争いの大地の章4
残酷な表現があります。
ご注意下さい。
感じない・・・
ただ、汚らわしさを感じるだけ・・・
「・・・・・首を切って首は門に晒し
体は城壁に逆さ吊りにしろ・・・・・・」
冷たい声が響く。
「ひぃ~おはふへを(お助けを)・・・・・ほう(王)・・
ひょうは(どうか)・・・ほひひを(ご慈悲を)!」
男は、すでに原型が残っていない
腫れ上がり血に塗れた顔と手で目の前の
玉座に座っている
幼く美しい王に縋り付く。
「・・・触れるな・・・・」
「ほう(王)・・ほう(王)・・・!」
マントにグッショリと付いた血に
汚らわしげに眉を寄せるカルフォス王の手に
「・・ほう(王)・・・わはひが(私が)
はひをしはほぅ・・(何をしたと)!!」
更に縋り付いた瞬間
男の腕はもう体に付いては居なかった。
ドサドサッ・・・
「ふがぁああ・・・・!!」
「・・・・・・この者の親兄弟、妻子と共に
晒しておけ・・・」
床に落ちた首は、低くなった視線で己の落とされた
両腕を見て叫び、口を閉じられることない姿のまま
何も言わなくなった。
「・・・おお・・・神よ・・・月の女神・・・」
「・・・・女子供を見逃しただけなのに・・・」
王の去った後のまだ張り詰めた空気の中
吐息のような小さな声でそんな言葉が呟かれてた。
『・・・血の赤に染まった王・・・紅の貴公子・・・・
・・・・恐怖王・・・染血のカルフォス・・・』
自分達を恐怖で縛る
恐ろしい専制君主を殺してくれる
英雄を・・・皆が求めていた。
ベッドの上で串刺しにされて息絶えている
半裸の女を一瞥した後
「・・・・・・汚い・・・・汚らわしい・・・」
血の付いたマントも上着も全てを
火で燃やす。
「・・・・・蛆虫・・・」
(皆・・・蛆虫だ・・・・汚らしい・・
いっそ・・・全て炎で燃やしてしまうか・・・?)
口元から冷たい笑みが漏れる。
静けさ支配する国・・・・・
誰一人として国の民でさえ言葉少なで、
皆がカルフォスを殺そうとしているように
思えてしまう・・・・。
全ての周りの者が父上を殺した者のように
思え、憎くて堪らない・・・・。
マントも上着も着ていない姿のまま
窓辺に近付く
矢よけにの為に細かく格子が
組み合わさっている窓からは
カルフォスの命で吊るされた
幾百もの死体と晒された首が
腐り蛆が湧いているのが見えた。
もうそろそろあれらの死体も地上に下ろして
炎で焼かれるのだろう・・・
次々と吊るされる為に時々は片付け無くては
ならない。
そこかしこに黒い煙が立っている。
「フフ・・・・神は・・・・いない・・・
こんなに殺されて・・・・こんなに恐怖に縛られて
私は、殺されんばかりに憎まれているのに
神は、私に雷を落とさない
あの者達を誰も助けには来ない・・・」
何故かカルフォスはおかしくて堪らなかった。
「・・・・・神を・・・・幸せを・・優しさを信じていた
私の何と愚かなことか・・・」
血を見ること蛆虫の付いた死体を見ること
死体が炎に焼かれるのが・・・楽しい。
殺される時に恐怖の瞳で
私を見るのが・・・面白い。
クスクスとした冷たい笑いが零れるのを
止めることが出来なかった。




