番外編 (後、何度・・)カルフォス<父>とルー<カルフォス>
眠るルーの頬をカルフォス王はそっと触れた。
今回も何とか生き残れたが、
この次の戦は無事かは分からない。
今までの戦いも死んでいても可笑しくないほどの戦いだった、
この次の次もその次も・・・生き残ってこの子に会えるだろうか?
傍に居られないうちに、また、ルーは大きくなった。
そっと起こさないように抱き上げ、我が子の重さを感じる。
私は、後、何度こうして愛しい我が子を抱き上げられるのだろう?
「・・・うう・・・・あ・・ち?」
腕の中のルーの声に、カルフォス王は、視線を落とすと、
何故か、ルーの頬が額が濡れている。
気遣わしげに手を伸ばす紅葉のようなルーの手に
カルフォス王は、ルーの頬を、額を濡らしているのは、
自分の瞳から零れた涙なのだと気付いた。
「すまぬ・・・・すまぬ・・・ルー、傍に居れぬ父で、すまぬ・・。
そなたを愛しているのに・・・
私のせいで、そなたから母を奪い、
私のせいで、そなたを苦しめている。」
ルーは、ただ健やかに眠っていたのではなく、
ルーは、危うく毒殺されるところだったのだ。
王であるカルフォスの唯一の王位継承者として、
ルーは、狙われた。
「・・・ち、・・・うば・・や・・は?」
カルフォスは、ルーの言葉に瞳を伏せた。
「・・・・・・。・・・・・ね、・・・ち、・・・かった・・・?」
「ああ、戦に勝ったぞ・・・・しばらくは、きっとそなたの傍に居れる。」
ルーの問いかけに答えたカルフォスの言葉に、
本当に嬉しそうな顔でルーが笑ったのを見て
カルフォスは胸が痛くなった。
言葉があまり、上手く話せないルー、
どことなく体がやせこけているルー、
傍に居れない父を一身に慕ってくれるルー、
自分が殺されそうになっていることも、
父の苦しみも、親類達や周りの者達から感じる冷たい視線も
どことなく感じ取っている繊細で利発で、孤独な我が子が
哀れで仕方が無かった。
「さあ、これを飲んで元気になれ」
カルフォス自身が作った解毒と、滋養の薬を
ルーに飲ませる。
ルーは、カルフォスが飲ませるものは何でも
素直に飲み込む、薬でも水でも、
抗体を作らせる為に飲ませる毒薬でも、
後、何度、私は、戦で戦えば良いのだろう
後、何度、ルーの苦しむ姿を見れば果てが来るのか・・
そして、
私は、後、何度生きて愛しい我が子を抱きしめられるのか・・
何時になったら幸せを与えてやれる?




