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第二夜

 ━━━━━ イントロダクション ━━━━


 君たちが月見の里へと訪れる数日前、薄暗い洞窟の中を一人の少女が歩いて行く。歩き慣れた様子でペースを保ちながらゆっくりと進む その手に持つ燭台のロウソクがゆらゆらと炎を揺らす。そんな中で少女は、ふと思いを馳せる。

 少女は生まれつき体が弱く、小さなころは出歩くこともままならずよくとこに伏せていた。そんな少女が興味を示すものといえば本というのが相場であろう。少女は中でも冒険譚に、心をトキメかせた。まだ見ぬ風景や金銀財宝、そしてかっこいい勇者さま自分がお姫さまなどという夢は見れない程度に聡明だった少女は魔法使いを目指してみようとした。幸い実家には多数の蔵書がありその中には魔法に関するものもあった。しかし、そんな思いも打ち砕かれた。彼女には魔法の才能がなかったのだ。いや正確には隠れるや存在を消すといった地味な魔法にしか適正がなく、彼女の憧れるような強敵を打ち倒すような力を手に入れることは到底不可能だということだけがわかった。

 そのような現実に落胆していた少女に一つ目の転機が訪れる。妹ができたのだ。自分より下の面倒を見ないといけない存在ができることは彼女にとって大きな意味を持った。この子に恥じない姉であろう。そう強く思い習い事や仕事の手伝いにできるかぎりではあるが力を尽くした。しかし生来の身体の弱さが邪魔をして覚えるのは遅々としたものであった。

 そして幾年かが過ぎた。妹の模範であろうとした姉の努力は実り着実に学を収め仕事を覚えていった・・・が、それをあざ笑うかのような速度で妹は次々と学び覚え自らのモノへと変えていった。両親や周りの者たちの視線の先が妹へと移るのにさほど時間は掛からなかった。器量よく勤勉でなにより健康的な活気をもった妹は誰からも愛された。正直に言おう妹が妬ましかった。病弱なこの身体が憎かった。それでもいい魔法の才能があればどこへだって行けたかもしれない。何もない、自分がなにより情けなかった。

 鬱屈した日々の中で唯一の心の拠り所は、身体の調子がいい時に訪れる裏の祠であった。誰も人の来ないこの場所は、一人涙するのにうってつけの場所であった。そうでなくてもここに来ればなぜか心が落ち着くのだった。

 少女はある日裏の祠に何が祀ってあるのか気になり調べることにした。それが二度目の少女の転機でとなってしまう。ある日のことであった。家の古い蔵を探し見つけ出したのは一冊の書と対に置かれた一枚の絵画だった。絵を見た瞬間に心が奪われたかと思った。ほかの全てが目に入らなくなりただ呆然と小一時間はその絵と見つめ合っていたであろうか、不意に意識を取り戻した少女は慌てて書を読み解き彼の存在を知った。弱い体に鞭打って祠の裏の洞窟の奥へと踏み入れその奥にいた彼と再開した。

 その日から彼女の人生は変わった。そっと手を伸ばしその頬に触れるとひんやり冷たくしかし絹のように柔らかな手触りが帰ってくる。手に持って来た供物を彼に捧げると彼の心臓がとくんっと脈打つのがわかった。それからの行動は、迅速だった。体力に余裕があるときは隠匿魔法で姿を隠し欠かさず彼の元へアレを届けに通った。なぜアレで彼が蘇るのかなどはまるで魂に刻まれていたかのように思い浮かんだ。

 プログラムされているかのように彼のもとへ通うのを繰り返す徐々に強まる鼓動に色づく唇に思いを馳せながら今日もまたこの洞窟を歩く・・・


 ___________________________


  君たちが向かう祠で見つけるものとは一体……

        冒険者たちよ

      今宵の英雄譚を始めよう

       剣をかかげ弓をもて

       その力を示すのだ



「はぁ…っ、ここか」 

 ラクリマが話に聞いた祠へとたどり着き、辺りを見渡す。祠のステデータには新月へを迎窟というダンジョン情報が見える。

「ダンジョン…封印された存在は、奥か(大地人は……)」

 祠の周りの植物も見渡して人が踏み入った様子はないか調べると、同じ種類の足跡が何度も通った跡がある。しかも、祠と村を行き来するように、辺りにはいくつかの足跡が残されている。「(…これが初めてというわけではないという事か)」と思い、さらに調べると祠の片隅に人が一人通れるような岩穴があいているのが見えた。「(ここで引き返しては意味がない、か)」とPT念話(チャット)起動する。

『祠にダンジョンがあった。そこに長女が何度か出入りしている痕跡もあった。お前たちも祠に来たら、ダンジョンの中に入ってくれ』

『ひとり先行しては駄目ですよ…と言っても聞き入れてはくれませんわね』

『もうすでに大地人は入って行ってるからな。あまり時間はかけたくない』

『こちらの準備も終わりました。急いでそちらに向かいますわ』

 ラクリマからの練習にXQは止めようとしたが、無駄だと思い直しため息をつき、進むスピードを上げていった。

『くれぐれも無茶はするなよ』

 キリーは最悪の場合は――するつもりの彼女を止めることは出来ないが、いろいろと無理無茶を無自覚でやるので心配していた。

『待って下さい、私たちももう少しで着きますから…!』

『了解、こっちもすぐに行くからな』

『ああ』

 カエデの止める声をさえぎり伊達は了承する。ラクリマはカエデの言葉にはあえて答えず、ダンジョン内部に進んでいく。内部は岩盤で構成された自然系洞窟タイプのダンジョンがそこには見えた。特にエネミーの姿は見当たらない、警戒しつつ進んでいく。

