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第三夜

黒歴史を自分で暴露してる様なもの、なので詳しくは語りません。そっぽ向いて「あー」とか言って全力で現実逃避したい心境です。



抗体とか血清の話は正式に医学を学んだ訳では無いので、突っ込まれても困るのでフィクションという事で流して貰えるとありがたいです。

 ━━━━━━ 前回あらすじ ━━━━━━━


 先行するラクリマを追いかけ何者かが封じられたダンジョンへと足を踏み入れた伊達たちを待ち受けていたのは大量に沸いたアンデットエネミーたちだった。不自然なほどに湧き続ける原因。強力な魔力の渦を解除するとともに、ダンジョンの最奥へと踏み入れた伊達たちを待っていたのは・・・

 血を抜き取られミイラになった家畜たちだけが転がる 無人の空間であった。調べられるだけのことを調べ、急ぎダンジョンを出た君たちを呼び止める声。この依頼を伊達たちに紹介した男の姿がそこにはあった。

 再び告げられる驚愕の事実や現在の状況、村が危険だ!

 新たに得た情報そして依頼を胸に伊達たちは夜の森を走る。たどり着いた村では宵闇より溶け出るように現れたアンデットたちが闊歩し逃げ回る大地人の声が響き渡る地獄絵図であった・・・


 さぁ冒険者よ 今宵の恐怖劇を始めよう


 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


 伊達たちは森を駆け抜ける、道の先の里からは絶えず悲鳴と戦闘音が鳴り響く

「はっ……はっ……はっ……はっ――――!!」

 焦る気持ちと過去の精神的外傷<トラウマ>を刺激されたのか過呼吸気味の伊達。

「全く雑な仕事しやがって。どこが避難誘導してるって?」

 まったく進んでいない大地人の避難に怒り心頭のキリー。その近くでカエデが泣きそうな表情で先を急ぐ。

「そう言った知識のあるやつなんてほんの一握りだろ」

 ぶつくさと文句を言うキリーをなだめるラクリマ。XQもこの先に何があるかを知るために無言で先を急ぐ。

「ここまでになったら、DDDでも黒剣でも使って被害を食い止めろって・・・。裏でこそこそする割には詰めが甘い」

 キリーは文句でも言ってないとやってられないと言う様な感じながらも先を急ぐ。ラクリマは全員の表情を確認して、

「(…トラウマがありそうなのは伊達とカエデだけのようだな。この先を見て取り乱さなければいいが……)」

と内心ため息をつく。

「動くなら最初っからそうしているだろう」

 ラクリマはキリーの文句にやや呆れた風を装って対応する。それによって伊達とカエデの気がそがれ、取り乱すのを防いでいるのを気づいたからだ。

『こちらも手が足りてないのでね。そのまままっすぐ裏からはいってくれたまえ。表側には2 PT冒険者を回したがそちらへまで到達できていない』

 キリーの文句を聞いているかどうかは分からないが、ザインが絶妙なタイミングで念話で指示がくる。

「(カエデが泣きそうになってるぞ。冷静になれよ伊達龍之介……!大丈夫だ、まだ間に合う―――)」

キリーの思惑がどうであれ、少し周りの状況を見る余裕が出来た伊達はカエデの様子に気付き自分に言い聞かせる。

「(またあのような犠牲を・・・出したくないのに・・・ごめんなさいごめんなさいごめんなさい・・・)」

 精神的外傷<トラウマ>刺激され、自分をさらに追い詰めるカエデ。

「手が足りてないと言うより、普段の行動の所為で人徳がなくなってる所為だろうよ」

 ザインからの指示を受け、キリーは辛らつにはき捨てる。

『それに今DDDの主力や他にもいくつかの戦闘ギルドはゴブリン討伐遠征で動かせないというのもまた事実だよ』(11月ですゆえ!)

