守護者の章4
心を安らげてくれた
大切な貴方達
離れるのはつらいけれど・・・
でも私は皆を愛したい
さようなら・・・
また会いに来ます
それまでさようなら・・・・・
「シぃ・・・ルぅ・・・はな・・ぼく、ちちうえに
つんであげる・・・ちちうえうれしいかな・・?」
「ルー王子・・摘んだら可愛そうです・・・
きっとでもそうですね・・・お花が懸命に咲いているのを
教えてあげればどうですか・・・?」
ルー王子と庭で遊んでいたのだが
ふいに思いついたルー王子が
花を摘もうとした。
「・・・シ・・ル・・・?・・・ごめん・・な・・さい
・・ちち・・うえ・・・うれしい?・・
教えたら・・ほんとうに・・・うれしい・・?」
手を引っ込めたのを見て
笑顔で頷きながら月は
出会った頃はあまりしゃべれなかった
ルー王子もたくさんの言葉を覚え
優しさと思いやる心を持ってきた
のを嬉しく思う。
「ルー王子・・・ルー王子はとっても良い子ですね・・
たくさんお話出来る様になりましたし・・
何より優しい心を持っています・・・。」
「シ・・・ル・・・?」
不思議そうな顔をしているルーの体を抱き締めて
月は言葉を続けます。
「・・・この国は素晴らしい王と王子を持ち
優しさと更なる栄えがもたらされるでしょう・・・
私が居なくても・・・・もう大丈夫でしょう・・・」
心地よさに長く居すぎたこの場所を
そろそろ別れなくてはならないと月は
考え始めていました。
自分は月の女神・・・全ての生命を
愛し・・・慈しみ・・守護する者
一所に留まっていては全てを護ることが出来ません。
(この国は大丈夫・・・カルフォスが居る・・・
優しいルー王子も居る
だから大丈夫)
言葉を良く理解出来ないながらも
月が去って行きそうなのを感じたのか
ルー王子の手は月の服の裾を握り締め
離れまいとしています。
「・・いや・・だ・・・ここ居ろ!・・・・ずっと居ろ!
・・・・シル・・・・ぼくから・・・離れるな!」
無心に慕うルー王子の心に
愛おしさがこみ上げて
月は震えるルー王子の体を抱き締め
約束しました。
「・・・いつかまた・・・・素晴らしい王国となったこの国を
もっと優しく賢くなった貴方を見に来ます。」
「・・・・ひとりにしないで・・・
シル・・・ひとりに・・しないで・・
ちちうえがいないとき・・・ぼくはひとり・・」
いずれ切れ長になるはずの
まだ幼い大きな瞳にいっぱいの涙を溜めて
ルー王子は訴えますが
「父上様がいつも離れていても
ルー王子を愛していらっしゃいます・・
私も離れてもルー王子を愛しています
だから一人ではありませんよ・・」
月は行かねばなりませんでした。
「いずれ父上の後を継ぎ
国の皆に愛される立派な王になれます。」