「…」

 そのまま身を滑り込ませダンジョン内部を調べていくラクリマが曲がり角をいくつか過ぎたときだった。次の角を曲がろうと近づいたとき角の向こう側からカタカタカタっとなにかが蠢く音が聞こえてくる「(お約束通りなら、最悪な状況だな)」立ち止まり息を潜めた次の瞬間、角の向こう側から乳白色の骸骨がそれぞれ手に剣や弓を持ち現れる。

「チッ」

 思わず舌打ちしてしまうが、|手早くタルトをポトフで流し込む様に食べ、エネミーの数を把握する《戦闘準備を終わらせる》。


 ◆ラクリマはベリーのタルトと季節の野菜ポトフを食べて疲労30回復


『こちらは洞窟内に入りました、ラクリマさん、現在位置は!?』

 これから戦闘開始かという時にPT念話(チャット)がカエデからはいる。

『奥から嫌の音がするな・・・急ごう』

 キリーはラクリマがエネミーと遭遇(エンカウント)してるのに気が付くと足早に移動する。

『…曲がり角を幾つか進んだところだ。戦闘音が聞こえだしたら、近いだろうな』

 ラクリマはだいたいの現在地を伝える。

『音が聞こえましたわ、あちらじゃないかしらっ』

 XQは走りだす。日頃から戦場を駆けまわる《フェンサースタイル》、急速移動の《ガストステップ》を使って音の鳴る方へ進む。

『エネミーはスケルトン系。準備しておけ』

 ラクリマはXQが近づいて来るのを感じ取り、エネミー種を皆に報告する。

「見つけましたわっ。さぁ、私も混ぜてもらいますわよ、ラクリマさん」

 XQはベリーのタルトを飲み込み疲労を回復した後、武器を構える。


 ◆XQはベリーのタルト1個食べ、疲労20回復。


『数も把握した。九体だ』

 XQの合流に苦笑しながら、数も報告するラクリマ。

「ふん。今度は勝たせてもらうぞ」

 XQがきたことで他のメンバーもすぐ来ると判断し、回避に専念していた構えを変える。

「《タイガー・スタンス》!!」

 ラクリマは雄叫びのように叫びながら攻撃的な構えに切り替える。

「やれやれ、みんなせっかちなんだからなぁもう」

 伊達は器用に移動中に|ベリーのタルト《にんにくたっぷりのスタミナ丼弁当》を食べながら、のんきに登場。


 ◆伊達は|ベリーのタルト《にんにくたっぷりスタミナ丼弁当》を1個食べ疲労20回復


「ラクリマさんにはまだ障壁が張れません…兄上様、お願いいたします!」


 ◆カエデは伊達に48点の障壁を付与


「ヘイトはさほど上げていない。さっさと塗り替えろ、伊達」

 カエデは障壁を伊達に張りながら伊達に注意を促し、それにラクリマが応える。

「お前はのんき過ぎないか・・・」

 キリーは疲労回復のためにベリーのタルトをコーヒー(季節の野菜のポトフ)で流し込みながら伊達の方を見る。


 ◆キリーはベリーのタルト2個と季節の野菜のポトフ(コーヒー)を食べて疲労50回復


「むぐむぐ・・・ごっくん。げふぅ……あいよっ、〈ガーランド〉の威力、ここで試させてもらうぜ!」

「行儀が悪いぞ、伊達」

 キリーは伊達のゲップに眉をひそめつつ武器を構える。

「優しきを衆生に照らす灯よ、おいでませ……」

 カエデが祈りをささげると蛍が現れ周囲を明るく照らします。

「敵さんは沢山ですわねぇ…斬りがいがありますわぁ」

 XQは鞘から真紅に輝く愛刀を抜き出し、突き付ける。

「しかし、相手はスケルトンか・・・」

 伊達はボウガン(ガーランド)の的にしにくいエネミーなのでげんなりした。

「XQ・・・先走りしすぎてこの間のにの前にはならんようにな」

「大丈夫ですわ、キリーさん。優秀な守護戦士さんと武闘家さんがいらっしゃいますもの」

 キリーの注意にXQは頼りになるタンクがいるから大丈夫だと豪語する。

「ん?そこの地盤がゆるいぞ、気つけろ!」

 キリーがその卓越した知覚力で戦場を掌握する。足元の緩みや壁の状態などどこが主戦場にするのに適しているか、そしてどこが危険かを次々と指示をだす。

「了解」

「分かりました!」

「助かりますわ」

 キリーの指示にラクリマ、カエデとXQは了承する。ラクリマとXQはハイ・スケルトンアサルトとハイ・スケルトン識別をして、伊達はアンカーハウルでヘイトを稼ぐ。


 ◆XQは因果力1使用

 ◆伊達龍之介(ヘイト1・軽減3点)


 カエデは御霊の守護でヘイトを0にした禊の障壁をかける。


 ◆カエデはラクリマに48点障壁を付与(ヘイト0)


「助かる」

「私ができる唯一のことですから、頑張ります」

「十分だ」

 ラクリマは障壁を張ってくれたカエデに短く礼を言うとカエデは出来る事をやるまでと微笑み、ラクリマはそれに頷く。

 キリーが双剣を振るう。距離を詰められたことに気づくこともなくハイスケルトンは飛び散った白骨がそのまま粒子へと変わっていった。


 ◆キリー(ヘイト4)


