034 「船の中にわたしたちはいる」
わたしは、目覚める。
覚醒は、とても唐突にやってきた。
まるで、スイッチがパチンと入った感じ。
それでも、一瞬自分がどこにいるのか、戸惑ってしまう。
記憶が、フラッシュバックとなって、脳裏に蘇った。
そうか、わたしは撃墜されたんだ。
ということは、カンパニーと名乗る組織に拉致されたってことなのかな。
そう思いつつ、あたりを見回す。
わたしは、白い部屋にいる。
とても殺風景で、倉庫か何かじゃないかとも思った。
わたしは、堅い鉄製のベッドから身を起こす。
服装は、変わってないみたい。
身体に傷もないように、思う。
生命に別状はない、てところなのかな。
「お目覚めのようだね」
わたしは、声のしたほうを見る。
ジョン・スミスがいた。
うんざりするほど、落ち着いた笑みを浮かべてる。
やれやれ、だわ。
「朝刊持ってきてよ、いしいひさいちの漫画読むから」
ジョン・スミスは軽く肩を竦める。
「まだ、夜は明けていないが、まず聞きたいことがあるんじゃないのか?」
わたしは、薄く笑う。
「アキオは、どうしたの」
ジョン・スミスは、呆れたように傍らを指差す。
なんだ、隣のベッドで寝てるんだ。
わたしは、苦笑した。
とりあえず、ベッドに寝ているアキオの様子をみる。
「心配ない、君と同じで外傷もなく、内臓も傷ついてはいない」
わたしはアキオが身じろぎし、薄く目を開くのを確認してスミスのほうを向く。
「で、ここはあんたたちのアジトなわけ?」
ジョン・スミスは首を振った。
「ここは、船の中だ。東京湾上を航海する、船の中にわたしたちはいる」




