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武装守護霊 武霊ファイト#1『美羽&コウリュウVSアシッドミストドラゴン』

作者: 改樹考果
掲載日:2009/02/14

 この話は私が連載している武装守護霊のバトル中心短編です。

 設定などの説明はこの話ではあまりされてませんので、個人的には本編の武装守護霊をある程度見てから見る事をお勧めします。

 なお、話の時間軸は、主人公・黒樹夜衣斗が物語の舞台・星波町に来るより前、美羽が中学生の時の話ですので、あしからず。

 深夜。

 鳴り続けるサイレンの音に、赤井美羽は起こされた。

 「うぅ〜こんな時間にはぐれぇ〜?」

 寝惚け眼にベットの中をもそもそと動き、寝たまま窓の外を見る美羽。

 しばらくぼーっと星空を見ていると、視界に一匹の巨大な西欧竜が飛び去って行くのが入った。

 (凄い早い!コウリュウと同じ・・・・ううん。剛鬼丸に近いスピード!)

 美羽は慌ててベットから飛び起き、窓を開けて西欧竜が飛び去った方向の空を見る。

 よく見ると、西欧竜が飛び去った後には、まるで飛行機雲の様に白い雲が残っているのが見える。

 (?・・・・なんだろう?)

 疑問符を頭に浮かべていると、充電中の星電が鳴り出した。

 こんな時間に、このタイミングで、星電が鳴るのは間違いなく、自警団からの応援要請しかない。

 (・・・・そう言えば、高速で空を飛べる武霊を持っている武霊使いって、私しかいないんだっけ・・・・亮兄ちゃんは修学旅行中だし、田村さんは新婚旅行中。琴野は風邪で倒れているし・・・・・・・よぉーし!)

 深夜なので心の中で気合いを入れ、美羽は星電に出た。


 仕度を終えた美羽が急いで家を出ると、家の前に具現化させた巨大な白い犬・コロ丸に乗る自警団団長幸野美春が待機していた。

 「こんな遅くにすまない美羽」

 そう謝る美春は、自分より一回り近く年下の美羽に頭を下げた。

 「いえ・・・・急ぎましょう美春さん」

 美羽は言葉少なくコロ丸に近付き、美春の後ろに飛び乗った。

 飛び乗ると同時に、美羽の体にコロ丸の白い体毛が巻き付き、身体を固定させる。

 「美羽。コウリュウを」

 「はい。コウリュウ!」

 その美羽の呼び掛けに答えて、半透明のコウリュウが美羽の背後から現れ、美羽達の頭上に飛び上り、三メートル近い大きさの赤い西欧竜が具現化した。

 美羽は玄関の中で自分の身を案じている両親に向かって、

 「いってきます!」

 夜なので多少声のトーンを落とした声でそう言った。

 両親の心配を少しでも軽くなる様に笑顔で。


 「美羽。今回のはぐれは、ドラゴンの姿をしている」

 美春は、上空を飛んではぐれを追うコウリュウが見える様に、コロ丸を走らせながら、今回発生したはぐれの、僅かばかりの情報を美羽に教え始める。

 「数は一匹。だが、レベル2に達している上に、厄介な能力を備えている」

 「厄介な能力?」

 美羽の問いに、袖をめくって腕を美羽に見せた。

 その腕は僅かにただれている。

 息を飲む美羽の反応に、美春はさっと袖を戻す。

 「何とかレベル3で接近出来たんだが・・・・あのはぐれの全身には、無数の小さい穴が空いて・・・・そこから噴出する強い酸性の霧にやられた」

 美春の武霊は、昔飼っていたペットが基になっている。その為、防御力が低く、スピードで攻撃を避けなければ、簡単にやられてしまう。

 そして、武霊使いが武霊を身に纏って半具現化させる強力なレベル3と言っても、見に纏っている武霊の基本能力は変わらない。

 だからこそ、広範囲攻撃をする相手、特に空を飛び回る相手は、美春とコロ丸にとって天敵と言えた。

 それでも挑んだ美春の思いを、美羽は強く感じ、

 (絶対にあのはぐれを倒さなきゃ)

 そう強い思いを抱かせた。

 「・・・・コウリュウに不要に接近しない様に伝えておきます」


 レベル2と化したコウリュウは、何かを探すように町の上空を旋回しているドラゴンを視界に視界に捉えた。

 はぐれ武装守護霊は、人に寄生していない為に、その存在は現れてから、既に『消える運命』にある。

 その運命を僅かでも先延ばし出来る方法は一つ、武霊を具現化させている意志力を得る事。

 つまり、人間を『喰らう』事。

 もっとも、『理由は不明』だが、基本的にはぐれは、『密閉された物(家とか)の中の人間を認識出来ない』。その為、迅速な対応をすれば、『人的被害は滅多に出ない』。

 だからと言って、はぐれを放置し続けると、『消える直前で』、まるで消える事を拒絶するかの様に、『無差別に攻撃』し始める。

 そうなれば、いくら避難していたとしても、避難した場所ごと、人が殺される可能性が高くなる。

 それをさせない為に、まだ大人しい状態のはぐれを迅速に倒すのが、はぐれ対策の基本とされていた。

 コウリュウはまるで怒りを抑えているかの様に唸り、はぐれの背後から追跡し始める。

 (はぐれの身体から出る白い霧に当たらない様にして)

