表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/77

005 「外の世界はすべてがリアルタイム」

僕は四年ぶりに、外へ出た。

部屋の外の世界、そこは時間の流れが違う世界であるように思える。

閉じた空間では時間は淀んでおり、ゆっくりと流れていく。

でも外の開けた世界に出ると、時間の流れがとてつもなく速く思えた。

しかも、多くのものがインタラクティブな反応を要求する。

僕はそうした要求に答えるため、久しぶりに脳の活動を全開にしていた。

まあ、ネットの世界でもインタラクティブだといえば当然そうだけど、リアルタイム性を要求される場面はさほどない。

でも、外の世界はすべてがリアルタイムだった。

僕は、外は強度の世界だと思う。

測定したり、数値化することのできない力が次々に襲いかかってくる。

四年前は、そうしたことを当たり前にやっていたんだなあと思うと、少し驚く。

無重力の世界に慣れた宇宙飛行士が、久しぶりに地上に降りたらこんなふうに感じるのかと、思ったりする。

さて、僕が会いにいこうとしている彼女は、ナツと言う名だ。

ハヤカワ・ナツ。

彼女は、そう名乗った。

ナツは、僕と同い年くらいのようだ。

仕事はしているみたいなのだが、要領をえないところを見るとフリーターみたいなものらしい。

彼女は僕らの暮らす極東の島国の、首都圏に住んでいる。

海の近くらしいが、海辺な感じではない。

空港や高速鉄道の駅も近くにあるようで、首都圏の玄関口ともいえるエリアだが、然程開けたところではない。

けれど、下町というほど寂れているようでもなかった。

このあたりは住宅地と商業地の区分が少々曖昧になっている、エリアのようだ。

僕は、ナツの指定した最寄り駅から少々迷いながらも、スマートホンの地図を駆使して彼女の住む家へ向かった。

秋の夕暮れ時であり、歩くにはいい気候だ。

けれど、ありふれた街並みが続くその街は、さして散歩するのに楽しく感じさせる場所ではない。

そして、ようやく僕は彼女の住むビルを見出す。

それは古い城塞かと思うほど老朽化した、雑居ビルだった。

五階建てだけれど、エレベータとかはないようだ。

一階には、営業しているかどうか怪しげな喫茶店がある。

ビルの中には、色々な事務所があるようだけれど、個人の住居も混在しているふうだ。

ナツは、そんなビルの最上階にあるペントハウスに住んでいた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