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048 「世界は終わる、炎につつまれて」

フユカの作っていた黄金の心臓は、ほぼ完全な姿になっていた。

どうやら、わたしたちのダンジョン探索は終わったみたい。

もう、集めるべきピースは全てフユカの手の中にある。

どうしてだか判らないけれど、そうであることがわたしには判った。

わたしたちは、いつしか海辺に辿り着く。

地上にまた登ってきたのかも、しれない。

でも、地下の底にも海がある。

そんなふうにも、わたしは思った。

海は蒼灰色をして、穏やかに波打っている。

それは、冬の色だとわたしは思う。

鈍く冷たい皮膜を纏っているが、その奥底には清冽で過酷な冷気がある。

そんな、感じ。

もう十代くらいの少女となったフユカは、さっきみたいにはしゃぐことはない。

秋の落日が放つ黄金の光を閉じ込めた心臓を手にして、ゆっくりと波打ち際を歩く。

時折、漆黒の肌に浮かぶ薔薇色の唇に笑みを浮かべて、わたしを振り返った。

わたしも、にっこりと笑みをかえすの。

ふたりの、世界。

ふたりだけの、閉じた時間。

永遠が、ここにあればいい。

わたしは、フユカと共に海辺を歩いて、そんなことを思う。

フユカは、唐突に口を開いた。

「そんなわけには、いかないのよね」

真夜中の空と同じ漆黒を纏う肌につつまれた右手を、すっとあげる。

その黒い指先が指し示す、ずっと向こうの空。

ああ、あれには見覚えがあるわね。

流された血が放つ真紅が空を、染め上げている。

燃えているのか、傷ついているのか。

赤は、空の支配を広げつつあった。

半分近くが、赤に染められている。

今度は海も、染められつつあるみたい。

「世界が、燃えているのかしら」

わたしの呟きに、フユカは頷く。

「多分、そうね。世界は終わる、炎につつまれて。でも」

フユカは、金色に輝く心臓をわたしに指し示す。

「これは世界を、もう一度蘇らせるわ。きっと」

わたしは、その心臓を見た。

でも、それはただの置物みたい。

そう、思える。

フユカは、頷く。

「ナツ、これを目覚めさせるのは、あなたの役割なのよね」


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