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第四夜 後半

遅くなってすみません。

戦闘シーンの描写に散々悩ませられました。

_______古き月の輝く夜に______

________第四夜 後半_______



古き月の主(ウルリヒト)の威圧からくる風圧が周辺の物を吹き飛ばし、執務室の様な部屋から謁見の間の様に様変わりした、暗く広い部屋に驚きつつも、偵察や各種巻物等を使用して戦闘の準備をし、疲労を回復させる為に急ぎ食べ物を流し込む様に食べる伊達たち。


◆ラクリマ:季節の野菜のポトフ1個消費 疲労10回復 アサルトスタンス起動


◆XQ:季節の野菜のポトフ1個消費、疲労10回復


◆キリー:季節の野菜のポトフ1個消費 疲労10回復


カエデはポトフを魔精の小瓶を開け中身を飲み干した後、バグスライドを使用して周辺を照らし、キリーに禊の障壁をかける。


◆カエデ:季節の野菜のポトフ2個消費 疲労20回復 魔精の小瓶消費 魔力+2 バグスライト使用 キリーに障壁60付与 因果力1使用


伊達は敵情を探り敵数は4体居る事を報告する。その報告を受けXQは飛行の巻物を使った後、ポトフで疲労を回復させ、垣間見の巻物で敵の名前や姿かたちを教える。


◆XQ:飛行の巻物(初級) 使用 季節の野菜のポトフ1個使用疲労10回復 垣間見の巻物(初級)使用 疲労16


XQからの情報を元にラクリマは識別の巻物でセリアを識別する。


◆ラクリマ:識別の巻物(初級)使用 疲労9 因果力1使用


<ヴァンパイア・サーヴァント> タグ︰[モブ][不死][暗視]

<古き月の主 ウルリヒト・ブランゲーネ> タグ︰[ボス][不死][吸血鬼][血塊]

<セリア> タグ︰[モブ][半不死][半大地人][ミニオン]

<ハイスケルトン・アサルト> タグ︰[モブ][不死][暗視]


