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切なき月の章3

貴方を思うと悲しくて

苦しくて・・・

とても辛い






「うっとうしい・・・」

カルフォスの瞳の端々に水銀色が

ちらつく。


「・・・・・・・」

背中に横顔に視線を感じて

居心地がどうにも悪い。


「・・・・・・うっとうしいと言っている・・」

そちらに瞳を向けると嬉しいと

ばかりに微笑む月に

カルフォスは呆れ返る。


「カルフォス!?・・

貴方は花がお好きでしたね・・・?

東の野原でタンポポの花畑が出来てましたよ?」

いつまでも月の心の中でカルフォスは

子供のままのようだ


月が来てから調子が狂ってしょうがない。

とりあえずは無視を決め込むが

朝から晩まで他の者には見えぬ姿でカルフォスに張り付いて

ひたすらその姿を見つめている。




(ことあるごとに私の隣で泣く

そして泣いたと思うと笑う

子供でも連れている様だ・・・イライラする)


カルフォスは、

朱金の髪を掻き上げ困り果てていた。



(・・・・私の前に姿を見せるな・・・

私の傍に居ないで・・・

こんな私の姿を見て欲しくは無い・・・。)

月の存在がカルフォスの心の中に

重くしみこんでいく、

そのことが堪らなく苦しかった・・・。





「カルフォス・・・」

触れようとする月の手を振り払い

愛したいと思う月の心を否定する。


「寄るな・・・・・私の傍に居ることは許さない・・

・・私をその森の緑の瞳に映す事を許さない。」

月を一瞥もせず冷たいばかりの言葉が

月の上を降って来る。


ようやく成長し始めた月の心には

辛くて悲しくて

再び泣き出したい気持ちだった。


傍に居たい

傍に居たい



何故こんなにカルフォスの傍に居たいのか

月には分からない。


でもとにかく傍にして・・・

その姿を瞳に映していたい。

カルフォスに触れたい・・


穢れに満ちた激情を持つ

カルフォスの傍に居るのはとても

苦しく辛いことなのだけれど


ただ傍に居たい・・・。



初めて感じる

自分の激しい気持ちに月は戸惑いながら

ただ見つめるしか出来なかった。



片時も離れたくない・・・

傍に居たい・・・でも・・・



・・でも・・・



月は、突然カルフォスの前で倒れた。

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