042 「コントだろうと鉄人だろうと、五十四号の次は、五十五号」
おれは少し、ため息をつく。
「ナツの記憶が戻らないのであれば、制御はできない。残念ながらな」
アキオは、物思いに耽るような顔になっている。
「あなたは、ナツの記憶が時間と共に回復するようプログラムしたのですね」
おれは、頷く。
「ああ。だが、結果は回復していない。何か、おれの予測を越えたことが起こってしまったんだろうな」
「ねえ」
ナツが突然、おれに問いかけてくる。
「わたしにも、黒竜式みたいな名前がつけられてるわけ?」
おれは、苦笑した。
「まあな。おれたちは、人型最終本土決戦兵器鉄人式だ。おれは五十四号、そしてナツ、おまえは五十五号だ」
「ふーん」
ナツは、不満そうな顔になる。
「五十五号ってさ、なんかコントみたいじゃん」
おれは、軽くため息をついた。
「コントだろうと鉄人だろうと、五十四号の次は、五十五号なんだよ」
ナツは、不服そうではあるが一応は納得したようだ。
おれは、アキオとナツを交互に見る。
「ここにもうすぐ、カンパニーの連中がくることになる。黒竜式を制御できないのであれば、勝ち目はない。ここの自爆装置を、起動する」
「ここは破棄する、ということですか」
アキオの問いに、頷いて返す。
「爆破して海の底へ、沈める。おれは、ここから脱出する。お前たちも、60分以内にここから出ていくことだ」
「どうするんですか、これから」
「さあな」
真面目に問いかけてくるアキオに、おれは肩をすくめ笑いを投げる。
「カンパニーは、おれたちを探し狩り出そうとするだろう。ま、なんとかなるだろうさ」
アキオは、呆れ顔になる。
おれは、口を歪めて笑うと軽く手を振って、飛行形態に変形した。
おれは、脱出路に向かって飛び立つ。