キリーは異常探知をすると、プロップを発見したので仲間に伝え、ラクリマは王の識別をして得た情報を仲間に開示する。


◆ラクリマ: 因果力1使用


XQはヴァンパイア・サーヴァントの識別をして情報を開示する。カエデは御霊の守護を自身にかけた後、禊の障壁を伊達にかける。


◆カエデ:伊達に障壁60を付与 因果力1使用


伊達はアンカーハウルでヘイトを稼ぐ。


◆伊達:ヘイト2


伊達たちは不意におぞましい何かを感じ取り咄嗟に身を翻した。


◆伊達︰因果力1使用


◆キリー︰因果力1使用


◆カエデ︰因果力1使用


◆ラクリマ︰因果力1使用


キリーは右手の剣の切先を古き月の主(ウルリヒト)に向ける。

「月の主よ、あなたが望む結末はどういったものか?大地人を蹂躙し冒険者たちに討伐されるのか、大地人と手を取り共存を望むか?」

キリーは真っ直ぐに古き月の主(ウルリヒト)を見て尋ねる。

「では聞こう。共存など可能とおもっているの

かね?」

「不可能ではないさ」

古き月の主(ウルリヒト)の問いにキリーは肩をすくめて言う。

「運命によって刻まれた呪いは我や我らの営みを縛る。息を吸うように人を襲い。水でも飲むかのように生き血を啜る隣人などできはしないよ」

キリーはため息を着いたあと、素早く移動してプロップを瞬時に解体してしまうと、再び古き月の主(ウルリヒト)の方を向く。

「そうは言うが、一応共存例はあるんだ。生血は人のものじゃなくても大丈夫なのだろう?」

「君はなにか勘違いをしているのではないかね?」

「夜の眷属となった大地人が暮らしてる場所はあるぞ」

「私は王であり配下に対して畏怖される存在でなければならない。では聞こう。我が配下たる同胞たち全てを活かせるとでも夢物語を語るは寝てしたまえ」

「ならば、この村の脅威から守るための君主になればいいのではないか?」

「やはり理解していないのだな 君たち冒険者は刻まれた呪いの重さを」

伊達は無言で二人の会話の行く末を見守っているが、セリアやハイスケルトンたちの動きにも気を配っている。

「この周辺には、あなたたち以外の大地人にとっては脅威となるモンスターがいる。それから守ればよいのではないか?それとも輪廻の輪(繰り返す悪夢)に戻りたいのか?」

「そも守ること自体が不可能なのだよ。我らに刻まれた呪いが叫ぶのだ。大地人を憎め、殺せと」

「そうか・・・システムの輪から逃れるすべはないと諦めるのか」

キリーは悲しげに下を向き、ため息をついた後に討伐するしかないかと諦め、意識を切り替える。

「呪いに抗えないなら仕方ないな・・・。遠慮は失礼だな、本気で行かせて貰う。だが、従者とした彼女はどうしたい?」

キリーの問いに古き月の主(ウルリヒト)は何も答えなかった。

ラクリマはキリーが古き月の主(ウルリヒト)を説得するのを横目に疾風の如く駆け、ハイスケルトンをワイバーンキックで瞬殺する。


◆ラクリマ:ヘイト2


XQは古き月の主(ウルリヒト)に向かって走りながらシャドウバインドで動きを封じ、ステルスブレイドを放つが、血の塊の様な不気味な物が弾け、ダメージを全く受けていなかった。

「この程度じゃ届かない・・か」

攻撃は当たっているが、手応えの無さにXQは悔しそうにつぶやく。


◆XQ:ヘイト2


伊達はヴァンパイア・サーヴァントにヘイトリッドチャージで威力を上げたオンスロートを放つが当たらなかった。


◆伊達:ヘイト6


古き月の主(ウルリヒト)は常闇の衣を纏う。その姿は王の風格があり、その瞳に映る者たちはダメージやバットステータスを負う。


◆伊達:障壁を失う


◆キリー:追撃10


◆XQ:追撃10 ヘイト1


◆カエデ:追撃10


「兄上様の障壁が・・・!!!!」

古き月の主(ウルリヒト)の魔眼により伊達の障壁を剥がされた事に驚くカエデ。

ヴァンパイア・サーヴァントが古き月の主(ウルリヒト)を瞬時に移動させた後、伊達に魔法攻撃する。伊達は避けきれず被弾するが、咄嗟にアイアンバウンスを使いダメージを軽減する。


◆伊達:HPに7ダメージ


古き月の主(ウルリヒト)は常闇の衣を更に纏い、血で濡れた茨でXQと伊達を襲う。二人とも回避しきれずダメージを負ってしまう。


◆伊達:HPに36ダメージ [弱点(物理ダメージ)︰5] ヘイト6


◆XQ:HPに38ダメージ[弱点(物理ダメージ)︰5]


カエデは移動しながら伊達に鈴音の障壁を使い、ヒールをかけXQの傷を癒す。

「ありがとう、カエデさん」

XQはカエデに礼を言う。


◆カエデ:伊達に障壁29付与 XQのHPを34回復


ラクリマは防具の付加効果のスナネズミ起動し、ヘイトをさげる。


◆ラクリマ︰ヘイト0


古き月の主(ウルリヒト)は配下から捧げられる生贄の血肉を使い、周辺に居る伊達、カエデ、XQにバットステータスを与え、血塊が2つ増える。


◆XQ:[弱点(物理ダメージ)︰10]


◆伊達:[弱点(物理ダメージ)︰10]


◆カエデ︰[弱点(物理ダメージ)︰5]


キリーとラクリマは再度、異常探知を行い、隠れたプロップ等が無いか確認するけど、何もなかった。

カエデは御霊の守護を自身に願い、禊の障壁をXQにかける。


◆カエデ︰XQに障壁を50付与


「ありがとう」

XQはカエデに礼を言うと、

「いえいえ、解除させられちゃうので気を付けて下さい」

カエデはXQに忠告する。


キリーはレッサーバンパイアに向かい、舞う様なステップを踏み、左右の剣で交互に苛烈な斬撃を振るうと、耐えきれずレッサーバンパイアは斬り刻まれ弾け消えた。

「さて、邪魔者一つ排除したと・・・。次はあなただね」

古き月の主(ウルリヒト)の方を見る。

「やはり凄まじいものだ。冒険者という存在は・・・」

「好んで得た力じゃないけどね・・・。あなたは、しばしの眠りを望むの?」

古き月の主(ウルリヒト)の感嘆にキリーは苦笑して問う。


◆キリー︰ヘイト5


XQはキリーと古き月の主(ウルリヒト)の会話を余所にセリアの方へ走り、シャドウバインドで彼女の動きを阻害し、刀を彼女の視覚外に隠し、

「御免なさいね。…貴方を斬るわ」

セリアにステルスブレイドを静かに放つ。腹部より血を流し倒れるセリア。 


◆XQ︰ヘイト3 因果力2使用

 

