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異世界転移・転生対策課  作者: 紫烏賊
case4 その幸せを壊してでも
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まだ、助けたい人を助けていないから

右手だけで剣を持って正面の転移者に向けて構える。転移者を警戒しながら後ろの通路を見てみるが、あの魔法使いが来る様子はない。先ほどの様子からして力を使い果たして倒れているのだろう。二種類の魔法の同時展開なんて加護持ちじゃない限りは簡単にできる物ではない、まして長時間の使用は精神をすり減らしてしまうものだ。その中でも最後まで魔法を霧散させずに攻撃し続けたのは素晴らしい。


「セラ」


「大丈夫で~す」


 後ろからカチャリとレバーを引く音がした。一丁無くなったとしても、重機関銃だ。後ろの支援は万全と言える。


「さて、そちらは一人減って独りぼっち、対してこちらは二人だ。降参はしないか?」


 答えは分かっているが一応聞いておく、もしかしたら万が一の確率で諦めてくれるかもしれない。そうしてくれば、私達の仕事も楽になるし、向こうも下手に痛い思いをしなくて済むのだが…

「…分かってんだろ」


 転移者はそう言って腰を低く落として柔道のような構えを取った。 


「そうか、済まないな。変な事を聞いてしまって」


 それ以上の言葉は交わさずお互いに黙って見つめあう。数瞬の後、どこかで何か崩れた音が鳴り響いたのを合図にしてお互いに地面を踏みしめて接近する。そしてお互いの得物が届く距離まで近づいたところで地面を蹴って横に飛び、後ろにいるセラの射線を空けると同時にセラがトリガーを引いておびただしい数の銃弾を相手に浴びせる。一分間に700~1000発もの銃弾が転移者に向かって発射される。例え鎧を着ていたとしても普通の人間なら一分も経たないうちに穴だらけになって絶命するところだが、この転移者は腕をクロスに構えて顔に当たらないようにして防いでいて弾かれた弾が床や天井に当たっている。


 やはりおかしい、この世界に私の刀やセラの機関銃を防げるような鎧を作る技術は存在しないはずだ。先ほどだけなら魔法の掛け合わせで防げたのだと考えれば納得できたが、今は魔法による支援も行われている様子もない。しかし、いくら鎧が頑丈でも勢いは消せないらしく着弾の勢いに押されて少しづつ後ろに下がっている。つまり前回の転生者みたいなものだと思えばいいだけだ。殺し方は窒息、圧死色々ある戦いながら少しづつ見つける事にしよう


「セラ!チェンジだ」


 そう言って転移者に向かって刀を上段に構えて接近する。転移者もセラが撃つのをやめるのと同時にこちらの方を見て腕をクロスしたまま刀を受け止めようとした。私は特に行動を中止せずに転移者の肘を狙って刀を振り下ろす。普通に切ったり撃ったりするのが駄目なら肘や肩などの間接を狙うのはどうだろうか


 刀は鎧と鎧の隙間に何とか入り込んだ。しかし、そこまでだった。キーンと金属音が鳴って刀がそれ以上進まない。予想はしていたがあの勇者みたいに鎧の下にも何か着ているな。面倒くさい


「…面倒な」


短くそう言って刀を離して再び距離を取ろうとするが、転移者は距離を離さないように距離を詰めてくる。今、私から離れてしまうと再びセラの銃撃が飛んで来るのは想像に難くない。だから私との距離を離さないようにしているのだろう。セラの機関銃は一発ずつ撃てるような機能は搭載されていない、あるのは毎分1000発か700発に切り替えることぐらいだ。セラの技量なら指切りも出来るが、それでも3,4発は出てしまう。3,4発でも今の私と転移者の近さで撃つと私にも当たる危険があるから、転移者が距離を空けない限り積極的に撃てない。


 だから、今は私だけで何とかしなくてはいけない。下がるのを止めて前に踏み出して何度か切り結んでみるが、やはり鎧に弾かれて刀が体に入らない。蹴りも試してみたが先ほどとは違って左腕の分のバランスが取れないせいで、余り力が入らない。


横腹に当たった右足を腕で弾いて反撃とばかりに転移者が連続で殴りかかってくる。それを何とか躱しながら時折刃を立てて拳を受け止めてみるがやはり弾かれる。現状殺す方法はあるのにその手順が思いつかない…


あまりしたくないが、あれをしてみるか…


 そう思いラッシュの途中に刀を思いっきり振り上げる。転移者が刀に意識がつられているのを確認してその勢いを殺すことなく後ろに放り投げる。刀を投げるのは予想外だったのだろう転移者が一瞬呆気にとられる。その隙を逃さずに腰のポーチからグレネードを取り出してピンを噛んで引き抜いて放り投げると同時に全力でバックする。


