靴箱での事件
おはよう~と言う声が鳴り響く、清々しい朝。彼はボケっと自分の靴箱を開いて立ちつくしていた。
「何してるの~?」
私が彼に声をかけながら近づいていくと、彼はバッと靴箱を閉める。
「な、なんでもないぞ?」
私の方に顔を向けては居るが、彼の目は私に向けられてはいなかった。
「え~怪し~見せてみなよ」
「なんでもないって」
そう言いながらも、彼の手は靴箱の蓋をしっかりと抑えていた。
「そっか、わかったよ」
彼は私の言葉に驚いてこちらを見るが、私は体を一歩後ろに下げてニコリと彼に笑いかける。
「じゃあ、教室まで一緒に行きましょうか」
「え?」
彼の顔色が少し青くなる。
「なに?嫌?」
「えーっと嫌じゃないけど…」
「ならいいじゃない」
「いやー、あっそうだ!俺ちょっと風邪っぽくてさ、保健室に行くから、先教室行っててよ」
彼が絞り出した答えを知っていたかのように、私は会話を続ける。
「あら大変、危ないから保健室まで連れて行ってあげるわよ」
私がニコリと微笑みながら言ったその言葉で、諦めたのか彼は肩を落とす。
「わかったよ」
彼は近づいてくると、耳元で話を始める。
「ラブレターが入ってたんだよ」
やっぱりか、内心気づいていた答えだったが、やはり少し癇に障る。
「そっか、よかったね」
私は普通に言うつもりだったけど、棘のある言い方をしてしまった。
「どうするの?オッケーするの?」
「いや、もちろん返事はするけど、断るつもりだよ」
そう言いながら、彼は靴箱から上履きと、未だ封の開いていない手紙を取り出す。
「俺の好きな人からじゃ無いみたいだしな」
「なんで?まだ開けてないのに分かるの?」
手紙を鞄に直して、靴を履き始める彼に向かって質問する。
「そいつの反応かな。一緒に行くんだろ?早く行こうぜ」
そう言うと、彼は教室に向かって歩いて行く。
「え?」
少し考えると、彼が手紙を見てから話したのは、私だけなことに気づき。自分に向かって気のせいだと言い聞かしながら、少し熱い顔で彼の背中を追いかけた。
男の子の動きに注意しすぎてしまって、薄くなった感があるから次はそこを改善しよう