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異世界転移・転生対策課  作者: 紫烏賊
case5 異物混入
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それぞれ仕事を終えて

「全滅早いなぁ…」


 隠れながら向こうの戦いを見ながらそうつぶやく。


『君はここで待って、向こうが洞窟に向かい始めたら連絡して』と言われたので一人ここに残って向こうの戦いの様子を見ていた。流石に一般人と対策課との戦いは対策課の勝利になるとは思ってはいたが、もう少し頑張ってほしかった。抵抗できたのは最初の方だけで途中から一方的な戦いになってしまっていた。あいつが戻ってくるまでは戦っていてほしかったが全滅してしまっては向こうに行くのも時間の問題だ。


一度連絡しようと思い、連絡用の通信機器を持ち出した時だ。


「ただいまー」


 私の正面の空間が歪んでその中から、彼が戻ってきた。いや、それよりも気になる部分がある。


「どうしたの?その腕」


 戻ってきた彼は右肩から先が無くなっている。血は止まっているので失血死の心配はないだろう。しかし、少し出かけてきたつもりが片腕無くなって戻ってきたら、誰だって多少なりともビックリする。


「ああ、これ?いやぁ、びっくりしたよ。目的の物を手に入れてついでに交渉して一緒に行くことになったんだけど、結局戦うことになってさ。何とか殺せたんだけど、俺も右腕持っていかれちゃったんだよね。でも目的の物は手に入れられたよ」

そう言って片方の腕を上げて横にかざすと、黒い穴のような物が現れてその中に手を突っ込んで一輪の花を取り出す。


「大丈夫なの?」


 片腕が無くなるのは、大変のではないだろうか?


「平気だよ。それにほら、この前のあの子みたいじゃない?」


 そう言って少し自慢げに無くなった腕を見る。

 

 あの子というのは彼が組織に入る前に返り討ちにした対策課部隊の生き残りだ。私達のほとんどは入る前に対策課と会ったり戦闘していたりする。それを退けたり逃げたりして死にたくない人が集まったのが『ユグドラシル』だ。私は彼らに会う間に入ったので特に何の感情も持っていないが、中には、対策課憎しと怨みを募らせて復讐の機会をうかがっている人もいる。


「そうなのね、でも、片腕だけだと何かと不便だから、戻ったらさっさと生やしましょう」


 本部に戻れば医療器材と加護持ちのお陰で、例え四肢を欠損しても死んでない限り元に戻せるようになっている。


「いや、ここはほら、前に見せてもらった義手があるじゃん。いい機会だしあれを付けてもらおっかなって思ってさ」


 彼はにこやかにそして楽しそうに笑いながら言った。


「まぁ、君の隙にすればいいと思うけど、早く帰りましょ。それを早く試したいしね」


「ああ、その通りだね。戻ろうか…」


 彼は花を再び黒い穴に入れて懐からスイッチを取り出して押す。すると次第に彼の体歪み始める。それを見て私もスイッチを取り出して押す。次第に周りの空間が歪み暗転していく。






 何度か寝がえりを撃った後に、目を開けて明かりをつける。天井の明かりがついて眩しくて目を細めて光に慣らしながらベットから降りる。そのままの足取りで冷蔵庫から缶を取り出してプルトップを空けながらベランダに出る。


 あの後、私は隊長の所に戻ることは出来なく、通路でセラさんに背中をさすられながら嘔吐を繰り返していました。そして、収まった後もあそこに戻ることが戻れずにいると、ナギさんから回収が終わったので転移するように言われてしまいました。


 戻った後にすぐ隊長の下に行って謝罪をしましたが、隊長は初めての事だから仕方ないが、ああいう現場に遭遇するのは仕事上少なくないから慣れた方が良いと言ってくれました。


 しかし、その後のプチ打ち上げは食べる気になれなかったので一人部屋に戻って寝ようとベットに入って目を閉じていましたが、あの光景を何度も思い出してしまって寝れずにこうして起きたという訳です。


「…」


 まだ人を殺すことには慣れていませんが、死体を見るのは慣れていたつもりでした。けれど、それは原型が残っている者に限った話でした。バラバラになった転移者を思い出すとまだ気分が悪くなります。そして気分が悪くなるたびにまだまだ一人前には程遠いと感じてしまいます。


 こんな調子ではその内皆さんの足を引っ張ってしまうかもしれないので、何とかしたいのですがいい考えが思い浮かびません。ネズミとか人以外ならあまり不快感は無いのですが、人だと躊躇ってしまうんですよね。そもそも仕事以外で人を殺して許されることが無いので仕事をしていくうちに慣れていくしかないんですかね…。でもそれだといつ慣れるか分からないんですよね。