「最善はそうそう得られん。後手に回っていると、自分で言っていただろうキリー。無い手の話はいい。で、私たちはこのまま進めばいいのか?ザイン」

「姐さん、これ以上ザインに文句垂れても仕方ねえ。やれることをやろう」

『あぁ、そのまま村を突き抜け村の前方にある洋館へと突入をしたまえ』

「気持ちはわかりますが。…先に急いだほうがよいですわね」

 ザインの状況説明にラクリマ、伊達とXQがキリーを窘める。

「とりあえず、感染してない大地人の非難が最優先だな」

 キリーは憮然とした表情をしながらも方針を固提案し、伊達が持ち直した事に内心ホッとする。

『村人は北東にセーフポイントを形成しすでにそちらへの誘導も始まっている。現在4割といったところか』

「分かった。洋館へ進みつつ、大地人の避難もできるだけしよう」

 ザインから避難の進捗情報にラクリマは方針を固めていく。

「皆さん、無事でいてくれるといいのですが・・・。」

 カエデは悲鳴が聞こえる方を気にしながら、つぶやく。

「一刻も早く大元を叩いた方が良いのではなくて?」

「…後ろに気を向けて勝てる相手とも思えない。多少は、こっちもくみ取るべきだろう」 

 XQの言葉にラクリマはちらっと伊達さんとかカエデさんをみてため息をつく。

『道中で感染した血液か肉を手に入れ、抗体をつくる。出来るまでおよそ一時間程度かかるだろう。後で取りに来い』

 キリーは心底忌々しそうに言い捨てる。大地人の為にわざと感染してから抗体を作るので正直命がけになるだろう。抗血清は自ら感染物(毒物)を取り込み抗体を作り、その抗体と魔力から作るもの。(素人なりの考察ですから間違ってたらごめんなさい。まぁ、フィクションという事で)

『了解した あとで使いを回すよ』

 ザインは念話で了承する。

「・・・。そうね。ありがとう、ラクリマさん。どうも、気が逸っているようですわ・・・」

「無理もない。今気づければ上々だ」

 XQは二人の様子を見てハッとする。ラクリマは仕方ない状況だと苦笑する。その様子を伊達は無言で見ていた。

 獣道を抜けその視界に捉えた光景は……

 平和だった村は……。いや村だったところにはグールたちが闊歩し、いくつかの家は倒壊しているのが目に入る。

「ひぃっぃ。なんなんだこいつらわぁ」

「あ、あんたら冒険者なんだろ?たっ助けてくれぇ〜」

 グールに追われ逃げ惑う村人たちは伊達たちに気づくと助けを求めてきた。

「今助けますわっ」

 XQは《ガストステップ》で急加速、襲い来る屍食鬼に接近する。

「あ、はい!今助けますから!」

 村人に障壁を飛ばそうと手を向けるカエデ。

「行くぞみんなァァッ!!!―――<アンカーハウル>ゥゥッ!!!」

 伊達はヘイトを稼ぎグールを自分に引き寄せようとする。

「うぅぅぅぐぅう」

 不死者たちが伊達たちに気がつき襲いかかってくる。

「1体だけ出来るだけ、無傷で確保してくれ」

「了解ッ!」

 キリーの要請に伊達は応えるともに皆は村へと飛び込んだ。まだ村には逃げ遅れているものたちもいるようだ。

「私たちは今からグール掃討に向かう。お前は北東へ迎え。そこに、他の冒険者たちが居る」

 ラクリマは助けられた大地人の腕をつかみ立たせ避難先を指示する。

「カエデ、落ち着くんだっ!まずは明かりをッ!!」

「・・・・え?あ、灯ですね、はい・・・。」

 伊達の指示にカエデはきょとんとしながらも応え、周囲に蛍型の式神を呼び出して光源を確保し、その式神を操って村人達の誘導しだした。

「グールの数が多いですわ。……ッ、この光はカエデさんの?」

 グールの多さに辟易しているXQは明るい光を灯す式神に驚く。

「(存外、伊達の方は落ち着いているな)」

「(ほう、さすが義兄妹だというだけあるな。扱いを心得てる。恐慌状態に陥られるよりはいい)」

 ラクリマとキリーは伊達が思っていたよりも冷静な判断をし、カエデを上手く誘導している事に感心する。


 ◆伊達龍之介(ヘイト1)


 悲鳴が響く、目の前では今にも襲われようとしている大地人に迫るグール・・・。カエデは村人を守るために障壁を張る。キリーはグールに襲われている大地人の下にゾンビを生み出すプロップがあるのを見つけて解除しながら自分に注意を引き付けるための牽制すると、グールの視線が大地人から移る。