 そう美羽からの念話を聞いた時、運悪く、はぐれの身体から僅かに出ている白い煙に、コウリュウは僅かに当たってしまう。

 その瞬間、当った箇所の鱗が、僅かだが、瞬時に溶けてしまう。

 これが目や口などの鱗に覆われていない部分に僅かでも当たれば、大ダメージは確実。

 コウリュウは、真後ろに付かない方がいいっと考えたのか、高度を下げ始める。

 その瞬間、はぐれの翼から、大量の白い霧が発生し、急加速し始めた。

 急激な加速に、追うか、降下を続けるかの判断を迷ったのか、一瞬動きが止まり、その一瞬で白い雲と化した霧が一気にコウリュウに接近。

 慌てて避けるコウリュウの背を少しだけ当たり、コウリュウは背が激しく溶ける痛みに、咆哮を上げてしまう。

 その声に、気付いたはぐれは、急速旋回し、咆哮の主・コウリュウを視界に収める。

 はぐれは目を細め、威嚇の声を上げ、

 コウリュウも負けじと威嚇の声を上げた。


 「もう!なにやってるのコウリュウ!せっかくの不意打ちのチャンスが・・・・」

 地上からコウリュウの失態を見た美羽は、思わず声を荒げてしまう。

 「あのはぐれ、翼から霧を圧縮して放出し、高速飛行が出来るのか・・・・なるほど、さっきは分からなかったが、私はあれを至近距離で喰らったわけか」

 冷静に状況を分析し、自分の敗因に気付く美春。


 互いに旋回しながら対峙するコウリュウとはぐれ。

 はぐれが常に発している僅かな白い霧は、少し経てば消えてなくなる様だが、翼から発せられ白い雲と化した白い霧はいつまでも漂っている。

 その霧の雲の場所にうまく誘導されたのか、コウリュウは近付いてしまった霧の雲を避けた瞬間、はぐれは全身から一気に白い霧を放出し、さきほどより巨大な霧の雲を作り出す。そして、そこから出て来ては、少し離れると、また同じ様に霧の雲を作り、それを繰り返し始めた。

 ほどなくして、コウリュウの周囲は霧の雲に囲まれてしまう。

 (コウリュウ。ウィンドブレス)

 その美羽の命令に、コウリュウは胸のブレス袋に空気を溜め、高圧縮の空気を吹き出した。

 複数の霧の雲を吹き飛ばす事が出来るが、それ以上に霧の雲が作られるスピードが早く、また、吹き飛ばした事により、霧の雲が細かく分かれて散り散りになって、よりコウリュウの移動範囲を狭める結果になった。

 さらに、霧の雲が無数にある事により、はぐれを見失い始める。


 瞬く間に出来て行く無数の霧の雲。

 その霧の雲に邪魔されて、美羽達からコウリュウの姿が見えなくなり始めていた。

 徐々に悪くなる展開に、美羽は焦りを感じ始める。

 武霊使いとその武霊は、寄生されている・寄生している関係である為、武霊使いが思うだけで、その考えはその武霊に伝わる。それは例えどんなに離れた距離(忘却現象の影響で星波町の端と端が最長距離だが)・障害物があってもそれは伝わり、また個人差はあるが、武霊側の気持ち(言葉を喋れない為)も武霊使いは感じられる。その為、命令を飛ばすだけなら、見えていなくても、なんら支障ない。

 今回の場合なら、コウリュウにはぐれの攻撃命令を出し、コウリュウの気持ちに応えて、攻撃手段の命令をすれば、何ら支障なくはぐれを倒す事が出来る。だが、そこには一つ問題があった。それは、

 (コウリュウって、従順なんだけど、とっさの判断能力が低いんだよね・・・・)