XQは無言で血に濡れた愛刀を見ながら、呆然とする。

「XQ。呆けている暇はないぞ」

ラクリマは呆然としているXQを叱責する。

伊達はデコイアクションでキリーのヘイトを逸し、ヘイトリッドチャージで威力上げたオンスロートを、【量産採用試験型連装式突撃弩│<ガーランド> 】の台座を振り上げ、叩き付ける様に放った。


◆キリー︰ヘイト3

 

◆伊達:因果力1使用


「だらっしゃあああああ!!!」

伊達の放つ渾身のオンスロートは古き月の主(ウルリヒト)を包む常闇の衣が剥がれ、その威力を殺される。


◆伊達:ヘイト10


古き月の主(ウルリヒト)が魔眼でカエデとラクリマ以外を睨むと伊達、XQとキリーの障壁が消える。

「くっ障壁が…」

XQは苦々しくつぶやく。

古き月の主(ウルリヒト)は再び常闇の衣を纏い、周囲に流れ出た血が茨となり、足元から伊達とXQを襲う。

「兄上様・・・!!!」

カエデの悲鳴の様な叫び声を上げる。

「ぐっ・・・がふっ・・・!」

複数の血の茨が伊達を串刺しにする。伊達は血反吐を吐いて、意識を失う。

「全く、無茶しやがって・・・」

キリーは苦い表情で気を失った伊達を見て、ためを息つき、つぶやく。

「障壁を剥がす…厄介だな」

ラクリマも暗い表情で言う。

「龍之介さんッ!」

XQにも血の茨が刺さるが、致命傷までには至らない。しかし、串刺しになった伊達の姿を見て、悲痛な叫びを上げる。


◆XQ︰HPに32ダメージ[弱点(物理ダメージ)︰10]


血の茨が消え、血溜まりの中に落ち、倒れたまま動かない伊達。

「カエデさん…蘇生を…!」

XQは血溜まりの中で倒れている伊達の姿に動揺し、カエデは顔色が青くなりながらも、鈴音の障壁をXQに、伊達にリザレクションをかける。


◆カエデ:XQに29の障壁付与 伊達のHP40回復


◆伊達︰ヘイト8


◆カエデ:ヘイト3


伊達は血溜まりの中からゆっくりと立ち上がる。

「ほっ…よかった」

XQはひと安心した様につぶやく。

「助かったぜカエデ……!」

「兄上様・・・手遅れにならず良かったです。」

伊達がカエデに礼を言うと、カエデは無事に助けられて安堵する。

古き月の主(ウルリヒト)は再び配下から捧げられる生贄の血肉を使い、周辺に居る伊達、カエデ、XQにバットステータスを与え、血塊が増える。


◆XQ:[弱点(物理ダメージ)︰15]


◆伊達:[弱点(物理ダメージ)︰15]


◆カエデ︰[弱点(物理ダメージ)︰10]


XQは先程、動揺した自分を恥じて深く深呼吸して、前に進む活力を得る。


◆XQ︰因果力を1取得


カエデは自分に出来る事をと、キリーに障壁を張る。


◆カエデ:キリーに障壁を50付与


キリーはユニコーンジャンプを使い古き月の主(ウルリヒト)の頭上から二本の剣でブラッディピアッシングを放ち、着地後、ダンスマカブルの苛烈な斬撃のラッシュで追い詰める。常闇の衣が剥がれダメージが軽減されたが、古き月の主(ウルリヒト)にかなりのダメージを与えたようだった。