 ◆キリー(ヘイト1・疲労カウンター1)


「こいつの相手は私がするから、皆は大地人の救援に向かってくれ」

「そうさせてもらおう」

「ええ そちらはお任せしますわ」

 キリーはグールを引き付けると言い、ラクリマとXQは先を急ぐ。

「冒険者だ!救援に来た、もう大丈夫だ。仲間がグールの気を引き付けているうちに、こっちにゆっくりとこい」 

 ラクリマは知識にある堂々とした高山三佐を思い出し,意識して振舞う。

「わ、わかった。あんたたちが守ってくれるんだよな?なぁ?」

「ああ、そうだ。私が保護する。問題ない」 ラクリマは村人から目をそらさず、ゆっくりと話す。

「助かった。わかったあんたたちの指示に従うよ。おれはどうすればいい?」

 恐怖から動けなかった村人は逃げるために指示を仰いだ。


 ◆村人3〔負傷〕〔恐怖〕タグの除去

 ◆ラクリマ(疲労カウンター+1)


「人が多すぎますわ…仕方ありません、ここは移動を優先しましょう。ちょっと失礼しますわね…」

 XQはカエデさんをお姫様だっこして、

「龍之介さんも、付いて来て下さいっ」

 誘導するように広場へと駆ける

「あいよっ!行くぜカエデっ!」

「え?あ、私は・・・!」

 伊達は同意し、XQを追うように駆ける。攫われる様に抱えられ困惑する。

「後ろから、後ろから化物がぁ〜」

「助けに来たわ。もう大丈夫よ」

「冒険者さま・・私はどちらに逃げれば・・・」

「あちらに私の仲間がいるわ。そこから脱出できるの」

「急ぐんだ!」

 XQと伊達の言葉に村人は視線をXQに指差すキリーの方へと向ける。

「後は後ろを振り返らず、全力で逃げて頂戴」

「はい。みなさんも気をつけて・・・」

 村人が礼を言って走り去っていく。

「こっちが出口だ、早く逃げろ」

「・・・どうか、どうか・・・。」

「はい。外に・・・助かるんだ。助かるんだ私・・・」

 キリーはグールを引き寄せながらも、村人に出口を示す。カエデはXQの腕の中で無事に脱出して欲しいと祈る様につぶやく。


 ◆XQ(疲労カウンター+1)


「ここからは散開して各自対応を。ここは任せたぜ、XQっ!」

「ええ。任されたわ」

 伊達の指示にXQは了承し、抱えていたカエデを下ろす。

「はい・・・。」

 伊達龍之介は小さく返事する不安そうなカエデをちらりと見やる。

「なぁ、カエデ」

「あ、はい、何でしょう?兄上様?」

「きっと、大地人のみんな、助かった後はすげえ腹減らせてると思うんだ。これが終わったら、みんなにメシ作ってやってくれよ」

「・・・・・ふふふ、そう、ですね。頑張らせていただきます。ありがとうございます、兄上様」

「へへっ、だからこの場は頑張んねーとなっ」

「はい!」

 伊達の思わぬ提案にカエデは自分が出来る事を見出す。

「大丈夫になるおまじないです。皆さんは私たちが守ります」

 カエデは魔法で応急処置を施すと、大丈夫だよという様に微笑む。


 ◆村人1(ヘイト-2・疲労カウンター-2)〔負傷〕タグ除去

 ◆カエデ(ヘイト4・因果-1)


 伊達龍之介は〈ガーランド〉のコッキングレバーを引いて屋を再装填。少女の悲鳴が聞こえた先へ走る。途中、1時方向に見えた弓を持ったグールが目に止まる。

「ちっ…!」

 舌打ちして、バッグから弁当のゴミを取り出して投げつける。

「おら、お前の相手はこっちだ!」

 伊達龍之介は撃ち返してきたグールの矢を飛び込み前転で回避。そのまま角の部屋にいるグールに銃口を向けトリガーを引いた。

「ギャァァァ」

 眉間を撃ち抜かれ、断末魔の声を上げながらグールは崩れ落ちる。


 ◆伊達龍之介(ヘイト2・因果-1・疲労カウンター1)


