怒る太陽の章3
全てを滅ぼして・・・
月・・・僕と二人
お互いだけを見つめてた昔々のように・・
「太陽!・・・・何てことをするのです!
どうして!?・・・・・地上では皆が傷ついているのですよ?」
ポロポロと癒しの涙を流しながら月は
哀しそうに太陽を見つめます。
「ああ・・・・月・・・月!!
帰ってきてくれたの?」
月に抱きつこうとする太陽を月は小さく
首を振って縋る様に見つめる。
「お願い・・・・やめて・・・・
大切な愛しいあの子達を傷つけるのを
今すぐにやめて下さい」
月のキラキラ輝きながら零れる涙が美しくて
自分以外を愛していると言う月が憎くて
それにも増して縛り付けてでも自分の傍に置いておきたいと
そう思って・・・太陽は、月をうっとりと見つめた。
「痛がって泣いているのよ・・・可愛い愛しい私達の子達」
(どうして・・・僕以外にそんなに心を痛めるんだ?)
「どうして・・・聞いてくれないの?太陽・・・
そんなことを繰り返すのならば・・・・貴方のことを嫌いになってしまう!」
月にとっては心を通じ合っている片割れに対する
お願いと拗ねた気持ちで言った言葉、
けれど太陽は、月が自分を嫌いになってしまうと言う
恐怖に心が震えた。
(月が僕を嫌いになっちゃう!
月が僕から離れて行って僕は、たった一人になってしまう・・・・!)
「・・・・・地上には・・・戻さない・・・」
「太陽・・・・?」
「・・・・僕が嫌いになるって・・・・?
僕じゃない奴を愛してるだって・・・・・?」
「どうしたの・・・?太陽・・・?」
下を向いたまま低い声で呟く太陽に月は
いつもと違う様子を感じ取って
問いかけるが太陽は、こっちを見ようとしない・・・・
「太陽・・・・・」
・・・・!!・・・・・
哀しくなってきて太陽を呼ぶ月の身体を太陽が強く抱きしめる
「何処にも・・・・帰さないよ・・・・」
「離して!・・・・嫌よ!そんな太陽は」
今まで見たことも無い太陽に
月は何だか少しだけ恐怖を感じてしまって
太陽の腕から離れようとするのに抜け出すことが出来ない。
「離して・・欲しいだって・・・?僕が嫌・・・?」
クスクスと太陽の口から笑みが漏れ
いつもの無邪気さがとても恐ろしくて
「・・・・カルフォス・・・」
思わず愛しい人の名前を呼ぶ。
いらだったように太陽が憎い名前を呼ぶ月の口を塞ぐ。
月は、堪らなくなって力を開放して愛しい人の下へ帰っていった。
「月・・・・・僕の月・・・意地悪で大好きな月・・
・・・・愛している。」
見る見るうちに、太陽の手足が伸び
炎の朱金の髪が鮮やかさを増す。
涙に濡れる黄金の瞳は鋭くなり艶やかさを帯びて
その姿はすでに少年では無くなっていた。
太陽は、月への想いによって成長を遂げた。
ツキガ ミツメルスベテノモノヲ
「・・・・・・君が・・・・・僕以外を見つめるのなんて
許さないよ・・・・」
近づけるものなど無いはずである
神聖な天界で太陽の周りをゆっくりと赤い霧が取り巻いてゆく
ツキガ アイスル スベテノモノヲ
「僕と月以外が居なくなったら僕しか愛することが
出来なくなるよね・・・・・?」
クスクス笑いが漏れる。
ボクイガイヲ・・ソノメニ ウツサヌヨウニ
「君が愛する全てのものを・・・・・滅ぼして
僕だけを見つめさせる・・・・
そうしたら・・・僕と月は昔のように・・・幸せだったあの頃のように・・・
戻れる・・・その為に」
『全ての月の愛するものを滅ぼす』
赤い闇が艶やかで美しい闇の主の姿を取り
そっと太陽を抱きしめた。
《そうだよ・・・・そう・・・・全てを滅ぼしてしまえ・・
何一つ生命の居ない死の世界に・・・》




