表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/22

3

 昇降口に入りながら、既に靴を脱ぎかける。このような人と人とが密着する狭い空間は嫌いだった。だから、出来るだけ早く済ませて脱したかった。


 下駄箱の蓋を開けて、上靴を取り出し、それを床に落とす。ゴムの鈍い音は、喧騒に掻き消された。くたびれたソレに履き替えながら、すくい上げたスニーカーを中に放り込んだ。ピシャリと蓋を閉めながら、歩き出す。2年C組の教室は、西棟の2階だ。


「おはよう」背に声がかかった。その声が自分に向けられたものなのか一瞬だけ戸惑ったが、その後に名前を呼ばれたことで、確かに自分に向けられた挨拶らしいことがわかった。


 俺は振り返り、「おはよう」と返す。その声がぶっきらぼうになり過ぎないように、少し口角を上げて応えた。暗い奴だとは思われたくなかった。


  「災難だったね」 花見桜(はなみさくら)の視線を肩越しに感じる。俺たちは横に並ぶ形になって、同じ教室へと向かう。花見の横を1人の男子生徒が追い抜いていった。


  「見てたのか」俺は前を向いたまま尋ねた。


  「私、自転車だから。反対の歩道から、見えた」


  「そっか」


  「ま、そんな日もあるって」彼女は俺の腰辺りをポンポンと2回軽く叩いた。「気にすることじゃないよ」


 彼女は声をかけられて、後から来た他の女子生徒と合流していった。俺には歩調を合わせる必要が無くなり、前を歩いていた男子生徒2人組を抜かして前に出た。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