 グールは村人4へ弓をいかけ負傷させる。


 ◆村人4(ヘイト-1)〔負傷〕タグを得る


 グール2は本能のままにカエデを襲い、傷つける。


 ◆カエデ(ヘイト3・疲労カウンター6)


 グール3と6は獲物を襲うために移動する。

 グール4は先ほどから目の前に立ちふさがる女が・・・。動きがうっとおしい、こちらの闘争本能を刺激してくる

「くるなら来いよ」

 キリーは不適に笑い、グール4を挑発する。

「がぁぁぁぁ」

 グールは地を蹴り近づき、キリーの腕に齧り付く。篭手に阻まれながらも牙が柔肌を貫く、滴る血の味に酔いしれながらさらなる欲を満たすべくキリーの前に立ちふさがる。

 傷口から感染型の毒が入ったのが傷口の色が壊死したような色に変化したことで分かった。抗体を作るには感染しないといけないので、事前に抵抗力を下げておいたのだ。

「くぅっ、これでいい。すまないね。抗体ができるまでには時間が少々かかるんだ・・・」

 痛みに眉を寄せたキリーは目の前のグールを助けられない事を謝る。


 ◆キリー(ヘイト0・疲労2)


 カエデは障壁を伊達に張り、伊達はアンカーハウルでヘイトを稼ぐ。


 ◆伊達龍之介(ヘイト3)


「…クソッ(見ていて気分のいいものじゃない)」

 ラクリマはキリーの様子がちらりと見えてしまい、思わず悪態をつきながら目を逸らす。

「悪いな、ラクリマ。気味の悪いものを見せてしまって」

「…お前が謝るようなことじゃない。私も、止めなかったからな。それにこれは私の感情の問題だ。お前に非はない」

「冒険者用のなら、ここまではしないのだが、大地人用だからな。念入りに作らないと、いけないんでね」

 キリーはラクリマに苦笑しながら謝る。毒の影響で少々顔色が悪く、息が荒くなっている。

「キリーさん…。申し訳ありませんが、もうひと踏ん張り頼みますわ」

 キリーはXQの励ましに頷き、毒に侵されてるとは思えぬ程の動きでグール4を撃破する。


 ◆キリー(ヘイト1・因果-1・疲労カウンター2)


「っ、お前はこっちにこい!いいな!!」

 ラクリマは村人3に声をかける。

「はい。分かりました。村をよろしくお願いします」

 村人3は礼を言う。ラクリマはリアル知識で村人6の怪我を簡単に処置する。

「回復魔法じゃないからな…外に出て、他の冒険者に治してもらえ。いいな」

 村人に目線を合わせて念を押す。


 ◆村人3(ヘイト-2・疲労カウンター-2)〔負傷〕〔恐怖〕タグ除去


「カエデさん!今助けにいきますわ」

「XQさん、お願いします!」

 XQはカエデの方に駆け寄り、横薙ぎに振り払う一閃がグールの首を跳ねる。


 ◆XQ(ヘイト1・疲労カウンター1)


「カエデさんの力が必要です。お願いします。」

「はい!」

 XQに応える様にカエデの放った魔法がグールを貫いた。


 ◆カエデ(ヘイト3・疲労カウンター1・因果-1)


 伊達龍之介はグールの頭を狙い撃ち、撃破する。


 ◆伊達龍之介(ヘイト4・疲労カウンター2)


 グール7が伊達に、6がカエデに襲いかかり、少々手傷を負う。


 ◆伊達龍之介(ヘイト3・疲労8)

 ◆カエデ(ヘイト2・疲労6)


 カエデはXQに障壁を張り、伊達はアンカー ヘイトハウルでヘイトを稼ぐ。


 ◆伊達龍之介(ヘイト4)