◆キリー:因果力を4消費 ヘイト8


「ラクリマさん、頼みますわっ!」

「ああ」

XQの声にラクリマは応えながら駆け、オリオンディレイブロウをワイバーンキックと共に放つが、古き月の主(ウルリヒト)に蹴りをかわされてしまう。

「遅い」

「っ。だが、どうかな」

しかし、すれ違いざまに仕掛けを施していた。


◆ラクリマ︰古き月の主(ウルリヒト)に[追撃10][追撃10]付与 ヘイト3


「XQ!伊達!追撃頼む」

「任せろッ!!」

ラクリマの言葉に伊達が応え、XQはシャドウバインドで古き月の主(ウルリヒト)の動きを封じ、斬撃符を起動させ、突風の様に駆けて、決死の形相で刀を振るい、テルスブレイドを放った後、

「ハァァァアアアアアッ!!」

アサシネイトで大ダメージを狙うが、常闇の衣が剥がれダメージが軽減されてしまうが、ラクリマの付与した追撃を一つ起動し、僅かなりともダメージを与える。


◆XQ:因果1使用


XQはシェイクオフを使い、ヘイトを逸らす。


◆XQ︰ヘイト0


伊達はキリーのヘイトを逸し、ヘイトリッドチャージて威力を上げたオンスロートを古き月の主(ウルリヒト)に放つが、血塊が弾けダメージが軽減される。ラクリマが仕掛けた、あと一つの追撃が起動して多少なりともダメージを与える。


◆キリー:ヘイト6


古き月の主(ウルリヒト)は常闇の衣を纏い魔眼で伊達たち見渡すと、伊達は傷付き、キリーは障壁を剥がされ、ラクリマ、カエデとXQはBSをもらってしまう。


◆伊達:HPに15ダメージ


◆ラクリマ:[追撃10]


◆カエデ:[追撃10]


◆XQ:[追撃10]