 っと言う問題。

 武霊は、全てが同じ様な性格・思考パターンをしているわけではなく、人間と同じ様に個体個体で性格・思考パターンが全く違う。

 その為、『指示されて動くと強いが、指示がないと途端に弱くなってしまう様な武霊』も存在すると言うわけだ。

 故に武霊使い側が全く自分の武霊を見れない・敵の様子を見れない今の状況を打破する何かが必要なのだが、地上からではそれは不可能になりつつある。

 つまり、美羽に残された手段は一つ。

 「美春さん。どこか高い場所に」

 その美羽の言葉に、美春は美羽の考えに気付き、厳しい表情になる。

 「大丈夫です。コウリュウには乗っている人を保護する能力がありますから」

 そう言ってほほ笑む美羽に、美春は唇を噛み締めて、黙考すると、掴んでいるコロ丸の体毛を強く握った。

 それと共に、近くでも最も高い建物に向かって方向転換するコロ丸。

 「いい!絶対に死んじゃ駄目だからね!!」

 「美春さん・・・・」

 仕事時の男言葉を止めて、本来の言葉遣いで言う美春に、美羽は美春に強く抱き付いた。


 無数の霧の雲に進路を狭められた上に、その霧の雲を隠れ蓑に次々と攻撃してくるはぐれに対して、コウリュウは逃げる一手しかなかった。

 美春からの具体的な指示が無くなった事も重なって、コウリュウの動きは先程より明らかに鈍くなっており、身体のあちらこちらが溶けている。

 これ以上のダメージは、コウリュウ自身の具現化維持に影響を及ぼしかねない状況なのは明らかで、霧の雲に隠れながら撃ってくる霧のブレスを何とか避けている状態だった。


 コウリュウの思念から、コウリュウが窮地に立たされているのを感じつつ、美羽は星波デパートの屋上で空に向かって、コウリュウの感じる方向に向かって両手を広げた。

 「おいで、コウリュウ」

 その言葉に、霧の雲の隙間からコウリュウが、落ちる様に現れる。

 そして、コウリュウを追う様にはぐれが現れ、コウリュウを追撃。霧のブレスでも放つつもりだったのか、その寸前で、デパートの屋上にいる美羽に気付き、霧のブースト。その加速により、コウリュウを追い抜き、美羽を喰らおうと大きな口を開けた。

 はぐれの牙が美羽に襲い掛かる寸前、屋上のメリーゴーランドに隠れていたレベル1のコロ丸が瞬時にレベル2になってはぐれに襲い掛かり、はぐれの首に噛み付く。

 首を噛み付かれたはぐれはその勢いで落下し、道路に落ちるはぐれ。

 コロ丸とはぐれが落ちた衝撃で、道路が割れ、凄まじい地響きが生じる。

 その間に美羽の近くまで接近したコウリュウに、

 「私を受け止めて!コウリュウ!!」

 そう叫んで、美羽は走り、屋上から飛び降りた。


 落下する美羽を見たコウリュウは、咆哮を上げてスピードを上げ、美羽を片手で受け止めた。

 その際に、コウリュウの片手に何らかの力場が発生したのか、美羽の身体が一瞬浮かびあがり、美羽はゆっくりとコウリュウの掌に降り立つ。

 「いくよ!コウリュウ!!」

 美羽の呼び掛けに、応える様に咆え、急速上昇。

 霧の雲の隙間へと突入する。


 レベル2と化したコロ丸に押さえ付けられているはぐれは、全身の穴から霧を放出し始める。

 コロ丸はそれに堪らず牙をはぐれから外してしまう。

 自由になったはぐれは、瞬時に口をコロ丸に向け、霧のブレスを放った。

 霧のブレスの直撃を受けたコロ丸は、悲鳴を上げ、掻き消える。

 それを確認したはぐれは、丁度霧の雲の隙間に突入する美羽とコウリュウを見付け、一人を一匹を追って飛び立つ。


 飛び立つはぐれをデパートの中から確認した美春は、自身の背後に現れた半透明のコロ丸を撫でる。

 「ごくろうさまコロ丸」

 美春の労いの言葉に、コロ丸は美春に頭を擦り寄せ、上空を見上げた。

 「・・・・大丈夫。美羽は、約束を破る子じゃないわ」


 霧の雲がない空に抜けたコウリュウ。

 満天の星空に一瞬、目を奪われる美羽。

 霧の雲により町の光が遮断されているせいか、いつもより星の数が多く見える。

 (そう言えば、夜は危ないからって、夜の空を飛んだ事なかったけ・・・・・・)