「…時間切れか」

 ラクリマはザインからの情報を貰い、PT念話<チャット>を起動させる。

『ザインから連絡がきた。これ以上長引けば外の包囲網も突破されるそうだ。各自ボス撃破に切り替えろ』

『まだ、やれることはあるはずですわ…』

『もう時間切れだ。ザインが用意した冒険者達だって、Lv 90 じゃないんだ』

 XQは避難先に向かう途中の村人たちを見ながら抗議するが、ラクリマは取り合わない。

『くっ…!』

 伊達は悔しさに歯噛みする。

『増援の指示はすでに出している こちらは任せてさっさと首を打ち取りたまえ』

 ザインが後は引き継ぐと念話で伝える。

 キリーは村人2に応急処置を施すと、傷の痛みが消えて、勇気づけられる。

「これが・・・冒険者!」

「いいから脱出しろ」

「はい! でもどこへ・・・」

 痛みと恐怖で萎縮していた村人2はキリーを呆然と見つめる。キリーは村人2を叱咤し、ラクリマの方を指す。

「ありがとうございます」

 村人2は礼を言って走り出す。

『だそうだ。どのみちボスを撃破しなければ意味がない』

『そんな・・・!見捨てるなんて・・・!!』

『後を任せるんだ。カエデ、他の冒険者を信じろ』

『…わかりましてよ。カエデさん、辛いだろうけど…ここを切り抜けましょう』

『いやです!頑張るって決めたんです!私は最後まで・・・・・・・!!!』

『これが最後だ。これ以上はMPも消費するな。ボス戦で、兄を危険な目に合わす気か?』

ザインからの増援に後は任せるべきだとラクリマはカエデに叱るような声色で言うが、納得いかないカエデは食い下がる。

『いいえ。私たちのやるべき事はこの先にあるんですの。レイドボスを倒さねば、この悲劇は終わらない』

 XQも気持ちは分かるけどと、カエデを説得する。

 ラクリマは村人6を避難先に誘導する。

「先ほどは助けてくださりありがとうございました。」

「礼はいい。このまま外に進め。他の冒険者たちがいる」

「この恩はけっして決してわすれません」

「いいから早く行け」

「はい。お気をつけて」

「お前もな」

 丁寧に礼を言う村人6にキリーは避難を急かし、顔色は青いまま。何事もないような表情で見送る。ラクリマは出ていくのを見届けると、奥に視線を向ける。


 ◆ラクリマ(疲労カウンター1)


「道は開けるわ。だからお願い、カエデさん」

 XQはカエデの説得しながら、目の前の敵を一刀のもとに斬り伏せる。


 ◆XQ(ヘイト2・疲労カウンター2・因果-1)


『でもここで頑張れば大地人の人達だってもっと・・・!』

『この後のボスはどうする。大地人全員を助けたとき、私たちのMPやHPはどうなっている?カエデ、目の前だけじゃない。見えないところにも大地人はいて、大本に対処できるのは私たちだけだ。目の前だけに囚われるな』

『・・・・・・・・・分かりました。』

 なおも食い下がるカエデにラクリマは叱責する。

「動けさえすれば助かる希望はある」

 伊達の応急処置した上での、励ましは村人4を勇気づけた。

「いいか、俺が出来るのはここまでだ。何としてでも生き延びてくれ・・・!」

 伊達の祈る様な言葉に村人4は深く頷いた。


 ◆村人4(ヘイト-2・疲労カウンター-2)〔負傷〕〔恐怖〕タグを除去


「兄上様に群がるな、0と1でしかない存在が・・・。覚悟決めました。もう迷いません」

 カエデはやるせない思いと苛立ちを、伊達の近くにいたグールにぶつける様に魔法で撃ち抜く。


 ◆カエデ(ヘイト3・疲労カウンター2・因果-2)


 キリーは無言でカエデを見ながら、内心、どうしてこうも極端に走るかなと呆れる。

「(迷いと一緒に切ってはいけない枷も切ってしまったのかもしれない・・・)」

 伊達も思わぬ方向に吹っ切れたカエデに内心焦る。

「ふっ、やればできるじゃない」

 XQはカエデがグールを撃破したのを素直に褒める。

 キリーやラクリマが村人たちの避難経路を確保しつつ、村に突撃した伊達やカエデ、XQたちがグールを確個撃破して村人たちを救出していった。

『…伊達、悪いが終わった後カエデのフォローを頼む…』

『わかってる……気ぃ使わせてすまねぇな』

『私が追い詰めたからな。性分だ、お前が気にすることではないぞ。そう言うのは妹に向けてやれ』

 ラクリマは漏れ聞こえた声を聴いて伊達に個人念話でカエデを追い詰め過ぎたと詫び、フォローを頼む。

「皆様、どうなさいました?こんな有象無象ではなく大本を叩くのでしょう?早く参りましょう?」

「…ああ。すぐに向かう。行こうキリー」

「ああ、そうだな」

 カエデのあまりな吹っ切れ方にラクリマもキリーもどう対処していいか分からず、たじろいだ。


 ◆カエデ:(因果3)

