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異世界転移・転生対策課  作者: 紫烏賊
case4 その幸せを壊してでも
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帰って始業


 浮遊感が収まって足が地面につく感覚がします。


「アイビーさん、終わりましたよ」


 ナギさんにそう言われたので目を開けます。目の前には少し見慣れた風景が広がっています。無事に転移課に転移したようです。転移するたびに目を瞑ってしまうのですけど完全に癖になっていますね。


「さて転移も終わったので753部隊の部屋に戻りましょうか」


「はい」


 歩き出したナギさんの後に続いて歩きます。休暇の残り六日間は充実していいました。観光したり、ジャックさんの趣味を知ってナギさんがドン引きしたり、観光中に私が余計な事を言ったせいで二店舗の対抗試合が始まったりしました。あれは申し訳ない気持ち半分、色々な新作料理を食べることが出来たので良かったところもあると思います。


 ただ帰る前に銃の分析中に、中の火薬が引火して発生した爆発に他の火薬が引火した結果分析をしていた人の家が木っ端みじんに吹き飛んでしまったようです。幸い私は現場の近くにいなかったので無事でしたが、近くを通ったシアさん曰く遺体がバラバラに吹っ飛んでいたそうで、それを想像してしまって少し気分が悪くなりました。


 最初の頃に比べるとグロいのについては少し慣れはしましたけど、まだ断面とか内臓とか見ると気分が悪くなります。仕事上そういうのには慣れた方がいいと思うのですけど、慣らす機会が無いのでまだ慣れません。…いえそう簡単に慣らす機会があっても困るのですけど、このままではいつまでたっても、皆さんの足を引っ張ってしまいそうで怖いんです。

いつまでも新人扱いされないのは自分でもわかっているので、その前に慣れてしまいたいのですが中々なれません。とりあえず次の仕事でもう少し積極的に行動してみる事にしましょう。

 ナギさんの後を思いながらそう決意します。



 しばらく歩くと753部隊の木製の扉が見えてきました。


「ただいま戻りました!」


 扉を勢いよく開けて入って行きます。部屋に入ると隊長が部屋に一人で椅子に座っていて、何かが書かれている紙を読んでいます。多分今回の仕事についての資料なのでしょう


「おかえり、どうだった休暇は?」


 私達に気が付いた隊長が紙を机に置いて声をかけて来ます


「楽しかったです!ナギさんと一緒に行ったので特に面倒ごとには遭遇しませんでした」


 銃に関しては特に隊長に話さなくても大丈夫だとナギさんに言われました。わざわざ話すような事でもないし、もしあの銃の事が問題になったら、その時に改めて話をすればいいそうです。


「そうか、それはよかった」


 手に持っていた湯飲みを一口飲んでから隊長は言いました。その言葉とは裏腹に少し隊長が少し落ち込んでいるように感じます。


「隊長、行きたかったのね」


 ナギさんがコッソリと耳打ちしてくれました。なるほど、確かに隊長は私達が休暇中の七日間ずっと病室のベットで過ごしていたので、少しうらやましいんですね。でもそれなら


「どうした?」


「いえ、なんでもないです。それよりも隊長、もう傷は大丈夫なんですか?」


 病室で会った隊長は全身包帯でしたが、今の隊長には包帯が巻かれていません。しかも隊長のお肌が何かツルッツルです。


「ああ、心配をかけてすまない。見ての通り、顔とかの火傷は完治している。もう大丈夫だ」


 隊長は袖をまくって自身の腕を見せてくれました。隊長の傷の具合が分からないので比べることは出来ませんが、腕に傷跡のような物は一切見えないので一見すると傷が出来る前と変わりはないように見えます。


「それなら、良かったです」


 少しホッとします。


「それで隊長、他の皆さんは?」


「セラは先ほど戻って部屋で着替えている。バロックは一日ほど前に戻って来ている。ユッカは今後ろの部屋でバロックと一緒に私の代わりに飲み物を汲んでいる。アイビー達もそろそろ仕事が始まるから着替えてきてくれ」


「わかりました」「了解しました」


 私達は階段を上がり自分の部屋に戻って着替えを済ませます。そして部屋から出るとセラさんがちょうど部屋から出てきました。


「おはようございます。セラさん」


「おはよ~休暇何してたの~?」


 セラさんに挨拶して、一緒に下に向かいます。


「ナギさんが行く世界について行って冒険者として動いていました」


「あら、いいわね~。冒険者として何をしたの~」


「探検ですね。セラさんはどうしていました?」


 あまり深く聞かれると銃の事を説明しないといけなくなるので、早々に切り上げてセラさんに聞き返します。


「私?私は~お酒を飲んだり~海で泳いだりしてたわ~」


「海水浴ですか?気持ちよさそうですね」


 私は海の知識としてはあるのですけど、実際に行ったことはないのでいつか行ってみたいですね


「そう?私はアイビーちゃんの方が羨ましいな~誰かと出かけるって何もなくても幸せだからいいわね~」


「じゃあ次の休みに一緒に行きませんか?ナギさんも誘って」


 そう提案します。前からナギさんには誘ってくれたお礼をしたかったので、好都合です。


「いいわね~隊長も誘いましょう。どこの世界に行くかとかは~後で決めましょうね~」


「それについては、一応決めてはいるんですよ」


 お礼と言っても私が休暇で行ったことある世界はナギさんと行ったあの世界を除くと、一つしかないので自然と決まってしまうのですよね。仕事で行った世界でも良いんですけど、言ったことの無い世界だと何があるのか分からないので怖いんですよね。皆さんと見知らぬ場所に行くのは楽しそうなんですけど、お礼目的ならやっぱり私が知っている場所の方が案内できるのでいいと思いました。


「あら、そうなの~じゃあ後で隊長の予定を聞いておくから~終わったらまた話しましょう」


「はい!」


 下に付くと既に下にいたナギさんと隊長、それとお盆に飲み物を載せたユッカさんとお茶請けを配り終えたバロックさんがいます。


「ちょうどいいな、ではこれから今回の仕事についてのブリーフィングを始める」


 隊長が椅子から立ち上がってガラガラとホワイトボードを引っ張ってきて一枚の写真を張り付けました。


「今回の対象は転移者だ。名前は三日月 井塚。アイフ王国に住んでいる現在は牧場で働いている」


「転移者なんですね。ということは…」


「ああ、勿論加護持ちだ。あと元勇者だ」

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