいところですが腕があまり動かせないので大人することにします。
「すみません隊長、頑張ってください」
「ああ、まかせろ。因みにその服はどうした?穴だらけだが」
そう言われて自分の服を見てみると、ほとんど焼け焦げていて所々肌が見えてしまっています。
「えっと…これは転移者に電撃を与えられて回復するのを繰り返していたのでちょっとボロボロになって…隊長?」
そこまで言って隊長を見ると、隊長がまた動きが止まって小刻みに震え始めました。
「…大丈夫だ」
隊長はそう言ってほほ笑んだ後にユッカさんを連れて歩いて行きました。いうまでもなく殺気があふれています。
「あいつは絶対ぶっ殺す」
そんな声がはっきりと聞こえました。




