争いの大地の章2<挿絵あり>
少々残酷な表現があります。
なるほど
私はこんなにも血塗られている
だから貴方は穢れるのか・・・
父上・・・愛しい父上
一緒に・・・・・ずっと私と一緒に・・
赤く染まった両手
冷たくなっていく体を抱えて
ルーは涙した。
明らかに誰かに唆されて
巧妙に騙されて
父のカルフォス王に襲い掛かった者達の
刃に刺された父を、
反撃することも出来ずまざまざ刺された
優しい父をルーは抱く。
「父上・・・父上・・・
嘘でしょう?
誰よりも優しく強く
・・・誰も敵わなかった父上が・・・」
(・・もう少し早く私がたどり着いていたら・・)
カルフォスの体からとめどなく流れる血と
自らの体に浴びた返り血で
ルーの体も顔も血に塗れ
濡れた服が張り付いていた。
「・・・・父上・・・・
一人に・・・私を一人にするのですか?
私を残して・・いかないで・・・」
すがるように触れたカルフォスの頬を
穢したくは無いのに
血で汚していく。
・・・この人は穢してはいけない人なのに・・
拭っても拭っても
真っ赤に染まっていくカルフォスの頬に
ルーは、そうか自分の手が
体が血に染まっているからなのかと気づいた。
「ふふ・・・はは・・・
ふは・・」
口から漏れ出た笑いが止まらない。
可笑しくも無いのに涙が零れるのに
泣いて泣いて・・・瞳が溶けるほど
滲んで大切な父の顔が見えないほど
「ふふ・・・ククククッ・・・・・」
笑いながら
大切な絶対穢してはならないと思っていた
父の体が穢れるのも
もう気にならない様子で紅に染めながら
小さく体を震わせ強く強く抱きしめる。
開けた広場の真ん中だというのに
蒸せる様な血の池の只中
女も子供も男達も沈黙し
自分達の命を奪った10を少し超えたばかりの
幼い王子の姿を
見ることの無い瞳で見つめていた。
人の命の水をたくさん吸った剣を抱き締めながら
ルーは、・・・父の名を王位を継いだカルフォスは、王座に座った。
(父上・・・・・・父上を傷つけた者達は
私が消します・・・・これからも・・・ずっと・・
あいつらが居なくなるまで・・ずっと・・ねえ・・父上?)
紅にしまった剣を
自らの体を抱きしめる。
「・・・・一緒・・・これからもずっと・・
父上の世は続くのです・・・」
クスクスと幸せそうに微笑んでカルフォスはそのまま浅い
眠りについた。
聖暦14年
カルフォス11年
(でカルフォス二世1年だが父の暦を引き継いだ)
父王カルフォスが崩御したその年
たった一人の息子にして
王位継承を持つたった一人の王族
次王カルフォスにより
後に宮殿のほぼ半数を占める数であったと語られる
死傷者数の
「王宮大粛清」が行われた。