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ヒューマンドラマ

算数の弱いレジの兄ちゃんに私は下手なツッコミを入れる

作者: 山目 広介

 昼間は残暑が残るけれども日が暮れると肌寒く感じるようになった秋の訪れを感じるある日のこと。

 ある本屋でのことでもある。

 田舎と言えるほど田舎ではなく、都会と呼べるようなわけではない。そんな実家の近くにあるところ。


 店内に入ると誰もいない。

 店員が普通なら客に合わせて姿を見せるはずなのに。

 よく来る客ならば、安心するのかまた裏へ行ったりもするけど、誰も出て来ないというのは違和感がある。


 新刊コーナーへ行き、ぶらぶらしながら何かないか眺めると、一冊続き物の新刊が目に入る。当然確保。

 次に雑誌コーナーへ行き、うろつく。

 手に取ってパラパラ。

 科学雑誌で面白そうな記事を見つけて、それも確保する。


 その雑誌と新刊のマンガを手にレジに行く。

 他に誰もいない店内。裏で荷物の整理でもしていた店員さんに声を掛ける。

 普通はもっと用心深く人が来たら見張っておくべきではないか、と思うのだが新人さんの様だったし仕方がないのかもしれない。


 私の買い物は千と幾らかだった。

 財布を見ると千円札がなかったので万札と端数小銭を出す。


 田舎だからかレジは手打ちだった。


「あっ」


 声に反応してレジを見ると桁を間違えて入力したようだ。

 十万と端数という感じになっている。そんなには払わないだろ。

 まあそのぐらいの間違いはあるだろう。

 訂正の仕方は知らないのだろうか?

 そのまま計算させていた。

 おつり、九万九千円。それがレジの表示だった。

 そして店員さん、何を思ったのか、九千円を出した後、さらに九百円をレジから取り出す。


「なんでやねんッ」


 私の下手くそな関西弁のツッコミが入った。

 言わなきゃ儲かっていた、そうは考えてしまってももう遅い。


 レジの兄ちゃんの計算が多分だが十倍したから十分の一にすればよい、ということだとすぐに見当がつく。

 本当は九万円増やしたから、九万円を結果から減らす、というのが正しい。

 そのように説明して、九千円だけ受け取る。

 レジの兄ちゃんは未だに首を傾げている。


「九千九百円ってのは一万円で百円の物を購入したときのおつりだろ。この本の百円台以下の端数を除いた千円を支払うために万札出したんだよ。おつりは九千円で大丈夫」


 ここまで説明してもまだ納得いった顔をしなかった。

 溜息を吐き、本を袋に入れてもらう。

 得したと思って納得して欲しい。


 本屋を出ようとして振り返ってもまだ店員は頭を左右に傾げていた。

 外に出ると入り口にはアルバイト募集の求人。

 時給は九百円だった。



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― 新着の感想 ―
[良い点] あははは。 日常にネタは転がっているものですね。 面白く読ませて頂きました。 またこんなの読みたいです。(^_^)
2019/06/08 19:14 退会済み
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