怒る太陽の章1
愛してる・・・
私の太陽・・私の愛しい人
・・・そして・・・私の子供達・・・。
「月が・・・
月が月が・・・・」
半身である月が離れていく哀しみに
太陽が炎の涙を零す。
「シル・・・・お前を后として迎えたい」
「・・・カルフォス・・・?」
カルフォスが月の為に建立した
女神神殿で涙していた月はカルフォスの
その声に振り向いた。
「私は、お前以外要らない・・
女も・・男も・・・・・子供もお前以外の子は要らない
・・何も・・地上で他の何者をも見ず
私だけを見ていろ・・」
月は、優しい緑の瞳を見開き
再び涙を溢れさせ
哀しげにゆっくりと首を振る。
「・・・・貴方を・・・愛しています・・
けれど・・・太陽を・・・子供(生命)達を
愛しています・・・・。」
そして、何かに気付いたように
月は姿を消した。
「・・・傍に居たいと・・言ったはず・・何処にも行くな・・
他のものの所へ・・・シル・・・」
神殿の中でただ一人小さくカルフォスは呟いた。
「太陽・・・・何をしているの・・・
やめて・・・」
太陽の炎の涙で苦しむ草花の元にやって来ると
月は痛みに泣いている草花達を抱きしめ癒しました。
「・・・・我が子・・・可愛い、
愛しい子供達・・・大丈夫ですよ・・・」
癒し宥めると月は、太陽の元へとやって来ました。
「・・・・・太陽・・・・貴方の涙で
草花達は傷ついていましたよ・・・?」
久しぶりに間近に見る月に太陽は
嘆きを深くしました。
月は、地上に降りている間にいつの間にか
太陽を置いて体も心もずいぶん成長していたのです。
「大好きだよ~
大好きだよ~月!
どうして僕の所に帰って来てくれないの?
君は僕のなのに!
僕達は夫婦になるんだよ!」
今だ少年の姿のまま抱きついてくる
太陽を愛しげに抱きしめると月は、
「ごめんなさい・・・太陽・・・
まだまだ地上は混沌に満ちていて
風も水も炎も土もしっかりと治まってはいないのです。」
「他のものなんてほっとけばいいじゃないか!」
「私達の生み出した可愛い子供達よ?どうして?」
懸命に太陽に理解してもらおうとするのですが
太陽は月の体を強く抱きしめたまま
聞こうとしません。
(どうして太陽は他に愛しい人がいても
太陽への気持ちが無くなったわけじゃないと
わかってくれないのだろう・・・)
泣きたい気持ちになりました。
「僕を一番に考えて欲しいんだ!
僕だけを考えて欲しいんだ!」
太陽の涙に月は困り果ててしまいました。
「皆を私は・・・・愛しているのです・・・
私は、カルフォスを愛しているのです
傍に居たい・・・・。」
「・・・・カルフォス・・・!?」
太陽の月を見上げる瞳には怒りが
込められていました。
「・・・・カルフォスだって!?・・・・
あの汚らしい人間・・・!・・・
あいつが地上の混沌を余計に
増長させているのじゃないのか!?」
「・・・・・・・カルフォスは・・・・
確かに・・・穢れを生んでいます・・・
けれど、心の奥に隠れている魂は優しく・・・繊細で美しい・・・
カルフォスは・・・そう・・・太陽貴方のように
激しい心の中に純粋な魂を持っています。」
「・・・・・純粋なのに・・・・哀しい魂を持つカルフォスを
私は、愛しています・・・・。」
月は太陽が今まで見たことも無いような
美しい顔で微笑んだ。




