049 「そうして、引きこもりの日々が続いていた」
さて、僕らはリディアの手によって無事逃げ延びることができた。
首都高速から降りた僕らは、何度か車を乗り換えて尾行が存在しないことを確認した後に、都内某所のマンションに辿り着く。
そこで僕は、再び引きこもりの生活に入ることになる。
ただ、前と違うのはナツとの共同生活になったことと、リディアの監視下にあることだ。
リディアは、色々な説明を僕らにした。
彼女が、カネダ・ハルオに雇われていること。
職業は、トラブル・コーディネーター(何をするひとなのかいまひとつ理解できてない)であること。
そして、僕らが置かれている今の状況について。
暫くは、カンパニーの出方を窺ったほうがいいとリディアは言った。
リディアが言うには、カンパニーも暇ではないため、極東の島国でハルオのような傭兵といつまでも遊んでいるほどの余裕は無いはずだと。
ハルオとカンパニーの間で、手打ちにすることもありうるとリディアは言う。
「けれど、カネダはちょっと無茶しすぎたから、どう転ぶか判らないんだ」
どうやら黒竜式をさらけ出して、航空支援艦を沈めたのがよくなかったようだ。
今回の件は、元々ジョン・スミスの裁量でコントロールされていたから大事にはなっていなかったけれど、既に事態はジョン・スミスの裁量でなんとかなるところを越えている。
そうなるともう少しタフで、融通のきかない官僚たちを相手にしなければならないかもしれない。
「ま、とりあえず待つしかない。最悪は名前と国籍を変えて、この島国を脱出ということになるよ」
ナツも僕も、そのあたりにさしてこだわりがあるわけではない。
ごたごたから逃れられるのであれば、この島国からおさらばすることもやぶさかではなかった。
ただ、リディアは結論を出すことを急いではいない。
僕らも、それは同様だ。
ナツは、まだ夢を見つづけているらしい。
その夢が彼女に封印されている黒竜式を制御するコアブロックを解放するキーに関連しているのか、僕にはよく判らなかった。
まあ、誰にも判らないことだとは思う。
そうして、引きこもりの日々が続いていたのだけれど。
それは唐突に、終わりを迎えることになった。
とても、驚くべき形で。
僕らの暮らす隠れ家に、ハルオがやってきた。
驚くべきことに彼は、ジョン・スミスを伴っていたのだ。