◆キリー:障壁0


古き月の主(ウルリヒト)はすぐさま常闇の衣を纏うと、再び血の茨で伊達とカエデ、XQ を襲う。

ラクリマはロングレンジカバーで血の茨を避けきれなかったXQを庇う。


◆ラクリマ:残りHP80


伊達は咄嗟にカエデ庇い、大ダメージを負い倒れる。

「…戦法としてはありだが、あまり見たい光景でもないな」

「だよな・・・。どっちがアンデットだかと言いたくなるよな。ラクリマ」

ラクリマとキリーは倒れた伊達を見て、ため息をつきながらボヤく。

カエデはキリーとXQ、ラクリマのバットステータスを解除した後、キリーに障壁を付与、伊達にリザレクションをかける。


◆ラクリマ:追撃解除


「おら、もっと本気で来…やが…れ」

伊達は起き上がった途端、古き月の主(ウルリヒト)を煽る。その姿にXQはなんとも言えない表情でつぶやく。

「不退転の覚悟ですわね…。私もキッチリと役目を果たさなければなりませんわ」


◆カエデ:キリーに障壁を29付与


◆伊達:HP 40


「どうした古き月の王、カノジョが居なきゃただの傭兵一人殺せないのか?」

「兄上様、無茶はなさらないで・・・!」

伊達はさらに煽るがカエデが泣きそう顔で止める。

キリーはブラッディピアッシングで古き月の主(ウルリヒト)の心臓を貫いた。

「おやすみ。呪いに抗ってくれたのなら手立てもあったのに・・・」

キリーは悲しそうにつぶやくと。剣を引き抜き、血を払って鞘に戻す。血溜まりの中に崩れる様に倒れる古き月の主(ウルリヒト)を見下ろす。

「月の主よ。彼女はどうしたい?共に逝くか?生かすか?」

「いや、まだだ」

伊達龍之介は古き月の主(ウルリヒト)に近寄って篭手を取り、ボウガンの矢で自身の手首を切って血を与えようとする。

「俺達が勝ったら話を聞いてもらうって言ったろうが。勝手に自己完結して逝こうとか、すんじゃねえ。それがアンタの誇りだってんなら、ちゃんちゃらおかしいぜ」

「伊達・・・。また無茶なことを」

キリーは呆れる。

「……はぁ」

ラクリマは伊達の行動にため息一つ落とすと、セリアを保護する為に向かう。

「運命に抗うんだろう?こんなんで折れてんじゃねえよ」

「伊達。お前、ずっとそいつに付き合うつもりか」

伊達の叫びにラクリマは足を止め、彼に尋ねる。

「散々偉そうに運命論垂れといて、そりゃあねえぜ?」

「大地人を憎む呪縛をどう取り払うか・・・考えあるのか?伊達」

キリーは伊達に打開策があるのか尋ねる。

「呪縛ねぇ?それ、今何とかする必要、ねぇべ?」

「システムに介入できない以上どう呪縛を解き放つんだ?」

キリーの瞳が検をを帯び、伊達を見る。

「とりあえずコイツが暴れるってんなら、アキバから援軍で粘って、ふん縛る何なりして、そっから方法を探せばいい。それに、ミラルレイクの賢者も来るってんだろう?」

「伊達」

ラクリマは静かに、強く言い放つ。

「私たちは、ここに急いでくるために、何を、他のやつに任せてきた?時間がない、大地人の犠牲を少なくするために、ここに急いできたんだろう」

「龍之介さん…」

「兄上様……」

カエデは涙目になりながらも、XQはおろおろしながら様子を見守っている。

「システムが何だ!アンタはこれまで散々抗ってきたんだろうが!!」

「__!!我儘もいい加減にしろっ!!!」

伊達の言葉に我慢出来なくなったラクリマが怒鳴る。

「生かす方法ねぇ~?。こいつの意思に関係なくグールが湧いてしまうのをどう解除する?」

キリーは意固地になった伊達を冷たく見下ろす。「(古き月の主(ウルリヒト)が制御する気があるのなら、打開策が無いわけでもなかった)」と思う。伊達の気持ちは分からんでもないし、自分も殺すには惜しいと思い説得しようとしたが、繰り返す検証実験(月での出来事)に魂が摩耗し疲れ果て諦めていた。制御出来ないのならば放置する事は出来ないと決断を下したのだ。

「この男を倒さねば、この村の人はいずれグールに成り果てるのですよ」

「貴様、一時の感情でほかのものが守ってきたものを危うくするつもりかっ!!」

「伊達、血清の数にも限りがあるんだよ?」

XQ、ラクリマとキリーが伊達に自分達が何の為に古き月の主(ウルリヒト)を倒したのか思い出させる様に言葉を紡ぐ。

「・・・・けど、それでもッ・・・!」

ラクリマは伊達に掴みかかり、

「すべて抗えると思っているのか?お前の考えは高尚だ。そのお前になら惹かれるものも多いだろう。だがな、すべては無理だ!」

争っている間に意識を取り戻そうとしているセリアへ向かって古き月の主(ウルリヒト)が何かを呟く。


キリーは古き月の主(ウルリヒト)が何かをしようとするのに気付き、そっとセリアの傍に立ち、発動しようとしている魔法を解析すると、次の瞬間古き月の主(ウルリヒト)の瞳が輝く。

「待って。今何か…」

XQは古き月の主(ウルリヒト)が何かをしようとするのに気付き、皆に注意を促すが、

「生かすほうを選ぶのか・・・。彼女にはなんと?」

キリーは好きにさせてやれと言外に仲間に伝える。

伊達は無言で彼らを見る。

「…お前の最善は無理だ。…今あいつらの最善を、選ばせてやれ」

ラクリマは伊達に言いながらも邪魔はせず、ただ見守る。

「すべてを忘れ生きろとでも言うのか?」

キリーは発動された魔法の意味を知り尋ねるが、古き月の主(ウルリヒト)は何も答えない。既に身体も崩れ掛け答える余裕もないというのが正しいところか。

「忘却の魔法か・・・。目覚めた時彼女はどう選択するんだろうな・・・」

仲間たちにセリアに掛けられた魔法を教えつつも、今後の彼女の行く末を心配する。

「兄上様・・・ごめんなさい、弱い私でごめんなさい・・・でも、やっぱり、私は・・・」

カエデはキリーの言葉が聞こえているのか、いないのか分からないが、何度も伊達の傷ついた手をヒールで癒していきます。伊達はカエデの頭をくしゃりと撫でながらつぶやく。

「古き月の王、ウルリヒト・ブランゲーネ・・・」

「私はこの男が灰になるまで見送るわ。邪魔はさせませんでしてよ」

XQは伊達と古き月の主(ウルリヒト)の間に立ち、言い放つ。

「俺はアンタを忘れない。何千何万回死のうと、俺がアンタの代わりに運命に抗い続けてやる」

伊達は灰になって行く古き月の主(ウルリヒト)に誓うかのように言う。

古き月の主(ウルリヒト)の頬がわずかにつり上がったように見えた。次の瞬間、瞳が輝き目を覚ましたセリアと視線が合う。最後の力を振り絞り魔眼を発動させると王は灰へと変わっていく。