 ◆ラクリマ:(疲労10・因果2)

 ◆XQ:(因果力3)

 ◆伊達龍之介:(疲労:18・因果3)

 ◆キリー: (因果2・疲労:8)


『各員に伝令。村正面およびセイフティーポイント周囲の安全の確保を確認した。各PTは先に出した指示に従い、そのまま警戒と敵の殲滅に尽くせ。またこれより1時間後アキバから援軍がくる それまで持たせるだけでいい』

『ザインさん、些事はいいです。目標の現在位置はお分かりですか?』

『1時間か……。とんでもなく長い1時間になりそうだな…!』

 ザインからの新たな指示にカエデは血走り、伊達はいろんな意味で嘆息する。

『そしてQRクインレッド小隊へ告ぐ。村の防衛および村人の救命から作戦を次のフェイズへと移行したまえ』

『了解』

 ラクリマは頭を数回振って意識を切り替える。

『なに高々1時間、村人を守る程度のことがこの私にできぬとでも?』

 伊達の嘆息にザインは不敵に言い放つ。

『エリアボスの撃破、ね。心得てますわよ』

 XQは得意気に言放つ。

 キリーは皆から少し離れたところで篭手を外し手早く傷口の手当てをし汗をぬぐう。

「あと少しといったところか・・・」

『キリーくん抗血清のほうは・・・どうかね』

『あと少ししたら熱も下がるから、抗体が出来たと看てもいいだろう。私の血を入れる容器と増血剤を用意しておいてくれ』

『了解した その件はこちらで手配しておこう』

 ザインはキリーに抗血清が作製可能かと尋ね、キリーは抗体は出来つつあるから、必要な薬と容器を届けてくれるように頼む。

『薬剤師達に渡し調合してもらえ、血液はそのまま飲ますと腹を下すからな。ちゃんと加工しろよ』

『さて君は私を誰だと思っているのだね?とびきり腕のいい”薬師”を手配しよう。伊達くんもお気に入りの薬を取り扱っているからね』

 キリーの忠告にザインは口角を上げつつ言う。

『効き目"だけ"はピカイチだからな……信用はするさ』

 伊達はザインの言葉にゲンナリした表情で言う。

『私自ら作ったほうが良いんだろうけどね・・・。討伐が優先だからな。もう、大丈夫だ。容器をよこせ』

『今使いの者を送った』

『おまえ自身が跳んだほうが早いだろうに』

 キリーは苦笑しながら言うと

『そうしたいのは山々ではあるのだがね』

 ザインはやる事が多過ぎて手が回らないと、肩をすくる。

 キリーは使いの者が持ってきた容器前に左手の篭手と手袋を外し短剣で左手首を掻っ切る。血の濃厚な匂いとその血に含まれる魔力に使いの者はたじろぐ。

「……rei坊っちゃんにゃあ見せられねえな」

「見世物じゃないよ・・・」

 伊達の言葉に呆れた感じでキリーは言う。

「キリーさんの尽力には感謝の言葉もありませんわ…」

 XQの感謝の言葉にキリーは反応する事もなく、容器の中に滴り落ちる血液を見ていた。血液が容器一杯になったら、さっと軟膏を塗り、止血をする。

「……ともあれカエデ、姐さんにヒールしてやってくれ」

「はい、キリーさん、手を・・・。」

 伊達はキリーが簡易止血したのを見て、カエデにヒールをかけるように指示し、キリーの左手首に手をかざし傷を癒す。

「急いで行け、こぼすなよ」

 キリーは使いの者を送り返す。

「止血は済んでるよ。だが、ありがとう。少々MPを使いすぎた・・・」

 キリーはカエデに礼を言うと力なく座り込む。

「時間がないっていうのに…仕方ない。私が運ぼう」

 ラクリマはキリーを横抱きしようと近づくと

「抱えるより水をくれ」

「生憎持ってないな。誰か持っているか」

「ポトフならありますが・・・。」

「黒薔薇茶ならまだ開けてないのが1本ある。あんま冷えてねえけど」

 キリーの意外な注文にラクリマとカエデはきょとんとしながら答え、伊達はマジックバックの中を確認して答える。