「肩慣らしにもならないな・・・」

「近場にいないとはいえ…無茶をする」

 キリーはあっさりと飛び散ったハイスケルトンに不満をもらしたが、ラクリマはタンク職を上回るヘイトを稼いだキリーに呆れる。

「この程度で如何こうなってたら黒剣なんていられないが」

「まあ、それもそうだな」

 苦笑しながら言うキリーに同意してしまうラクリマ。彼女の激しい蹴りに防具と片腕を持って行かれながらも、まだ抵抗の意思を消すことのない眼光がラクリマを捉える。


 ◆ラクリマは[追撃:10]を2個付与 ワイバーンキックを使用で追撃1個起動 (ヘイト3)


「XQ!仕込みはすんだ、いつでもこい!」

「感謝しますわ、ラクリマさん!ではXQ,駆けてまいります」

 ラクリマの言葉にXQは礼を言いながら疾風のごとく駆け抜けるさまに斬り付ける。

「さあ、踊りなさい……《ステルスブレイド》!」


 ◆XQは[追撃:10]起動 (ヘイト2)


 XQの斬撃がラクリマが弱らせたスケルトンアーチャーに止めを刺す。

「上等」

「あなたの仕事の邪魔はしないわ。よろしくね」

 XQはラクリマにウィンクする。

「人のこと如何こう言う前に・・・このお嬢さん達の血の気の多さときたら」

 キリーは戦闘狂なラクリマとXQ(二人)に苦笑しながら伊達を見ながら言う。

「守らないと男が廃るな」

「いやまぁ、こういう手の女は相棒で慣れっこでさ」

「彼女は守られるより守る方だろうに」

 伊達は今更だろうという様に肩をすくめる。そんな伊達を見て、彼の相棒を知るキリーは彼女に同情したのだった。

 油断していたところに死角からハイ・スケルトンアサルトの双剣がラクリマとXQを襲う、ラクリマはXQを庇い、障壁が弾けダメージを負った。


 ◆ラクリマはロングレンジカバーを使用 (障壁 0・HP91・ヘイト2)


「こんなところに潜んでたとは!…ありがとう、ラクリマさん」

「問題ない」

 不意の攻撃に対処出来なかったXQは庇ってくれたラクリマに礼を言う。

 さらに別のハイ・スケルトンアサルトの双剣がキリーを襲う。見た目に依らない素早い動きでキリーに斬りかかったスケルトンはそのまま再び距離を取る。アウトレンジからの攻撃で削りきるつもりのようだ。


 ◆キリーはダメージを受ける(HP25・ヘイト3)


「ちっ、大丈夫か姐さんッ!」

「問題ないか、キリー」

「キリーさんっ」

 伊達、ラクリマとXQが叫ぶ。

「くっ、結構きくな・・・。まぁ、なんとかなりそうかな」

「キリーさん・・・!!!」

 油断していたところに不意打ちをくらい、深手を負うキリー。カエデはキリーが思わぬダメージを負った事に狼狽える。

「骸骨のくせして早いですわね!粉微塵にしてくれますわ…!」

「カエデ、姐さんのフォローを。あの足の早いのは俺が引き受ける…!」

「分かりました!兄上様、どうぞ御武運を!」

 XQはちょこまかと動くハイ・スケルトンアサルトに憤り、伊達は狼狽えるカエデに指示を出す。

「ちょいとお待ちなさいな―――《シャドウバインド》」

 XQはシャドウバインドでハイスケルトンアサルトを縛る。


 ◆XQは(ヘイト3)


 カエデは伊達の指示に従いキリーのヘイトを下げ障壁を付与する。


 ◆キリー(ヘイト0)

 ◆カエデはキリーに障壁24点の付与


「すまない、ありがとう」

 キリーはカエデに礼を言ってると、伊達龍之介が至近距離での照準が合わせにくいらしく

「くっそ、ボウガンは狙いがつけにぜ・・・!ならば!うおおおおお!!!」

 ハイスケルトンアサルトを台尻で直接殴るかかる。

「流石です、兄上様!」

 何故かカエデはうっとりしながら伊達を褒めらる。

「ボウガンの意味」

「なぁ・・・それ使い方違うだろ」

 ラクリマとキリーは間違ったボウガンの使い方に呆れ果てる。台尻で殴り飛ばされたハイスケルトンアサルトの頭蓋が粉砕しながらキリーの脇に転がり落ちる。首を失ったスケルトンアサルトの身体が次第に崩れ落ちる。キリーは転がってきた頭蓋を踏み潰した。

「うむ、悪くない威力だ」

「……まあ、使えるなら問題はないか」

 伊達の台詞にラクリマは頭を振って意識を切り替える。

「勿体無い使い方しやがって。固定してあるなら使いこなしてやるのに・・・」

 キリーはため息をつきながら呟く。

 ハイスケルトンアチャーが弓を番えると周囲から怨念が矢へと集いドス黒く染め上げる。

「!気を付けろ伊達!魔法だ!!」

 ラクリマは至近距離で確認したので、伊達に注意を喚起する。その一矢が伊達を貫いたが、カエデの張った障壁に阻まれた。

「ちっ、小賢しい技だぜ!ひゅぅ……カエデの障壁がなかったら危なかったぜ」

「兄上様の防御力があってこそです。流石兄上様です」

 ちょっと冷汗をかいた伊達はカエデを褒めると、彼女は伊達の実力があるからと謙遜する。


 ハイスケルトンアーチャーの弓がラクリマを狙い打つ。


 ◆ラクリマ(HP 31)