 この世界の人間ならこれで何とかなるが転移者だとグレネードが何なのか知っているから対処されてしまう。


「セラ!」


 しかし、グレネードに注意をそらしてしまえば幾分かの隙が生まれる。その間をセラは狙って対応してくれる。その間に投げた刀を拾いなおして腰を低くして刃を上にして構える。そして目を瞑り意識を集中させる。次第にうっすらと刀身が白く光っていく


 この刀は修理をするたびに何か色々な物をいろんな方法で混ぜ合わせた結果できたゲテモノ刀だ。そしてゲテモノにゲテモノを混ぜ合わさった結果いつのまにか出せるようになった物がある。

光は次第に強くなっていき蛍光灯程度の明るさになってくる。


「アルカシウム・ライトレイ」


 そう言って目を開いて思いっきり刀を突きだす。すると刀から光線のような物が転移者目掛けて飛んでいく。一直線に放たれた光を見た転移者は防御しようと体を向けて右手を差し出そうとしたが、高専は転移者の右腕ごと貫通してそのまま右肩を貫いて行った。


「追撃だ!」


 セラにそう言って、私も刀を放り投げてライフルを構える。よろめいた転移者の頭部目掛けて照準を合わせて引き金を引く。耳を塞ぎたくなるほどの轟音と共に転移者の周りが着弾の煙で見えなくなっていく。マガジン分の弾を撃ち尽くしたのでグレネードに切り替えて撃ち続ける。

そうして撃ち続ける事数分持っている分の残弾を全て撃ち尽くした。


「隊長~」


 セラがこちらに向かって駆けてくる。


「終わりましたかね~?」


「どうだろうな」


 転移者の場所はグレネードによる爆発で煙が晴れるまで分からない。ただ、もうすでにライフルの残弾もない。これで死んでほしいが…煙の奥に人影が見える。


「隊長…」


「ああ、分かっている」


 煙が晴れた所、グレネードによって穴だらけになっている地点の中心に鎧がボロボロになりながら膝をついている転移者がいた。刀に貫かれて右腕はほとんど吹き飛んで血だらけの肌が見えている。他に破損している箇所は無いが、鎧のいたるところがへこんでおり、初めからむき出しだった頭部は血が流れて顔を真っ赤に染めていた。


 一見すればもはや生きているのか不思議ではあったが、生きている様だ。私は黙って刀を抜いて転移者の元まで歩き刀を振り上げる。


「終わりだ」


 そのまま刀を振り下ろして転移者の首をはねる。


「…まだァ!」


 しかし、振り下ろされた刀は首を切ることは無く、左腕に防御される。


「まだ、抗うか」


「あたり…まえだ!」


 そう言って転移者が腕を振るって刀を弾き飛ばした。私はその勢いのまま後退してセラの所まで下がる。


「セラ、残弾は?」


「もう撃ち尽くしました~」


「そうか」


 すでに残弾はないが、相手は満身創痍ここは押し切るのが吉


「まだ…俺は!」


 勇者はフラフラと立ち上がって両手を握って力を込めている。何をする気だ?


「助けられていないんだぁ!!」


 そう言って勇者は地面を力いっぱい叩いた。


「?」


 意味が分からない。そう思ったが次の瞬間フロア全体がグラグラと揺れ始め天井から埃が落ちて、床が崩壊し始めた。

私は咄嗟に地面に刀を突き立ててバランスをとる。しかし、セラは機関銃の重みでバランスをとれずに膝をついてしまい、その瞬間に床に大きな穴が開いてセラを飲み込まんと大きな口を開けた。


「セラ!」


 思わず私はセラの方に駆け出して、セラの手を掴んでそのまま下に落ちていく

『アルカシウム・ライトレイ』


シェフレラが愛用する刀『群将』の奥の手…のような物。この刀から出せる唯一の飛び技だが、それなりに溜めが必要で連発できない。刀を振ればその軌道に沿って斬撃が出るが、切れ味が悪いので突きと組み合わせてようやく使い物になる。と上記の通り戦闘中に一人で出すことが出来ない為仲間の協力が必要。とある世界の巨人の光線と同じ名前の鉱石が他の鉱石と混ざった結果出せるようになったが、含有率が低いので十分な威力が出ない。威力不足、撃てるようになるまで時間がかかる、範囲も突きで使うため狭い、これだけの欠点があるのに発動しても頭に当てない限り殺せない、隙を作ることは出来るけど決め技としては完全に力不足、正直別に銃を持った方が良い、以上の事からあまり使われない。

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