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第7話「妹」

「この村の名はバート・バーデン。特産は林檎、魔物の皮や肉。王都への荷出しと、貴方が保護されたアッパー森林の魔物を狩りに来た冒険者相手の商売がこの村の収入源です。冒険者はこんな田舎ですから滅多に来ません。なので王都への出荷が主ですね。あとは細々と農耕なんかをしています」


 ダインは謎の少女と共に村の中を歩いている。貴族様かな、と当たりを付けて。

 王都ではまだ活気に包まれているはずの時間であるが、何もない村では普通、日没と共に村人は眠る。時々思い出したかのように虫が鳴いているがそれを含めても静かな夜だった。


「あそこの丘を登ると絶景です。あそこから先は『枯れ地』が広がってるから一面何もなく平坦なんですけど、大雨が降ると一面海のようになって、日の出になると太陽の光が反射して黄金のように輝くんです」


 ダインは丘を指差しながら言った。


「枯れ地・・・ですか?」

「はい。知りませんか? どうやら昔、この辺りが人魔戦争の戦場だったらしく敵の魔族の魔法の影響で地面が干上がり、鉄のように硬くなってしまいました。その土地を枯れ地と呼びます。そこは何も育たない不毛な土地です」

「その割には随分楽しそうな顔をしていますね」

「俺、失礼、私はこの村で海と金を知りました。そんなものとは一切縁がないはずの村なんですけどね。それなりの思い入れはあるんです」

「この村の出身の方でいらっしゃいましたか」

「はい。両親は死に妹と二人で暮らしていました。妹は病気がちでお金を稼ぐために騎士団に入団しました。不純な動機ですよね。騎士なのに国や民でなく妹に剣を捧げているんですから」

「いえ素敵な理由かと思います」


 ダインは笑みを溢し、ありがとうございます、と礼を言った。


「すみませんが今日は私の家に泊まってもらいます。けど私は騎士団のほうに戻りますので妹と二人でということになってしまいます」

「いえいえ構いません。宿を貸していただくだけでもありがたいですよ。私も色々あって疲れていましたから」

「そうですか。もうそろそろ着きますよ。ほらあそこにある灰色の壁の家がうちです」



△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△



「あ、お兄ちゃんおかえり」


 ダイン、ハルカが家に入ると奥のベットから声が聞こえた。


「エル、やっぱり起きてたのか」


 枕元に台がおいてある。その台には明々と照らすカンテラ、平積みにされた数冊の本、使用済みの食器、綺麗に畳まれた服が置かれている。

 エルと呼ばれた少女は読んでいた絵本をトン、と閉じた。


「またその本読んでんの?」

「うん、まぁ・・・つい、ね」

「よく飽きないな」


 少女は半身だけ起こしてベッドに座っている。

 視線を本からダインに向けたことで少女の顔がカンテラに照らされ露になった。

 鼻筋は通っていて、少しだけ太い眉毛。肌は灰沸石スコレサイトのような白さで髪はダインとおなじ黒に近い茶色である。


「で、お兄ちゃん。そちらのお姉さんはだれ?」


 ダインとハルカはベッドの近くまで移動した。


「色々あって騎士団で保護することになったハルカさんだ」

「こんばんは」


 ハルカの顔に枕元のカンテラの灯りが射した。艶々《つやつや》した頬にもぎたての果実のような精彩さが感じられる。


「・・・こ、こんばんは!」


 少女はうわずった声で答えた。


「で、こっちが私の妹のエルステッドです」

「はぁぁー・・・・・・」


 エルステッドはハルカのほうを向いて呆けた表情をしている。


「・・・エル?」

「あ、はじめまして」


 エルステッドは半身をハルカに向けた状態で頭をこく、と下げた。


「あとさ、今日はうちに泊まってもらおうと思うんだけど良い?」

「もちろん!」


 エルステッドはニコニコ人が良さそうに笑った後、持っていた絵本を台の上に置いた。


「そりゃ良かった。ハルカさん。今日泊まってもらう部屋はこっちです。簡単に家の説明をしますね」






書き貯め始めるので更新遅れます。

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