「チッ。かなり正確な腕だな」 

「並みのスケルトンとは違う、ってコトか・・・」

「だろうな」

 避けきれず矢が当たったラクリマは忌々しそうに言うと、伊達が敵の強さを上方修正する様な発言にキリーは同意する。

「ラクリマさん、大丈夫!?」

 矢を受けたのを眼前で見てしまったXQは心配して声をかける。

「ラクリマさん・・・!まだリキャストタイムが・・・!!」

「問題ない。この程度で狼狽えるな」

 カエデのおろおろした声にラクリマはこの程度の怪我大した事ないと叱咤する。

 一方、ハイスケルトンが伊達に攻撃し、伊達の障壁が弾けダメージを負った。


 ◆伊達龍之介(障壁 0・HP53)


 別のハイスケルトンがラクリマに攻撃したが、彼女は剣を避けざまに

「ハッ。遅い!」

 と首の骨をシャドウレスキックで折ると、遅れてハイスケルトンの身体が倒れ崩れる。


 ◆ラクリマ(因果 6・ヘイト 2)


 XQはハイスケルトンアサルトに忍び寄りそっと撃退する。

「散りなさい―――《スウィーパー》」


 ◆XQ (ヘイト 4)


 洞窟の奥に渦巻く魔力の吹出まりからハイスケルトンが湧き出してくる。

 ラクリマはハイスケルトンアーチャーの識別をし、カエデは御霊の守護からの禊の障壁をラクリマに張る


 ◆カエデはラクリマに障壁48付与


 キリーは駆け抜けざまに伊達に手傷を負わせたハイスケルトンの核を斬り裂いた。


 ◆キリー(ヘイト1)


「さすがはキリーさん、仕事をきっちりこなしますわ」

 XQの褒め言葉にキリーは

「こなさないと後が辛くなるんでね」

 そうつぶやくと同時に刃を振り抜いた。

「キリーさん、ありがとうございます、やはり頼りになります」

「っしゃ、助かるぜ姐さんっ!」

 カエデと伊達龍之介がそれぞれ礼を言う。

「XQ、こいつを頼むぞ」 

「お任せを」

 ラクリマがXQに指示を出すと、XQはハイスケルトン・アーチャーに向かい走る。

「”ブラッディレイド”…喰らい尽くしなさい」

 彼女の愛剣が風切り音とともに振り下ろされ、一拍後にズレるハイスケルトン・アーチャー

 の身体を見ることなく振り返った。


 ◆XQ(因果力3・ヘイト6)


「見事。これで動ける」

「路は開けた。後は頼むわね、ラクリマさん」


 ◆ラクリマ (ヘイト4)


 ラクリマはXQを褒めると駆け抜けて行く、XQはその姿を見送り、後を任せる。ラクリマはハイスケルトンにワイバーンキックを放ち撃破する。

「これで大分楽になるな」 

「流石ですわ」

 ラクリマはひと息つくとXQは健闘を讃える。

 伊達龍之介とカエデは奥に向かい、カエデはXQのヘイトを下げた。

「ありがとうカエデさん!」


 ◆XQ(ヘイト3)


 ハイスケルトン・アーチャーの攻撃が伊達龍之介に突き刺さる

「さすがはアキバの赤き守護戦士…。ようやくこの目で見ることができましたわ」

「へ、このくらい大したダメージじゃねぇぜ・・・!」

 XQのキラキラしい眼差しに強がった伊達は軽口を叩いてはいるがHPゲージはレッドソーンに入っている。


 ◆伊達龍之介(HP16)


 ラクリマはハイスケルトンに襲いかかれるが、シャドウレスキックで反撃する。

「ハッ!」

 首の骨が砕け、そのまま崩れ落ちる。


 ◆ラクリマ(ヘイト5)


 奥に渦巻く魔力の吹出まりからハイスケルトンが出現する。


 ◆カエデは伊達龍之介に障壁を48付与


 ハイスケルトン・アーチャーのHPゲージも3分の2ほどまでラクリマのワイバーンキックで削られ、次いでXQの斬撃が襲うが倒れず。まだここで落ちるわけにはいかないと、ハイスケルトン・アーチャーは渾身の力で立ち上がる。

「へぇ、中々やるのね?見なおしたわ」

「敵とはいえ、名手だな」

「はぁ、少々厄介だね。急ぎたいのにね」

 XQとラクリマはハイスケルトン・アーチャーに感心したように、キリーはしぶとさを、やや呆れ気味にコメントする。


 ◆XQ(ヘイト5)

 ◆ラクリマ(ヘイト7)


 伊達龍之介はハイスケルトン・アーチャーに近寄り大型のボウガン【量産採用試験型連装式突撃弩│<ガーランド> 】の引き金を引く。

「この距離まで近づけばさすがに当たるだろ・・・そらよっ!」

 伊達の放った矢が深々と突き刺さり、ハイスケルトン・アチャーは弾けとんだ

「聖銀弾だ。よく効くだろう?」

「流石兄上様です!」

「助かりましたわ、龍之介さん」

「弩砲にちょっと、そのボウガンの扱い習って来い・・・」

 至近距離からの射撃での命中でドヤ顔の伊達に、カエデとXQ褒め、キリーは呆れた表情でつぶやく。

「後は雑魚だけだな」

「時間が惜しいですわ。強行突破と参りましょう」

 ラクリマの言葉にXQは強引に突破を提案するなか、カエデはラクリマに障壁を貼り直すと同時に伊達のHPをヒールで回復させる。


 ◆カエデはラクリマに障壁24点付与 (ヘイト1)

