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番外編 (王子ルー3)ルー<カルフォス>の幼い時

「ルー、勉強をしていたのか?」


机の上に積み上げた本を懸命に読んでいるルーは、


もう幼児と呼べる歳ではなくなっていた。


少し青白くはあるが、スラリと伸びてきた背丈と手足を持つルーは、


父譲りの秀麗な顔を綻ばせて、


部屋に入ってきた父王カルフォスに向かって、ほんの少し微笑んだ。




「父上・・・・植物の勉強をしていた。


シルが帰ってきた時にシルだって知らないような


たくさんの花の名前を教えてあげたいと思って・・・。」


ほんの少しだけでも微笑みの表情を作れるようになった


我が子ルーを見て、父王カルフォスは、とても嬉しそうに笑った。


幸せな表情を浮かべて、言葉を話して、優しい物事についての


勉強をしていると言う、


その事が、あまり傍に居て守り、抱きしめてあげられない


父王カルフォスにとって、どれほど嬉しい事なのか、


父王カルフォスは、思わず言葉につまってしまった。




「父上・・・・・そんなに抱きしめなくても、


僕は、ここにずっと居る。」


気がつけば、父王カルフォスは、ルー王子を抱きしめていた。




「・・・・ああそうだな・・・どんなに苦しくても、


お前は、この国に、この王宮に居て、留守を守ってくれているな・・


お前が、私達の家を守ってくれているから、私は、いつでも帰ってこられるよ・・・」


父王カルフォスの腕の中で、ルー王子は考える。


どうして父がこんなにこの国、の為に


身と命を犠牲にしているのかが、ルーには理解できない、


けれど、父はこの国が大事で、この王宮が帰ってくる場所だと


思っているのだ。


だから、自分もこの父王の国を守り、王宮を守らなければいけないのだ・・と。




「父上・・・・僕、父上の国と王宮を守る・・


だから、父上、安心していっぱい帰ってきて。」


ルー王子の言葉に父王カルフォスは深く頷いた。


















血に染まる・・・・・




ルー王子の幼さが残る頬にも、


剣を握る手も・・・・




王宮中に血の匂いがたち込めた。




それは、後に


『王宮大粛清』


と、呼ばれたものだった。






許さぬ・・・許さぬ・・・




誰も彼も父上の王宮<家>を壊そうとするものは


許さぬ・・・・・・




剣を振るい続けるルー王子の耳には、


逃げ惑う人々の叫び声も、


泣き叫んで許しを請う声も、


聞こえてはいなかった。




ただ・・・父の国と王宮を守るために壊し続けた。






「父上・・・父上・・・・父上・・・・・父上・・・・」


広い広い玉座の間へと入ると、


ルー王子は、ゆっくりと父王の座っていた玉座へと近づいていった。




そっと、手を伸ばし触れてみる・・。






そこには、誰も居なかった・・・


そこ<王座>は、とても冷たかった・・






ルー王子の血に染まった手は、王座を穢し、


玉座へと続く道は、赤い足跡で穢れてしまった。






ルー王子は狂ったように笑った。








「私は、『カルフォス』・・・・・・


我が名は、『カルフォス』だ!私がこの王宮の主、


私<『カルフォス』>が・・・この国の王だ!」


ここで、この場で、『ルー王子』は消してしまおう・・・


私が、『カルフォス(父上)』に、なるから


国も、王宮も守るから、


ここに帰ってきてください父上・・・


私と共に生き続けて・・・・




私を一人にしないで・・・・・・










即位したルー王子は、


父王の名前


『カルフォス』を名乗り、


暦さえも父王の暦のそのままを継いだ。








その時、ルー王子は、自分自身を捨てた。



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