「龍之介さん…。」

XQは彼の選択を見届ける。

「…高尚ではなく、ただの馬鹿か」

ラクリマは力なく呟く。

「え、えっと。ここは・・・」

セリアは血に濡れた床から身体を起こしながら、周囲を見回す。

「…気が付いたか」

ラクリマはしゃがんでセリアに目線を合わせる。

「あの貴方は それにここは一体」

「私たちは冒険者。お前を連れ戻しに来たんだ」

セリアの質問にラクリマは優しく答える。

「大丈夫?痛かったでしょう」

「あなたはモンスターに浚われてたんです。救出に来たんですよ」

XQとキリーはセリアの状態を確認しながら、簡単に状況を説明する。

そんな中、伊達は古き月の主(ウルリヒト)の遺灰が風に消えてゆくのを見守っている。

「(どうか、運命に縛られたあなたが、来世では運命に縛られない道を歩めますよう・・・)」伊達の隣で祈るカエデ。

「そう言う事だ。最初からあなたは気を失っていたが…異常はないか?」

「あ。えっと皆様が助けてくださったのですか」

セリアにラクリマは身体に異常が無いかと確認するが、状況を理解していない彼女は混乱しているようだ。

『皆、悪いが彼女を村人から遠ざけておけ、いい予感がしない』

キリーはセリアに聞こえないようにPTチャットで話す。

「はい。服が破れたりはしてますが怪我はないみたいです・・・」

セリア自分の身体を確かめながら答える。

『ああ…』

ラクリマは納得したが、何ともやりきれない返答をする。

「姐さん、彼女を頼む」

と伊達は言い残して外へ向かう。

『外が安全とわかるまで匿っておくのがよろしいですわね…』

XQもキリーの言い分を理解し、賛同する。

「それは良かった。だが、念のためアキバに来てもらってもいいだろうか。もしかしたら何か目に見えない影響があるかもしれない」

ラクリマはセリアに検査名目でアキバへ行く提案をする。

「はい。えっとでもよろしいのでしょうか?ご迷惑では・・・」

「迷惑ならこんなことは言わない。ロカの治療院という施設を紹介しよう」

セリアは急な提案に困惑気味になり、遠慮しようとし、ラクリマは遠慮は無用だという様に話を進める。

「その代わりといっては何だけど、子どもたちに字とか教えること出来そう?」

「はい。一通りではありますが読み書きと計算くらいでしたら」

キリーの質問にセリアは答える。

「ふふ。それは助かりますわ。あちらも人手不足でして」

遠慮しなくていい様にキリーの提案にXQがさらに補足して了承し易い状況に持っていく。

「なら、働きながらの治療でいいかな?」

「もし私でよろしければ」

セリアは儚く笑う。

「村長と妹さんにはこちらから伝えるから、後遺症がないか調べるために早めに行きましょうか」

「あの、あの人もいなくなってしまいましたし、この館がいつ崩落するとも限りません、ひとまず出ませんか?」

古き月の主(ウルリヒト)が消えて不安定になった館の中から出ようとカエデは皆に促す。

「よし、ならあとは移動した後にしよう。ここもいつまでもつか分からない。失礼する」

と言って、ラクリマはセリアを横抱きにする。

「なにから何まですみません」

突然ラクリマに抱きかかえられて、小さくなるセリア。

『伊達くん、こちらでエネミーの消滅を確認。ボスの始末に成功したのかね?』

伊達にザインから念話がかかる。

『……こちらクインレッド小隊、ボスエネミーの討伐を確認。同時に"攫われた大地人"も救出。適宜対応を』

伊達はあくまで機械的にザインへ報告した。

『ふむ、了解した。こちらはまだ負傷した村人などの対処や街道にエネミーが残っていないかなどの確認で忙しいのでね。君たちの判断で行動することを許可するよ』

『……了解』

ザインはボス討伐後の"攫われた大地人(セリア)"処遇を伊達たちに任せる。

「みんな、ボスエリアが消滅する前に脱出するぜ」

ひとり先に館の外に向かっていた伊達は、周囲に村の人達が居ないことを確認し、PTチャットで伝えるとキリーとカエデを先頭にセリアを抱きかかえたラクリマ、その後ろをXQが護りながら出て来た。


