表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
58/77

058 「鋼鉄製空の狩人たち」

僕とナツの血液に取り込まれているバギュームは、僕とナツの身体を有機的なコンピュータとして使用した戦闘用AIを構成している。

僕の目から脳に送られた視覚情報は、バギュームによって解析され僕の脳はその結果を受け取った。

僕は、海上7千メートルにP-8Aポセイドンを認める。

バギュームは、言ってみれば生体アビオニクスであった。

ポセイドンと僕らの距離を割り出し、何秒後に射程に入るかといった情報も伝えてくる。

そして、ポセイドンのまわりにいるダークペガサスの情報も、送り込んできた。

ダークペガサスは一応建前として遠隔コントロールとされているが、事実上自律戦闘が可能なロボット戦闘機たちだ。

その鋼鉄製空の狩人たちがこちらを感知している警告を、バギュームは発していた。

予定どおり、ハルオが電磁パルス弾を格納したファルコン型ミサイルを発射する。

一瞬、ハルオの機体が白熱光に包まれ、そして銀色の矢が地上へ向かって飛ぶ。

ファルコンを小型化したそのミサイルは、近接信管を装備していない。

内蔵された時限信管が、ダークペガサスたちが回避運動に入る前に炸裂する。

一瞬、小さな太陽が出現し、すぐに消え去った。

それは、目に見えない電子パルスを放出する。

ハルオが言っていたように、ポセイドンやダークペガサスのアビオニクスは電子パルスの影響を受けた様子はない。

しかし、それはECMとして作動し、目論んだとおりにダークペガサスとポセイドンのリンクを切断したようだ。

間違いなく、その多面体をしたオフブラックの無人戦闘機たちは僕らを把握しているはずだが、攻撃をしかけてはこない。

おそらく、稼げた時間は10秒以下だったろう。

でも、僕らにとってそれは100万ドルを払っても惜しくないくらいの時間だった。

僕とナツは、音速を越えてポセイドンへ向かう。

物理的壁となった空気を僕らは切り裂き、咆哮をあげるかわりにソニックブームを後ろへ残す。

バギュームによって強化された僕の意識は、2機のダークペガサスが機体を翻して僕らに向かってくるのを感じ取った。

ロックオンされれば終わってしまうレーザー兵器がスタンバイしたらしく、強烈な熱源の輝きをオフブラックの機体に認識する。

けれど、僕らの方が一手先んじていた。

ダークペガサスが機首を僕らの方へ向けロックオンする前に、バルカン砲を叩き込むことができる。

先に発砲したのは、ハルオのほうだ。

真紅の矢が空を貫き、一機のダークペガサスが炎に包まれる。

僕もまた、操縦桿を操作しもう一機のダークペガサスをロックオンした。

バルカンは散弾銃みたいなもので、正確な射撃を望むことはできない。

近接信管によって至近弾を炸裂させ、相手にダメージを与える。

ひとの意識を越えた速度で計算し、バギュームは高速運動と空気の壁を乗り越えて近接信管を炸裂させる道を見出す。

僕は、加速でコックピットに押し付けられ、息もできないようなスピードの中でダークペガサスをロックオンしバルカンを放った。

赤い矢が空を切り裂いて、オフブラックの無人戦闘機へ襲いかかる。

しかし、驚くべきことに僕が狙ったダークペガサスは、回避運動で身を捩らせバルカンを躱してしまう。

僕は、絶望で目の前が昏くなった。

「ドンマイ」

ナツの気楽な声が、頭の中に響く。

「気にするなアキオ、バルカンが命中するのはただの運だからな」

ハルオの早口で語る声が、続いて頭に響いた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