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027 「わたしは、ナツ。大地を焼き尽くす、太陽となるの」

おれが生き延びるためには、戦う以外の術が無かった。

もしおれがやつらに、降伏したとしよう。

おれは、研究所の実験素材として死ぬまで切り刻まれ続けることになる。

そうならずに、おれがおれの意志において生きていくためには、戦うこと以外に方法はない。

おれに目をつけ狩りたてるやつらは、巨大な組織であった。

やつらは、こう呼ばれている。

「カンパニー」と。

おれは、やつらと対向するために自分の持つ武器を強力なものへ変えていこうとした。

ひとつの国家と対抗しうるような、強力な兵器を手に入れる必要がある。

おれはそう思っているし、実際カンパニーの手に落ちないためにはそれだけのものが必要だと考えていた。

結果的には、その思いがおれを焦らせていたのだとも思う。

また、カンパニーの情報収集能力を少し見くびっていたのかもしれない。

何しろおれの生まれた研究所は戦後五十年以上も、放置されていたのだから。

しかしカンパニーは、一度目をつけた獲物を逃すことなどありえなかった。

その日は、よく晴れた日だったと思う。

あれから3年は、たったのだろうか。

おれは峠を越える道路の上を、血まみれになりながら歩いていた。

道路の路肩では、乗用車が炎上している。

おれに対する攻撃の、巻き添えをくらった車だ。

おれに攻撃してきたやつらのステルス・ヘリコプターは撃墜したが、おれも多くの血を失っている。

戦闘機に変成するには、血を失い過ぎていた。

おれは炎上する車のそばに、立つ。

おとこの死体が、燃えている。

足元には、血まみれのおんなが横たわっていた。

おんなは大きく目を見開き、真っ青な空を睨んでいる。

おれはおんなの視線に多い被さるように、覗き込む。

「おまえは、選ぶことができる」

おんなは、大きく息を吸いそして吐いた。

「生き延びて戦うか、永遠の眠りにつくか。どちらかを、選べ」

おんなは、呟くように言った。

「わたしは、ナツ」

そして、おんなは薄く笑う。

「大地を焼き尽くす、太陽となるの」

その笑みは、獰猛だった。

おれは気に入って、笑みを返しながら彼女の血管に針を突き立てる。

バギュームとイオン結晶でできたコアブロックを血液に溶かし込むためだ。

そしておれたちは真っ青な空を、漆黒の翼で切り裂いた。


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