 ◆伊達龍之介(HP58)

 ◆ラクリマ(障壁72)


 ハイスケルトンはラクリマに攻撃するが障壁で弾かれた。


 ◆ラクリマ(障壁14・ヘイト6・因果5)


 2体目のハイスケルトンがラクリマに攻撃しかけたが伊達龍之介のロングレンジカバーによって阻まれた

「くっ」

「無理すんなラクリマ!スイッチだ!」

「悪い、頼む!」

 無理をするラクリマを伊達は叱咤し、代わりに攻撃を受け止めたが、カエデに回復して貰ったとはいえかなりのダメージを負っている。


 ◆伊達龍之介(HP38)


 3体目ハイスケルトンは伊達達の方に移動して行き、キリーは疾風をまとうかのように駆け出した。XQは近くにいたハイスケルトンにそっと忍び寄って破壊する傍ら、カエデは伊達に障壁を張っていた。


 ◆カエデは障壁を伊達龍之介に障壁48付与

 ◆XQ(ヘイト6)


「全く変な魔力溜まりだ。片付けさせてもらおうか、ついでにそのスケルトンも」

 キリーが駆け抜ける速度のままにユニコーンジャンプで跳躍し前線を構築する仲間たちの頭上を飛び越え、スケルトンを生み出す魔力溜まりを自らの魔力で吹き飛ばし、落ちる勢いを利用してハイスケルトンを撃破した。


 ◆キリー(ヘイト5・因果-1)


「キリーさん落ちながら罠解除して敵撃破したんですの…!」

「見慣れているが…相変わらず、よく動く」

 XQとラクリマは鮮やかな手際に少々驚く。

「黒剣さんはやっぱりすごいですね」

「う~ん、あいつらと一緒にされるのは・・・・・・漢解除な連中ばかりだし」

「いいかカエデ、姐さんがすげえのは黒剣だからじゃねえ。主婦だからだ」

「伊達、それ何かが違う・・・」

「そうなのですか?黒剣さんはレイドもいっぱいされてるとお伺いしてたので、てっきり・・・そうですね、母は強し、ですよね!」

 キリーはカエデと伊達のセリフに少々ゲンナリ気味の表情になる。

「おい、戦闘中だぞ」

 ラクリマは皆を注意し、アサルトスタンスをとりワイバーンキックでハイスケルトンを撃破した。


 ◆ラクリマ(ヘイト8)


「助かりましたわラクリマさん。では、キリーさんに続きましょうか」

「頼んだぞ」

 XQは駆け出して魔力溜まりを解除した。

「造作も無いですわね」

「残り二体…どうにかなりそうだな」

「何も考えずに、また突っ込んだなXQ・・・」

「あら。キリーさんの行動を参考にさせてもらっただけですよ♪」

「判断としては悪くないだろう。無茶はしているが」

「かなりな」

 ハイスケルトンがすぐ傍に居る場所でやりきった表情のXQに、キリーは呆れた表情で注意し、ラクリマは褒めながらも苦笑ている。


 ◆伊達龍之介(因果4・ヘイト9)


 伊達龍之介は移動ざまにハイスケルトンを狙撃、核を見事打ち抜いた。

「うし、こいつの癖はだいたい分かってきた……狙い撃つぜぇ!」

 伊達が倒すのとほぼ同時刻XQのスウィーパーにより最後のスケルトンの命も絶たれた。辺りにはエネミーたちの気配はないが・・・、あからさまに異常としか言えない量のエネミーポップに不自然な魔力溜まり。この洞窟ではなにかが起こっているとしか言えない状況だ。

