028 「ロールプレイングゲームのダンジョンみたいな場所」
わたしとフユカは、地下へと下ってゆく。
地下は所々に光を発する鉱石の結晶があり、完全な暗闇ではない。
まるで、秋の夕暮れみたいな薄暮に包まれてる。
わたしたちは、その地下を降りていく。
それは、そうね、ロールプレイングゲームの地下迷宮みたいな感じ。
そこは、人工の建物みたいな場所なんだけれどね。
でも、自然の洞窟かと思うような曲線を壁や柱は描いてる。
例えてみれば、アントニオ・ガウディが建築した地下迷宮。
そんな、感じかな。
不思議なことに、地下に入ってからフユカはとてもしっかりしている。
一階地下に下るにつれ、少しづつ成長していってるように見えた。
そんなはずは、ないんだけれどね。
でもまあ、これは夢の中なんだから。
そうとも、思う。
いつの間にかフユカの背は伸び、10代の少女になった。
彼女は、自分の行く先がよく判ってるみたい。
わたしは、フユカに導かれて進んでゆく。
彼女の金色に輝く髪の毛は、闇の中でも夜明けの光を放ち続けている。
それこそが、わたしの道標。
そこは、ロールプレイングゲームのダンジョンみたいだったけれど、モンスターが襲いかかってくることはなかった。
色々な気配や、物音は聞こえたんだけれどね。
わたしたちは、そういった得体の知れない地下の住人を上手く避けてこれたみたい。
地下に下るにしたがって、闇は濃さと重さを増してきていた。
気持ちがなぜだか、暗くなる。
でも、フユカと一緒だったから、平気だった。
わたしたちは、あまり言葉を交わしていない。
なんだか、言葉なんてなくても、こころが通じている。
そんな、気持ちだ。
多分、フユカも同じ気持ちなんだと思う。
なんとなく、わたしは思った。
これは夢なんだけれどもしかすると、わたしの夢じゃあないのかもしれない。
じゃあ誰の、っていうと。
もしかするとこれは、フユカの夢なんじゃあないのかな、と思った。




