冷感
いつもの癖でたまたま発見したイラストから即興で物語を作成しました
最近俺に彼女が出来た。クールでカッコイイが、髪型が相まってほんのりとした可愛さも持ち合わせる、文句無しの女の子。
でも、一つだけ引っ掛かるとしたら、謎の無表情さかな・・・
今日も学校の四時限が終わり昼休みへと突入、ウチの学校は他校より広くて夏休みも少し長め、そのため大半の学生が学校近くにあるレストランで昼飯を済ませる。
ただ、学生数もそれなりに多いため競争率が激しく、昼飯を食べられずに昼休みが終わることもある。
その競争率を事前に避ける人は、予め持参した弁当を学外で食べ準外食を楽しむ。
でも、俺の彼女は競争率のことなど恐らく眼中にない。
今日も昼休みに入ると静かに俺を誘い、学外へ出て人気の少ない場所で弁当を広げ無言で食べ始めた。
「今日の弁当、それ?」
「うん」
何を聞いても基本的に、簡単な返事で済ませてくる。
それだけならまだいい、たまにだけど。
「聞かなくても見てて分からないのかな・・・・・・」
こんな感じで軽いダメ出しが入る。
「す、すいません」
なんで彼氏彼女関係を維持出来ているんだろうと、疑問を持ったことも少なくない。
「・・・・・・哲君・・・・・・食べないの?」
こちらを一切見ずに彼女はポツリと聞いてきた。
「じ、実は、朝少し寝坊しちゃって、ギリギリ朝食は食べたけど商店で使うお金を忘れちゃったんだよね」
ははっ、と無理に渇いた笑いを浮かべるも、彼女は一切表情は変えず。
(しんどい・・・・・・)
最早泣けてくると思っていたら不意に腕をつつかれた。
「うん?」
「これ、食べたかったら、いいよ・・・・・・」
そう言って彼女は食べていたのとは別の弁当箱を俺に渡してきた。
「なんで二個もあるの?」
付き合っていると分かるが彼女は小食派の人間、明らかに食べきれる量ではない。
「・・・・・・たら悪い?」
色々推測していたらまた彼女が呟いた。
「え?」
ハッキリと聞こえなかったので一応聞き返した。
「彼女が彼氏の分まで作ってたら悪い?」
「いえいえ!全然!寧ろありがたいですっ」
こんなことを言ってはなんだがきっと今の俺は顔を真っ赤にしながら言っている。
愛妻弁当といったら気が早いかもしれないが、弁当の蓋を開けると中はかなりの出来栄えであった。
(こんなの身内の集まり位でしか見ないぞ・・・・・・)
自分でも少し持ったかもと思ったが、そう思うくらいにはレベルが高かった。
「でもさ」
「・・・・・・」
「よく作ってくれてたよね、俺一切頼んでないのに」
「朝自分の弁当を作っている時に何となく感じたのよ、あなた寝坊したんじゃないのかって」
(えぇ・・・・・・)
食べて欲しいとかって思いでなのかと思っていたため拍子抜けした。
「全然箸が進んでないけど大丈夫なの?昼休みは長いといっても、終わりくらいはあるわよ?」
その言葉にハッとした俺は急いで箸を進めた。
「ゲホッゲホッ」
案の定むせたが。
「ふふっ」
どことなく彼女の笑い声が聞こえた気もしたが、時間が気になり過ぎてそれどころではなかった。
数十分後
「はぁーごちそうさまー」
見た目の割に中々のボリュームだったので途中食べきれなかったらっていうのを何度か脳裏に過ぎったが、半分意地で食べきった。
「はい、お粗末様」
彼女が弁当を回収する際思わず近寄り感想を言った。
「お前の手料理スゲー美味しかったぞっまた作ってよっ」
我ながら頭の悪い感想である、でも言わないに越したことはない。
「弁当の感想なんて求めてなかったのにわざわざ言うのね」
(普通彼女って聞こうとしないのか・・・・・・)
そう思いつつめげずに稚拙でも褒め言葉を放る。
「それだけ美味かったんだよ」
「そう、でも次はちゃんと寝坊せずにお金を持ってきてね」
しかし一切折れる気配はない。
「いや、お前が今後も作ってきてくれたら」
それでも諦めず最終兵器を繰り出すと。
「面倒」
その一言でバッサリ切り捨てられてしまった。
「あっすいません」
どこか悪い気がして軽く謝罪をした。
午後の授業でもクールに徹し放課後までまるで機械のように過ごし二人一緒に帰路に着いた。
カップルとは思えないほど何も喋らない。
(こ、この空気、ヤバイな・・・・・・)
どこか危機感を感じたのでさり気無い風を装い。
「あ、あのさ」
彼女がいるであろう方を向き話題を振ろうとしたが。
「また明日ね」
既に帰宅を済ませていた。
「あ、はい」
ショボンとしたまま帰ろうとすると後ろから。
「うー、ヤッターっ」
確実に彼女のいる方向から聞いたことのないテンションの声を聞き取り急いで彼女宅の玄関に戻る。
でもやっぱりそこにいたのは。
「あれ?さっき別れたのに戻ってきたの?」
いつものクールな彼女だった。
彼氏を見送り見えなくなるまで確認したあと自宅内へ戻り胸を撫で下ろす。
(危なかったー、バレたかと思ったー)
一応クールなのは演技ではなく素なのだが、どこか綻んだ瞬間を見られたくないという気持ちがあった。
(美味しいって言ってくれたっ!何が一番だったんだろ・・・・・・十八番の卵焼きだと嬉しいな・・・・・・)
ニヤケが止まらない口を頬ごと抑えながらその日の家庭料理の支度を始める。
「明日は何を入れようかなー♪」
家庭料理を作っている間も明日の弁当の中身を構想する。
「でも、あんなこと言っちゃったからきっとお金用意してくるよねぇ・・・・・・あっこれいいかも♪」
シチュエーションはバッチリだったが肝心のメニューが決まらずに朝を迎えてしまう。
結局今度は彼女がメニューに時間をかけすぎて慌てん坊になるのは言うまでもない。
文章を打ち込みながら思ったこと
(これってクール系ではないよな・・・・・・)