「厄介な足止めだったな。嫌な予感しかしないんだけど。どう思う」

「碌な事はないだろうよ。急ごう」

「本当に逃げた娘さんがここにいるのでしょうか…」

「嫌な予感ならハナからずっとしてるさ」

「確かに嫌な予感がしますわ。命が危ない、とかではなく別種の…」

 キリーの言葉にラクリマは肩をすくめ、XQは素朴な疑問を口にする。伊達は眉間にシワをよせぶっきらぼうに言うと、XQはそれに同意し、漠然とした思いを口にする。

「何度かここに来たことはあるようだ。今は居なくても、何か手がかりがあるはずだ」

「いると思います。でも、この不自然なまでのエネミーの数は・・・」

 ラクリマの言葉にカエデは│ミナの姉<セリア>の事を心配する。君たちが何かを感じ取りながらも進むしか情報を得るすべがないという現実が追い立てる。

「悩んでも仕方ありませんわね。皆さんの言うとおり、進みましょうか」

「そうですね、今度こそ、皆一緒に、進みましょう」

「…必要なければ、単独行動はとらない」

 XQの言葉にカエデは同意し、彼女の言葉にラクリマは肩をすくめてかえす。これ以上のエネミーと接敵する前にケリをつけるため更に奥へと足を進めた。


 君たちがしばしの間探索していくと、明らかにブロックが違うエリアへとたどり着く。

 壁が今までの天然の洞窟風の場所から人工的な石造りの小部屋へとたどり着いた・・・

 何かしらの魔力の残滓こそ感じるものの高まりなどは特に感じ取ることはないでしょう。


「……ここは」

「何でしょうね…。100年前にあったという城の一部、でしょうか」

「さぁな?」

「それにしては、場所が離れすぎていないか?」

 伊達の訝しげな言葉にXQは疑問を口にし、

 キリーは肩をすくめ、ラクリマは疑問に対しての不可解な点を指摘する。

 皆でその小部屋をくまなく探すと干からびミイラとなった鶏や子羊らしきものが出てくる。中には腐臭を放つものもある。

「案の定、そんなことだろうと思ったよ」

「これは…血が抜かれていますわね」

 キリーは家畜の成れの果てを見て、ため息をつき、XQは冷静に分析する。

「きゃあっ!!」

「盗まれた家畜ってのは・・・こいつで間違い無さそうだな」

 カエデは無惨な家畜の死骸に驚き悲鳴を上げ、伊達は村での情報から推測する。

「…なら大本がここにいたはずだ。今はどこに…」

「痕跡を探してみるか?」

 ラクリマの言葉にキリーは提案する。

 カエデは殺された家畜が安らかに天に召されるように祈る傍らでキリーが辺りを調べると明らかに地面の色が違う箇所に気が付く。

「ん?ここだけ色が違うな」

 その色違いの場所は大凡2M×60 cm四方くらいのサイズではないかと思われる。ここにはそのようなサイズのなにかがつい最近まで置かれていたのだろう・・・

「棺か何かあったんだな」

「……棺桶、か?」

「棺桶…ですわね」

 キリーの推測に伊達とXQが同様の事を考える。

「それより、隠し扉の類がないか調べたい。私が来る前に出ていたのなら、仕方がないが…」

 ラクリマは隠し扉の類が無いか調べるも、見当たらず。

「隠し扉の類はなし、か…チッ。遅かったという所か」

 忌々し気に舌打ちする。

 キリーは棺らしき物があった場所の周辺に靴跡を見つける。自然洞窟から踏み入れたため石畳の上にはいくつもの足跡がある。自分たちのものを除けば3種類のものが目立つ。しかし、その内1種類は途中から明らかに汚れのつき方が、なにか重たいものを運んだかのように変わっている。

「3種類あるな・・・他に何か居るようだ」

 キリーは足跡を見つけ、人数や状態などを推測するとラクリマは洞窟の外で見つけた足跡が同じものではないかと気付く。

「…外で確認できた足跡と似ているな。おそらく、この三種類とダンジョンの出入り口で確認できた物は同一だろう」

「ということはもうここにはいない・・・ここに潜伏している必要がなくなったということですか・・・?」

「もしそうならかなり拙いぜ・・・」

 ラクリマの言葉にカエデが推測した状況に伊達は焦る。

「隠し扉もない、ここにあったと思われるものもないとすると、ここにいた者はもう戻って来ませんわね」

 XQはやれやれ無駄足だったと肩をすくめる。

「協力者が居たのか・・・彼らがどこに向かったか追わないと。村に行かれたら大変なことになるぞ・・・」

 キリーは最悪の事態になりそうなので焦るが、現状ではこれ以上言えない事に歯噛みする。

「…少なくとも、私たちが来る前には、このダンジョンからは出ていたという事か」

 ラクリマはやるせなくつぶやく。

「どこかに隠れ潜んでいたか・・・」

 キリーは村に隠れていたのではないかと疑い、ため息と共にもらした。

「…ミナさんに報告するためにも一度村に戻る事を提案しますわ」

「ああ、戻ろう。長いは無用だ。とんだ無駄足だった…!」

「収穫はありましたわ。ここではないという収穫が」

 XQの提案にラクリマは同意し、来た道を急ぎ戻りだす。無駄足だったと嘆くラクリマに収穫はあったのだと、XQは慰める様に言う。

『…イベントは、進んでいると思うか?』

『う~ん、跡地に戻ってるとすれば・・・』

『ここで仕留めれば…と思ったが、そう簡単にはいかんか』

『初手から後手に回ってるからな。一応覚悟しておけよ』

『……はぁ。最後まで足掻くだけはしておく』

 ラクリマとキリーは出口まで急ぎ戻る間にほかのメンバーに聞こえない様に小声で念話する。


 急ぎ祠をあとにする。入る頃には夕焼けに染まっていた森もすっかり闇の中へと溶け込んでいる。ふと見上げると空には大きく輝く真円の”満月”が輝いている。

「月から来た…大いなるモノ……か」

 伊達は空を仰ぐ。

「何か・・・何かを・・・見落としているような・・・・・・。」

 カエデは何かがひっかかり考えこむ。

「満月・・・。村へ急ぐぞ」

 キリーは満月を見た途端、血相が変わり、急ぎ村に戻ろうとすると、何やら村の方が騒がしい。

「何やら騒がしいですわね…」

「急ごう。移動しながらでも話は出来る」 

 XQは村の様子がおかしい事に気付き、ラクリマは村に急ぎ戻ろうとした時に不意にザインの声が聞こえた。

「そのまま考えなしに村へと近づくのはやめておきたまえ」

「!」

「ザイン…さん?どうしてここに」

 伊達は驚いてザインを見て、XQは首を傾げる。

「ザイン」

「あ、ザインさん」

 ラクリマは踏み出した足を止め、カエデは不意現れたザインに驚く。

「状況が分かってるのなら報告してもらおうか?」

 キリーはザインを睨みつける。

「残念ながらタイムアップということだよ」

 ラクリマは息を深く吐き、伊達は無言でザインを見る。

「そうか・・・」

 キリーはため息と共にこぼした。

「”円卓会議”からの依頼の変更の報告だ」

「変更・・・ですか?」

 ザインの言葉にカエデは困惑し、ラクリマは何だと視線で促す。

「円卓…?」

 意外な言葉に伊達は戸惑う。

「円卓のギルドの一員である私には拒否権はないからな言えよ」

 キリーは苛立ちのままに先を促し、XQは口を挟むべきではないと察し動向を観察する。

「既に村のほうではボスエリアである洋館の確認および感染型グールの発生を確認している。幸いにして”偶然居このあたりのエリアに居合わせた”冒険者たちによって、救助活動や街道封鎖が行われているが」

