番外編 (願い3)月とカルフォス
「カルフォス!!」
倒れ伏すカルフォスに月は、駆けより
ハラハラと涙を零す。
戦場で、血に塗れ、カルフォスはそこに居た。
カルフォスには、女神の加護を与えていたはずなのに、
カルフォスの剣にも・・・・
そう思って、気が付く、カルフォスの身体を貫いていたのは、カルフォスの剣だった。
青ざめた顔の兵が、カルフォスの傍から離れてゆく、
月は、何も言えなかった、ただ、涙を零し、カルフォスの身体の傍に跪いた。
「カルフォス・・・・私の・・・力を・・・」
戦場で、最も穢れに満ちた場所で月は、力を解放した。
「・・・だ・・・・駄目・・・だ・・・」
カルフォスの赤茶色の、カルフォス自身の魂のように綺麗な瞳が見えた。
必死で、カルフォスは、月を止め
傷ついた身体だと言うのに、月から離れようとする。
離れるなと、いつも言っているカルフォスなのに、
「早く行け・・・・ここに居てはならない・・・
私に触れてはならない・・・・」
傍にいろと、月に触れたいと言う、カルフォスなのに、
月は、倒れ伏すカルフォスに自分から口付けを落とした。
「離れるなと、傍に居ろと、私の全てが欲しいと言ったでは
ありませんか・・・・、私を愛して欲しいと言ったではありませんか」
驚きで見開くカルフォスの瞳を見下ろしながら、
再び口付けた月は、いつもの穢れによる痛みを感じることがなかった。
「カルフォス・・・・・貴方に、私自身と、貴方自身を与えましょう。」
月の言葉にカルフォスは顔を上げた。
「これは、貴方の傍にずっと居れる。
これは、貴方の傍で、ずっと貴方を愛して居られる。」
月の言葉が、何の事だか分からなくて、
カルフォスは、首を傾げて、触れようと月に手を伸ばす。
「どういうことだ?・・・・何なのだ?それは?」
「・・・・これは、命です・・・・貴方にあげる、私自身、
消滅せずに与える事が出来る生命です。・・・・ずっと傍に居れぬ
私の代わりに・・・・生まれて来る貴方の娘と息子の二人に
月の加護を与えましょう。」
カルフォスは、月の言葉に目を見開いた。
太陽と対峙していたカルフォスは、
駆け寄る月の姿を見ながら願った。
「・・・・愛・・・しい・・・愛しい・・月、
愛・・・し・・・い・・・・我が・・・子・・・・」
月に愛する事を、愛され、愛し返す事を、
我が子達に溢れる愛しさを、只、流れる水のように注ぎ込む慈しむ心を
カルフォスは教えてもらった。
(私の・・・・愛しい者達・・・、
私を・・・全て・・与えても・・良い、
私の・・・・存在が・・・消滅しても・・・・良い・・、どうか、・・・与えてくれ・・)
「・・・・私の・・・・想・・い・・の、・・心の・・・欠片・・が
愛・・しい・・・者・・達・・・と共に・・・・」
カルフォスの魂が散った・・・・。




