切なき月の章4
愛しています
貴方を愛しています・・
(愛しい・・・・苦しい・・・
傍に居たい・・・哀しい・・)
心ので涙が留まる事も無く流れている。
(どうしたら良いの・・・
私は貴方に何が出来るの・・・?)
大きな力を持っているはずの月、
だけど無力感に苛まれていた。
カルフォスの傍に居ながら
カルフォスを愛している気持ちと
同じ所で非情にも奪われる命の痛みを感じる
ずっと傍に居たい
願いながも
生命達の哀しみが流れ込んでくる。
何かをしたくて愛したくてしょうがないのに
何も出来なくて・・・
「カ・・カルフォ・・ス・・・」
懸命に手を伸ばしたつもりなのに力が入らず
言葉さえも発する力が急速に消えていた。
(傍に居たいのに・・
貴方の存在が私を傷つける・・・
微笑んで抱きしめて、心を伝えたいのに
その力が消えて行く・・・私が消えて行く・・)
待って・・待って・・・
耐えてきた反動が今現われたようだ。
待って・・待って・・待って・・!!
傍に居たい・・
貴方に触れたい・・・
例え消えても・・・傍に居たいと思った。
「カル・・フォス!!」
(お願い消えたくない)
「・・シ・・・・シル・・?
・・・シル!・・」
始めは恐る恐る戸惑うように、
しかしやがて強く激しく名を呼ぶ。
「シル!・・シル!消えるな!!」
思わず零してしまったと言うような声
冷たい手の感触に月は意識が戻って行くのを感じた
強い、強い感情の力・・・神や精霊に有り得ない
激しい想いの力。
「・・シル!
私から離れることは許さない!・・・お前が居ないと・・」
「許さない!・・私から瞳を逸らすな!」
離れろと何度も言いながら
今は離れるな目を逸らすなと叫ぶその声、
強すぎる感情がとても痛い。
心に流れ込んでくる生命の声が哀しい。
でも・・・
ゆっくりと月は瞳を開いた。
目の前では愛しい
愛しすぎる
朱金の髪を持つ美しい生命が居る。
私の手は透き通っているけれど
貴方の与える苦しみで
私は声を出すことさえ痛い・・・でも
・・でも・・・・
愛されることを傍に居ることを
否定していたカルフォスの頬に涙が伝って・・
私に離れるな・・と
瞳を逸らすな・・と
「・・・・・愛しています
・・・貴方を・・・・愛しています・・・」
月の瞳からも涙が流れていた。