「……つまり、タダの人探しじゃなかったってワケだな」

「…人探しさ。イベント前にキーである大地人を見つけれれば、私たちの方も完了していた」

 伊達の疑問にラクリマが答える。

「感染型か・・・。避難誘導はやったのか?」

「え?え?ボスエリア?感染型グール?な、なんなんですか?」

 キリーは伊達の事は置いといて、状況確認を優先し、カエデは事の展開について行けず困惑する。

「今現在も行っている・・・が所詮対処療法に過ぎない。根源をつぶしに行かないとこのエリア一帯、いやそれですめばいいがね?」

「……(ギリィッ」

 伊達は歯を食いしばりザインを睨む。

「感染型なら一時しのぎの予防薬なら作れんこともないが・・・」

 キリーは少し考えながら、つぶやく。

「今回は、ボスエリアに入れそうなのか」

「おそらくは侵入可能だ」

「物理的に建物に干渉が可能となった今の状態であれば」

「なるほど…。正規手段である必要はないという事か」

「一番原始的で手っ取り早いやり方だね」

 話においてけぼりの3人をよそにラクリマとザイン(円卓会議関係者)による会話が進む。

「かつての姿を取り戻しているのか・・・」

 二人の会話で状況を理解したキリーは何とは無しにつぶやいていた。

「ザイン」

「何かね伊達くん?見ての通り忙しいのだがね」

「説明してくれ。この村で今何が起きようとしている?」

「ふむ 君の頭でもわかりやすい喩えで話そうか」

「人の命が掛かってるんだろう。包み隠さず全部話してくれ」

 伊達が挑みかかる様に問い詰めると、ザインは悪びれもなく答える。

「レイドボスによる一種のバイオハザード状態さ」

「所謂あれだね バイオハザードというやつだ」

 キリーとザインの言葉が重なる。

「こちらも、分かっている情報は多くはない。だから、私とキリーが送り込まれたんだ」

「・・・それも、ゲーム時代のクエストってやつかよ」

「昔の、ゲーム時代であればこの村一つですんだのだがね?」

 ラクリマの言葉に伊達はザインに問い詰め、悪びれる事もなく続ける。

「覚えているかい?この村は今特産品を行商人に運ばせ出荷することで多くの利益を得ている。そしてその行商人たちもまた大地人だ。ここまで言えばあとの説明は必要ないだろう?」

「ザイン、閉鎖エリアから感染したグールが出てこようとしているのか?」

 キリーの問いは、カエデが無言で村の方に行こうとした、

「カエデ。それは無謀な単独行動だぞ」

 ラクリマに腕を掴まれるた事により有耶無耶になる。

「カエデさん、まだ皆さんのお話が終わってませんわよ」

 あきらかに様子がおかしいカエデを心配してXQは声をかける。

「・・・・・・・・・様子を見に行くだけです。すぐに戻ります。」

 カエデは誰とも目は合わせずに話す。

「事情も分からずにか。足手纏いだ」

「その事情が分からないから自分の目で確かめに行くんです。」

「ザインとキリーが言った、バイオハザードだと。ならどうなるかは想像がつくだろう。お前のほかにも冒険者はいる。それより、ザインの話を聞け」

 ラクリマは心神喪失状態のカエデに厳しく叱責する。

「まぁ 勿体ぶった言い方をしても仕方あるまい。結論から言おう。討伐を頼めるかね?」

 ザインはカエデをチラリと見ながら言う。

「このあたりにいた冒険者たちは私の依頼を受けた者でね。あまり不自然にならないようエリア適正Lvである50代、高いものでも62がいいところだ。このエリアでレイドイベントボスに挑む余裕のある冒険者は君たちだけだと先に告げておこう」

「ザインさん。この私に望むモノは一体”何”の討伐かしら?」

「とりあえず、感染源であるボスを叩けばこれ以上の被害はないだろうが、感染型なら私が摂取して抗血清をつくれば大地人の感染を少しでも防げるだろう」

 XQはザインにボスの情報提供を促し、キリーは大地人の被害者を減らす為の提案をする。

 カエデはとりあえず大人しくザインさんの方に向くが、隙あれば村へと行こうとしている。

「……カエデ、俺も一緒に行くから。…だからもう少しだけ待ってくれ」

 その様子に伊達はカエデに懇願する。握り締め震える拳からぽたりと血が滴る。

「兄上様・・・・・・・・」

 伊達の拳から滴り落ちる血を呆然と見つめるカエデに、ラクリマは大丈夫だろうと判断して、カエデの腕を離す。

「討伐対象は現実時間で約13年前に期間限定イベントで発生した古き月の主。ウルリヒト・ブランゲーネ、簡単にいうところの吸血鬼というやつだね。残念ながら私が持つ情報は以上だ」