「大量の血を失ってるんだ、水分がたりないんだよ。冷えてないほうが今は助かる。もらうぞ伊達」

 キリーは手渡された黒薔薇茶を受け取ると一気に煽る。

「MP回復薬は持ってないか!」

 ラクリマは帰っていくザインの使いに声をかける。

「慌てるなよ、ラクリマ。こうなることは可能性がある事は分かっていたんだ。MP回復薬くらい持ってきてる」

「なら、いい。…悪い、多少動揺しているようだ」

「ただ、喉は渇いてるから。そこらの井戸から水汲んできてくれ」

「私が行って参りますわ」

「…伊達からもらった分があるだろう。いや、私がいく。XQは周りを見ていてくれ」

 キリーはザインの使いの者が持ってきた増血剤とカバンから何かの薬を取り出してから伊達貰ったお茶で飲み込む。ラクリマはらしくなく慌てた事を恥じ、XQの代わりに水を汲みに行った。

「全く、ラクリマさんはキリーさんの事となると心配性ですわね・・・。少し先を見て参りますわ。どうか無理せず付いて来てくださいまし」

「出血による貧血だからな。そこまで心配せんでもいいだろうに・・・」

 キリーは無茶したことを(活動限界のギリギリの量の血液を提起し、ショック症状を起こしかけてるのを)棚に上げて、心配するラクリマとXQに苦笑する。

「あとは・・・酒くらいしかねえか。こいつは全部終わったとき用だな」

 伊達は他にないかとマジックバックを漁っていたが酒しかなかったようだ。

「少し休めば落ち着くよ。(ただし、しばらくは慢性的な貧血に悩まされそうだけど)」

「この戦いが終わったらキリ―さんに鉄分を取ってもらわないといけませんわね…。そうね、焼き肉でも食べに行きましょうか?」

「持ってきたぞ…。何の話だ?」

 ラクリマは汲んできた水を片手に、焼肉だけ聞こえたんだがと聞きなおす。

「おう、終わったらパーっとやろうぜって話さ」

「そうだな」

「気が……まあ、そう言った話も必要か」

「キリーさんの努力には報酬があってしかるべきですわ。そうね、お代はザインさんに払ってもらいましょうか」

 伊達の説明にキリーは肯定し、ラクリマはボスも倒してないのにと思ったが、場を和ませるには良いかと思い直す。XQはニヤリと笑って、ザインに集る気満々だ。

「ザインのつけで大いに飲み食いしてやるかwww」

「それもいいな」 

 キリーは笑いながら言い、ラクリマも釣られて笑う。キリーは持ってきて貰った水をぐびぐびと飲み干した。

「そいつぁ最高だ。後でカエデにも教えてやるか」

「カエデはどこに」

「木陰で休んでる。もう少ししたら突入開始だしな」

「そうか」

 伊達は皆の提案に黒く笑う。ザインに煮え湯を飲まされたらしく、仕返しがしたいらしい。ラクリマはこの場に居ないカエデを気にし、伊達に尋ねる。カエデは木陰で心ここに在らずといった状態で座っているようだ。

「ふぅ~、全快とはいかないが、MPは回復したからそろそろ行くか」

 水分を補給し、増血剤等の薬とMP回復薬で無理矢理戦闘可能な状態までにしたキリーはゆっくりと立ち上がり、皆を見渡しボスがいる洋館に突入を促す。


 キリーからグール感染症の抗体がある血液がもたらされる。その血液がセーフポイントに届けられるころ、QR小隊は大きな屋敷の前にたどり着いた。そびえ立つといった形容がふさわしい建物は重厚な造りで伊達たちを威圧するかのようにその場にあった。


 君たちが挑むべき倒すべき敵はここにいるのだろうか・・・




次の第四夜で最終章です。文書量的に分割して投稿するかもしれません。

次の投稿は2週間後に予定してます。

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