 そう思った美羽は、コウリュウを見上げ、微笑んだ。

 「今度はゆっくり夜の空を飛ぼうねコウリュウ」

 その言葉に、コウリュウが応える前に、眼下の霧の雲からはぐれが飛び出し、コウリュウの進路を防いだ。

 「倒すよ!コウリュウ!!」


 霧の雲を抜けたはぐれは、すぐさまコウリュウを捉え、威嚇の声を上げる。

 そのはぐれに、コウリュウは炎のブレスを放つ。

 はぐれは全身から霧を発生させ、炎のブレスはその霧に阻まれ、はぐれまで届かない。

 だが、続けざまにコウリュウが撃った光線のブレスが霧を貫通し、はぐれの頭を撃ち抜く。その寸前で、避けられ、光線のブレスは、はぐれの顔を少し焼いただけだった。

 顔を焼かれた影響で、はぐれは片目が潰れ、見えなくなった。

 その為、はぐれは怒り狂った様に咆哮し、より濃く霧を発生させ、完全に姿を見えなくさせる。

 コウリュウはその霧の塊に向かって風のブレスを吹き、霧を吹き飛ばすが、その場所には既にはぐれは居なかった。


 コウリュウを旋回させながら、美羽は全神経を眼下の霧の雲へと向けていた。

 あの状況からして、隠れているとしたら、霧の雲の中なのは間違いない。

 だが、霧の雲はその下にある町並みが完全に見えなくなるほど濃く、どこにはぐれが隠れているか、全く分からなかった。

 「っど」

 不意に言葉を発した美羽に、コウリュウは視線を向けた。

 「どうしよう?」

 その言葉に力でも抜けたのか、ちょっとだけ降下するコウリュウ。

 「一緒に飛べば何とかなるって思ったんだけどなぁ〜」

 力無い、その考え無しの言葉を、美春が聞いていたらどう思っただろうか?

 激怒するであろう美春を想像して、美羽はちょっと困った顔になった。

 その時、霧の雲から霧のブレスが連続で放たれた。


 霧の雲から次々と放たれるブレスは、霧の雲と同様に直には消えず、まるで柱の様に空に残った。

 ただ、はぐれはコウリュウの姿を正確に確認して、霧のブレスを吐いているわけではないのか、まるで当たらない。

 それでも、連続で放たれ、作られる霧の柱により、徐々に移動範囲が狭まり始め、終には霧の柱の通路が作られてしまい、コウリュウの動きが一直線に限定させられる状況になってしまった。

 その状況を抜け出す為に、飛ぶ速度を上げるコウリュウ。

 霧の柱の通路の終わりが見えた、その瞬間。

 コウリュウの進行方向、霧の柱の通路の終わりに、はぐれが霧の雲から飛び出し、コウリュウの逃げ道を塞いだ。

 はぐれが霧のブレスを放とうと、今までにないくらいに胸のブレス袋を膨らませる。

 それを確認したコウリュウは、急激に上昇して霧の柱を越えようとするが、はぐれのブレス袋が膨らみ切るのが早く、放たれる巨大な霧のブレス。

 必死に逃げるコウリュウに、霧のブレスは直撃し、霧に包まれて落下するコウリュウ。

 歓喜の咆哮を上げ、落下するコウリュウに向かって、はぐれは突撃した。


 突撃するはぐれの牙が、霧に包まれたコウリュウに食い込む直前、

 霧によって動けないほどのダメージを受けているはずのコウリュウから、

 『閃光』が走った。

 はぐれの胴を斜め下から斜め上へと走った閃光。

 突撃してきた勢いのまま、真っ二つになり、霧に包まれたコウリュウの両脇を抜けて、掻き消えた。

 その瞬間、周囲を支配していたはぐれの霧が一瞬の内に消え去る。

 そして、現れた閃光が発せられた場所には、コウリュウは居らず、代わりにあったのは、光線により穴の開いた『十何枚かの巨大な鱗の立方体』だった。


 はぐれの霧のブレスが直撃する寸前、

 「コウリュウ!防御鱗十二枚!」

 そう美羽は命令すると同時に、コウリュウの具現化レベルを落とし、通常サイズにした。

 そして、三メートルほどになったコウリュウの周囲に、レベルが落ちる前に射出された巨大なままの防御鱗が、瞬時に集まり、隙間無く、コウリュウを取り囲んだ。

 っと同時に、霧のブレスが防御鱗に直撃し、落下を始める。

 そして、ほぼ勘で、

 「レーザーブレス!」

 美羽はコウリュウに攻撃命令を出した。

 瞬間的な閃光。

 空気と鱗が焼ける匂い。

 レーザーブレスにより空いてしまった穴から、霧が僅かに入ってくる。

 っが、すぐに、まるでそこに霧など始めからなかったかの様に消えたので、美羽はほっとし、防御鱗の具現化だけ止めた。

 開けた視界には、先程より明らかに星の数が減った星空が入り、美羽は苦笑した。

 「・・・・もう少しあの星空を見てたかったなか?」



 美羽&コウリュウVSアシッドミストドラゴン

  (勝者=美羽&コウリュウ・決め技=レーザーブレス)


 武霊ファイト

   『美羽&コウリュウVSアシッドミストドラゴン』終了

 最後まで見てくれて、ありがとうございます。

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