伊達たちは朝日に溶けるように消えだした洋館を後にする。外は既に日が差し込み、世界が輪郭を取り戻す。

ラクリマはセリアにマントを被せて、切れた服が見えないようにする。

「では私はミナさんに事情説明と依頼報告を済ませてまいりますね。皆様先にアキバへお帰りになっていてください」

「ああ、後は頼んだぜ、カエデ」

「はい、兄上様もどうか、ご自愛くださいませ」

カエデの言葉に伊達はすべてを任せる様に頷く姿を横目にキリーは首もとから笛を取り出し鳴らす・・・。大きな羽ばたき音と「ピィィィィ」と言う鳴き声がしてグリフォンがキリーの前に降りてきた。

「では、セリアさんアキバに行きましょうか」とキリーはセリアに手を差し出す。

「…キリー、彼女に空の旅は酷じゃないか」

ラクリマはグリフォンを呼び出すとは思わず、驚きつつも身体の弱いセリアにとって大丈夫か確認とる。

「なに、そんなに高速移動しないさ、ラクリマ。(第一、本人が貧血でフラフラで高速移動できない)」

「…分かった。彼女を頼む」

そんな無理はしないと、微笑みながら答え、グリフォンに鞍を着け先に乗り、ラクリマからセリアを受け取り前に座らせる。

「事後処理任せるよ。後はよろしく頼む。カエデ」

「はい、お任せ下さいませ」

グリフォンの上からキリーはカエデをまっすぐ見て後の事を頼むと、彼女は笑って応える。

飛び立つキリーを見送った伊達たちはザイン達のいるセイフティーポイントへと向かった。

セイフティーポイントは今だに慌ただしい様子でけが人の治療や血清の投薬、斥候からの報告や備品の確認などの怒声が響く。

伊達たちの視線の先には各種報告を受け取っているザインと彼に近寄るミナの姿がうつる。

「ザイン、今どうなっている」 

ラクリマは慌ただしく動いている人達をかわしながらザインに近づく。

「ああ、感染型グールはほぼ消滅したと断言しても問題ないだろう。負傷者の手当は援軍で来たメンツがあたっている。ん・・・キリーくんの姿が見えないが?」

「保護した大地人を連れて、一足先にアキバに戻った。目立った怪我はなかったが、念のため検査をしようとなってな」

ザインの問いにラクリマは簡素に答え、肩をすくめるだけにとどめる。

「まぁ、そういうことで一つ頼んまあ、ザイン」

「・・・なるほど。了解した。ラクリマくん、今回の依頼では世話をかけたね。何かね伊達くん?」

「"保護した大地人"の方は"こっちで引き受ける"ってことで、お上の方によろしくってな」

「それはこちらの関与することではないね。好きにしたまえ」

ラクリマと伊達の話を聞き、ザインは淡々と処理する。

「…依頼主のミナだな」

ラクリマはすっとザインから視線をずらし、ミナの方を見る。

「はい。みなさんご無事で。あの姉さんは」

ミナはラクリマに詰め寄る。

「モンスターの影響を受けていたようだ。それで、自発的に姿をくらましたらしい」

伊達は沈痛な表情になり、黙って様子を見守る。

「私たちが保護した時は目立った外傷はなかったが、精神的な影響は受けていたようだからな。一度アキバに連れて行って、検査を受けてもらう事にした」

「え?モンスターっ。無事なのですか?怪我は?」

「ない」

「よかった・・・本当によかった」

ラクリマからの説明にミナは安心して、ヘタリ込んで座りながら、ぽろぽろと涙を流す。ラクリマはすっと、しゃがみ込んで視線を合わせる。

「今すぐにとは言えないが、彼女の状態が落ち着けば、お姉さんに会いに行けるよう、取り計らう」

「ありっ、がとうございます。本当にありがとうございます」

ラクリマとミナの様子を見て、伊達の表情から少しだけ険が取れる。

「おそらく長い間彼女はアキバに居ることになる。だが、落ち着けば、必ず合わせよう。それまで、待ってやっていてくれるか」

「はい、それに私からも会いに行きますから」

ミナは立ち上がりながら言い切った。

「そうか。なら、彼女の状態が安定すればすぐに迎えに来よう」

