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035 「あんたジョンかと思ったら、フリッツなのか?」

僕は白い闇の中を、漂っていた。

遠くから、ナツの声が聞こえている。

それは、洞窟で谺する声を聞くようだ。

次第に、闇が薄らぎナツの声がはっきりしてくる。

目覚めと共に、水底から浮上するように全てがクリアになっていく。

ナツが、こう言うのが聞こえる。

「へぇ、あんたたちのカンパニーって、海運業でもやってるの?」

ジョン・スミスは、ビジネスマンの口調で言った。

「おれたちは、リスクヘッジのアウトソーシングを請け負っている」

僕は、まだくらくらする頭を少しふって眩暈を遠ざける。

ようやく、口を開けそうな状態になった。

「あんたたちの本社は、ヴァージニア州ラングレーにあるんじゃないだろうな」

スミスとナツは、一斉に僕をみる。

スミスは、表情を変えず僕を見ていた。

「笑えない、冗談だな」

「笑えないのかよ!」

目を見開く僕に、スミスは口の端を歪めて笑い、何かを放り投げてきた。

僕は、それを受け取る。

僕のポケットに入れていた、ナイフだった。

「返しておくよ」

スミスは、歪んだ笑みを浮かべたまま言った。

「まあ、おれたちは君たちの敵ではない、という証にはならんだろうけどね」

確かに、たかがフォールディングナイフひとつでどうこうできそうな状況ではない。

「それにしても、ヤーパンなのにオールド・ガーバーを持ってるとは、面白いな」

ナツが、せせら笑う。

「FS2でしょ。ハイス鋼じゃないガーバーなんて、ガーバーじゃないよ」

いやいやそこじゃないしとこころの中で思ったが、放っておく。

「ヤーパンて。あんたジョンかと思ったら、フリッツなのか?」

スミスは、肩を竦める。

「イワンでもタロウでも、ミッシェルでもいいがな。おれはアシュケナジムだ」

イーディッシュか。

僕は、長いため息をついた。

「で、僕達に何をさせたい?」

スミスは、明るく笑う。

意外と、ひとの懐に入るのが上手いタイプなのかもしれない。

「正直に言えば、君たちが空を飛んだことなんてどうでもいいんだがね」

スミスは、少し目を細める。

「大量破壊兵器は、よくない」

僕が、一体何の話だと問いかけようとした瞬間、部屋が大きく揺れた。

まあ、船なんだから波を受ければ揺れもするだろうが、尋常では無い揺れだ。

巨人に掴まれて、揺さぶられているような揺れかた。

そして、スミスは一瞬にして顔色を変えると部屋から出て行った。



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