「…本当に、討伐対象はそれだけでよろしくて?」

 XQは念を押すようにザインに問いかける。

「さて残念ながら私として得ている情報はそれだけなのでね。以上としか言い様がない」

「元々の仕事を成し遂げられなかったんだ、是非もない。それより、その感染型とやらは、冒険者にも感染するのか?ザイン」

「ザイン、抗血清を作る時間はとれそうか?感染者の血液があればその場しのぎのものは作るが」

「感染、と申しましたけれども。元・大地人の方を手にかけよ、という事ではありませんのね?」

 ザインにラクリマとキリー、XQがそれぞれ質問していく。

「こちらでも同じく処理を始めている。それにミラルレイクの賢者への協力要請も既にだしている。今のところ出ている結論としては肉体的にではなく魂魄に干渉するたぐいのものらしいといったところだね」

「それは冒険者にも感染するか?」

「魂魄理論の渦に巻き込まれる前に抗血清を与えることができれば解除することも可能・・・かもしれない。冒険者には感染するものではないよ そこまでの力はない」

「重症化すれば元に戻らなくなるかもな。軽度のうちに毒使いの私が摂取し、私の中で出来た抗体で作った抗血清を投与するなら何とかなるが、本格的なものは任せるしかないな」

 ラクリマの質問にザインは答えるが、抗血清に関しては言葉にを濁したので、キリーは簡単に説明する。

「月から来たる大いなるモノ、ってのがそのウルリヒトってのはわかった。で、セリアがそいつに協力している可能性があるのか?」

「ああ、イベントキーのNPCだね。失礼、大地人か」

 伊達の質問にザインは悪びれる事もなく言う。

「まぁいい。感染者は近くに居るのか?ザイン」

「村に行けば腐るほどといったところか」

 キリーの質問にザインは端的に答える。

「彼女の救助も必要になってくる。俺達だけでは手が足りないかもしれねぇ」

 伊達の言葉をザインは遮る。

「今現在虜囚をとっている人材的余裕もなくてね」

「お前なぁ、その場で抗体作れってか。鬼だな」

 結構な無茶振りに呆れるキリー。

「できないとは言わせないよ?そして伊達くん。君にも言おう、できないとは言わせないっ。多くの人が助けを求め。倒すべき強敵がそこにいるならば君のすべきことは一つのはずだ」

「その場で相手の血肉を摂取するか齧られるかって、どっちもぞっとしないんだがな(しかも、戦闘しながら・・・・・・)」

 キリーは頭を抱え、ぼやく。

「・・・オーケー。相変わらず無茶苦茶だが、やらなきゃいけないことは分かった」

 伊達はどこか吹っ切れた様だ。

 カエデは無言で会話を聞いているようだが、心ここに在らず、村の方を見ている。

「すまないがあとは任せる。私もこれから残る冒険者たちの指示と各間の連絡などすべきことがある。やれることをやりたまえ。そのための冒険者だろう。それは君もだよ、カエデくん。あとは任せた」

「問題ない。イベントの阻止よりは、やりやすい」

 っとラクリマ。

「結局のところ出たとこ勝負か……いや、いつも通りか」

 やれやれと首を振り、肩を回す伊達。

「・・・・・・・・・・・・・はい、力を尽くします。」

 まだ、ぼーっとしているが、何とか了承するカエデ。

 ザインは一瞬、伊達たちを見たあと瞬間転移魔法で姿を消した。

「キリーさん。一つ聞いて良いかしら?」

「なんだ?」

「私達の調査に落ち度が合ったと思うかしら?」

「初手から後手に回ってるといっただろう、責任はザインに押し付けておけ」

「ならいいわ。……私にやれる事は1つだけのようですし。決着を付けてやりましょう」

 XQの質問にキリーは心の安寧の為にザインが悪いと言う事にしておけと悪びれる事もなく言う。

「カエデ、大丈夫だ。俺たちなら……できる」

「はい、兄上様・・・。不肖カエデ、この身を賭してでも・・・・・・。」

 伊達は自分にも言い聞かせる様にカエデに声をかける。だが、カエデは過剰な覚悟を口にする。

「…もういいか?」

 ラクリマはざっと全員を見渡すと、カエデは無言で頷く。そのまま、全員で狂乱の村へと足を走らせる

「みんな、力を貸してくれ……俺はもう、ザントリーフのときみたいな思いはしたくないんだ」

「分かっている、被害を拡大しないためにもやるべきことをするとしよう」

「ええ。私の刀は信念の元に振るいましょう」

 伊達の悲痛な思いをのせた懇願にキリーとXQは応える。


「しかしなぁ、現地調達かよ・・・。自分で作った毒飲むより気が重いぞ」

「やれるだけの事はしよう。…それぐらいしか、出来んからな」

 ぼやくキリーを慰める様にラクリマは言う。



 救うべき者と倒すべき敵を見定めて




この世界の【毒使い】というサブ職業というのは、毒の扱いに長けているだけでなく、毒や疫病といったモノに耐性があるという事になっています。なので、その毒使いの血液から血清が作れるのではないかと思いついたのが、きっかけなんです。

不活性化した毒を使い馬で作った抗体より、そのままの毒を摂取した人の抗体の方が良いのではないかと思いから発生したのが、最後の方のキリーの行動なんです。まぁ、ちょっとネットで調べた程度の知識なので間違ってるかもしれませんが、フィクションという事で流して貰えると助かります。


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