 自分の不甲斐なさに自分のことながらに呆れて、持っている缶を一口飲みます。爽やかなオレンジ味がスッキリさせてくれますが、頭の中はもやもやしたままです。


すると下の階から、ひと際大きな笑い声が聞こえてきました。そう言えば、皆さんの打ち上げ会がまだやっているんですよね。


 …少しうらやましく感じたので、缶の中身を一気に飲み干して考えながら部屋を出て下に向かいます。下は打ち上げが終わった様で皆さんが後かたずけをしている最中でした。料理もほとんど残っていないようでほとんどのお皿はかたずけられていて何となく解散の雰囲気をしています。


「ん?アイビーどうした?…もしかして、うるさかったか?」


 最初に気が付いた隊長が申し訳なさそうな顔でそう聞いてきました。


「うるさかったとしたら原因はユッカさんですね。明らかに一人で盛り上がっていましたし、隊長に絡み過ぎですよ」


 ナギさんがグラスの中の液体を傾けながらユッカさんに攻めるような口調で言いました。


「そんなにうるさくないっスよ。それよりも余興でやったゲームでバロックが一人負けした時の叫び声の方がうるさかったっスよ」

 

 赤い顔で朗らかに笑いながらコップの中身を揺らしてユッカさんがバロックさんに罪を擦り付けます。うるさくはなかったのですが…


「え?私ですか?確かに皆さんが組んで私を潰しに来た時は発狂しかけましたよ。でも、それを言ったら、ナギさんの勝利を確信した時の声も十分うるさかったですよ」


「あー、そうですね~。隊長のお気に入りの高級お菓子を懸けた決勝戦で、一人勝利を確信した時のナギさんの声は確かにうるさかったですね~」


「それを言うなら隊長がババ抜きで初手に出せるカードが一枚もなかった時の声も中々にうるさかったかと」


 それまで、全く関係ないと高を括っていた隊長は完全に不意をつかれたようで持っていたコップを少しこぼしながら動揺しています。


「そ、それで、何の用なんだ?」


 誤魔化すように隊長さんがこちらを向いて聞いてきます。


「何か飲み物を飲もうかと思いまして、下に行けば何かあるかなと降りたんですよ」


「そうですか。…アイビーさん」


「何ですか?」


「嫌な事を忘れたいのなら、今を楽しむのが一番ですよ」


「え?」


「アイビーさんが戻ってから余り顔色が良くありません。状況からみて原因は明らかです。ここは部屋に戻ってウジウジするよりも食べて飲んで騒ぐのが一番なんですよ」


「そうっスよ。嫌な事や何か忘れたいことがあったら食べて遊んで発散するのが一番賢いやり方っス」


「そう…なんですか?」


「そうですよ~。ストレスや嫌な事を我慢して溜めて溜めて壊れるよりは、こうして騒げば多少なりとも気分が楽になるのでいいですよ~」


「ああ、アイビーはどちらかというなら大人しい性格をしている。そう言うタイプは嫌な事を貯め込んでしまう傾向にある。嫌な事があったなら無理をして溜めずに愚痴を言ったり思いっきり騒ぐのもいいぞ。それを聞くことでお互い信頼関係が作られたり、私も仕事の時の役割分担の配置について配慮できたりするからな。完全にとはいかないが多少は軽減させることが出来る。苦楽を共にする仲間だ、多少は配慮するさ」


「ですので、しっかりと言いたいことは言ってください。私達は同じ部隊の仲間です。アイビーさんの言い分を真っ向から否定はしませんし、アイビーさんに対する要望も言います。そうして一人一人が積極的に言い合うことで良い関係になるんですよ」


 皆さん口々にそういいます。そうですか…そうですね。別にため込まなくてもいいんですよね。皆さんこうして仕事が終わるたびにプチ打ち上げしているのもつらい事、嫌な事を忘れる為にやっているんですね。


「そう…なんですね、では私も言いたいことがあるので言ってもいいですか?」


 今日の嫌な事、最初の仕事の嫌な事、そして、今まで皆さんといられて良かったこと、今まで言っていないことなら沢山あります。


「もちろんです。嫌な事は口に出して誰かに聞いてもらうと気が楽になりますから、言ってしまうのが一番です。ですが、その前に、話が長くなりそうなので飲み物を用意しましょう。なにせ、アイビーさんにとって初めての愚痴会ですから」


 ナギさんはニコリと笑って私の手を取って奥の部屋に向かいます。


「食後のおやつと追加のブランデーも持ってくるっス。部屋にいい奴があるっスから」


「私も付いて行こう。確かこの前狩って作って置いた干し肉があったはずだ。燻製にしてあるから酒のつまみにもってこいだ」


 ユッカさんと隊長の二人は席を立って上に上がって行きます。


「では、私は奥で何か追加の料理を作ってきますね~」


「なら、私は一度机の上の物を片付けますね」


 セラさんは私とナギさんと一緒に奥の部屋に、バロックさんはお皿を集めて机の上を一度片付け始めました。


 そこからは騒いで愚痴って遊んで飲んで食べてを繰り返しながら嫌な事なんて忘れてしまえと思いながら、夜を過ごしていきました。こういう夜の過ごし方もいいですね。


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