その姿にラクリマは小さく笑う。

「諸君、君たちの働きは十分なものだと判断する。このまま解散して自由にしたまえ。現時点をもってQR小隊の任務の終了と解散を宣言する」

伊達たちに向かってザインが宣言をする。

「了解、クインレッド小隊、これより帰投する」

「了解。なら個人的に手伝おう」

ザインと伊達の宣言を聞き、ラクリマは救助の手伝いを申し出る。その場にて別れた伊達たちは、それぞれ行動を起こす。



洋館があった場所は既になんの痕跡もなく、ただの畑へと戻っていた。カエデは畑の邪魔にならない場所に、石を積み上げた小さなお墓を作り、簡素なお墓の前で目をつぶって両手を合わせて黙祷をささげる。ふと、祈りを捧げるカエデのもとに一陣の風が吹き抜ける。

「私は祈り手ですから・・・この祈りが届いてくれると信じて、祈り続けます。」

その吹き抜けた風に向かって語り掛ける様につぶやく。


XQは瓦礫を退かし、街にある大地人の亡骸を集め、教会らしき場所に持っていく。ただ淡々と作業に従事していた。

XQは作業を終え、カエデの元へ行く。一緒に手を合わせ黙祷を捧げる。

「それに祈り手が祈った事って必ず実現しそうな気がしません?」

「ええ。カエデさんの祈りは、必ず届きますわ」

カエデが振り返りXQへと語りかけると、彼女は微笑んで言う。静かに時が過ぎて行く。

「ふふ、ありがとうございます。それじゃあ、私はあのおじいちゃん達のお説教聞きに行ってきますね。XQさんはどうぞごゆっくり」

「カエデさん。あなたのお兄さんは、強いわね」

パタパタと走って行くカエデを見送るXQはポツリとつぶやいた。

二人は墓を離れ歩き出す。共に戦った仲間たちの元へと……。



キリーはセリアを自らの前に座らせ当たる風が辛くない様にグリフォンを操作しながら、

「寒くはないか?」

と尋ねる。

ミナは身体を服で抱きとめながら、

「いえ 大丈夫です」

声はそういうものの手はブルブルと震えているのがキリーには伝わる。

「無理はしなくて良い。気休めかもしれないがこれを羽織った上で毛布を被りなさい」

カバンから耐寒耐性のあるケープと毛布を渡す。

「ありがとうございます」

セリアは戸惑っていた。「(初めてあった人にこれほど優しくされたのは…。いや、そもそも人とこんなに触れ合うのはいつ以来だろう。よくわからないまま連れてこられているというのに胸が高まっている?喜んでいる?)」

キリーはケープと毛布を羽織った彼女を暖めるように間を詰め、

「村を離れるのは嫌か?」

と尋ねる。セリアは尋ねられて、はっきりと自覚する。「(あぁ、そうか。私は今、冒険をしているんだ。見知らぬ土地や見知らぬ人のもとへと飛び込もうとしているんだ……)」

「いえ、不安がないとはいえませんが・・・」

セリアは少し困惑気味に答える。「(本音をいうと嬉しいんだ。ただ家で鳥かごの中の鳥のように生きるのには疲れていたから)」

「ならいい。アキバは変わった所だからな、楽しみにしてると良いよ」

「はい」

背中越しに聞こえる声に、セリアは力強くうなづいた。


二人はそのまま飛び続ける。柔らかな、しかし冷たい風の吹く朝日の中を……。



_________ 古き月の輝く夜に _______

_________ 最終夜が明け _________

_________ 朝日が昇る __________






最後まで読んで下さりありがとうございます。


このシナリオはプレイヤーの選択肢によって、様々な結末をむかえるので、後味悪い結末になる事もあります。幸いこのPTにはバットエンドは絶対回避するマンがおり、より良い未来を紡ぎました。良い仲間に恵まれたと思います。


後日談を別シリーズとして書いているのですが、気長に待っていただけると嬉しいです。

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